新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
戦略創造プログラム
戦略目標
「非侵襲性医療システムの実現のためのナノバイオテクノロジーを活用した機能性材料・システムの創製」

  研究領域「医療に向けた自己組織化等の分子配列制御による機能性材料・システムの創製」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
伊藤 耕三 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 助教授 トポロジカルゲルを利用した医療用生体機能材料の創製 最近研究代表者らは、従来のゲル材料とは構造が全く異なり、化学的に架橋されていながらしかもナノスケールの8の字架橋点が自由に動く革新的な高分子ゲル材料(トポロジカルゲル)を発明しました。本研究では、イオン環境、温度、電場、光などの外部変数によって架橋点の運動を制御することにより、外部刺激に応じて力学特性が劇的に変化する生体適合性ゲル材料を作製し、新規医療用材料への展開を図ります。
川合 知二 大阪大学 産業科学研究所 教授 プログラム自己組織化による人工生体情報材料創製 生体は、DNAのプログラムによって驚くべき精巧かつ高度な"情報材料・システム"を創り上げています。このプログラム自己組織化のメカニズムを取り入れた高機能物質・デバイス・システムの創製は、まさに21世紀の科学技術のフロンティアです。本研究は、ボトムアップナノテクノロジーの最重要課題である"プログラム自己組織化"の原理の解明・確立と、その原理にのっとった人工的な"生体情報材料"の創製を目指します。
栗原 和枝 東北大学 多元物質科学研究所 教授 固-液界面の液体のナノ構造形成評価と制御 固-液界面の液体は、特異な性質を示すことが知られています。本研究では、固-液界面の液体のナノ構造を研究する新しい評価法を確立し、その特性を明らかにします。これらにより、様々な医療材料やマイクロマシンで用いられる微小管中での流れ、ならびに材料表面での摩擦や潤滑の精密制御が可能になります。また、固体表面の新規な分子組織化ならびにナノコーティング法も開発します。医療や、環境保全・エネルギー高度利用に重要なナノ材料・プロセスの創製が期待できます。
芝 清隆 (財)癌研究会 癌研究所蛋白創製研究部 部長 プログラマブル人工蛋白質からの組織体構築 「繰り返しを原理とした人工タンパク質創製手法」を用いて、「分子集合能力」「結晶成長制御能力」「細胞制御能力」等の機能を合理的にプログラムし、歯科領域での新しいインプラント素材や、無機材料のナノ整列に利用できる人工タンパク質を創製します。このようなプログラム可能な無機・タンバク質ナノ組織体の創製システムは、保険医療分野、半導体分野、材料工学分野などの広い領域でのプラットフォーム技術となります。
下村 政嗣 北海道大学 電子科学研究所 センター長 教授 高分子の階層的自己組織化による再生医療用ナノ構造材料の創製 本研究では、DNAや生分解性高分子などからなるナノ微粒子や高分子構造体を作製し、これらを光マニピュレーションなどのボトムアップ技術と自己組織化を組み合わせることで、ナノメーターからマイクロメーターへいたる階層的な3次元構造を有する新しい組織工学材料を創製します。これらにより、分子レベルで細胞との相互作用を制御し、より大きなスケールで細胞の組織化を制御する、新しい再生医療用材料の開発が期待されます。
徳永 史生 大阪大学 大学院理学研究科 教授 分子配列による蛋白モジュールの開発と展開 生体組織においては特定の分子、分子集合体、細胞が固有の配置、階層構造を持って機能を発現しています。本研究では生体組織の人工的構築をはかるため、ナノ自己組織化からマイクロ自己増殖への展開を可能にする技術を開発します。各階層をモデル化し、蛋白、サブセルラー、ティッシュの各モジュールを作製します。これにより機能集積チップ、自己増殖誘導型チップの実現、および臓器再生への貢献を目指します。
富永 圭介 神戸大学 分子フォトサイエンス研究センター 教授 ナノスケールにおける反応制御の基本原理の構築 本研究では、研究代表者が開発してきた超短パルスレーザー分光を用いて自己組織化された系における機能発現を分子論的なレベルから解明します。すなわち、分子間相互作用の協同効果、ダイナミクスの階層性と反応の方向性・選択性の発現等を分子科学を基礎として研究します。この研究成果を基盤として、将来的には、水溶液中における情報伝達を活用した機能性材料などのナノソフトマシンの創製の設計指針を与えることができます。
林崎 良英 理化学研究所 生体分子機能研究室 主任研究員 ゲノムレベルの生体分子相互作用探索と医療に向けたナノレゴ開発 特異的相互作用する生体内タンパク質を「特異的結合する素子(ナノレゴ素子)」という概念で捕らえ、それらの複数個の素子から人工融合タンパクを設計・作製し、制御可能な秩序ある自己組織化能力をもった新しい機能性材料を開発します。マウスエンサイクロペディアを遺伝子材料とし、大規模タンパク質間相互作用解析、相互作用部位の特定、人工融合タンパク質(ナノレゴ)の発現を行い、さらに種々の物理化学的性質、集合体形状と力学的性質を調べます。これにより、医療に向けた機能性材料の開発が期待できます。
藤田 誠 東京大学 大学院工学系研究科 教授 自己組織化分子システムの創出と生体機能の化学翻訳 生体機能の発現にはナノ領域における分子レベルの精密な自己組織化が重要な役割を担っています。本研究では、生体系と同様に孤立ナノ空間が小分子から自己組織化する系に着目し、その空間や表面・内面における特異現象を通じて、これまで生体系特有と見なされてきた高次構造を分子の自己組織化により発現させます。さらに、このような分子システムの生体適合をはかることで、革新的な分子レベル医療への道を探ります。
山下 一郎 松下電器産業(株) 先端技術研究所 主席研究員 バイオのナノテクノロジーを用いたナノ集積プロセス 本研究は、生体超分子の持つ構造の均一性、自己集合能と生物無機材料析出の能力を利用した、新しいナノ構造作製の基礎を確立します。タンパク質超分子内の空洞での無機化合物の析出担持メカニズム、蛋白質設計による固体基板上ナノ構造構築の探求を行い、タンパク質選択除去後は得られた構造の電子デバイスへの応用を検討します。

総評 : 研究総括  茅 幸二(岡崎国立共同研究機構分子科学研究所 所長)
 戦略創造プログラム「医療に向けた自己組織化等の分子配列制御による機能性材料・システムの創製」は、科学技術基本計画第2期の重点分野の一つであるナノテクノロジー研究推進の一環としてJSTにおいて今年から5年間遂行される10プロジェクトの一隅を占めるものである。これらのプロジェクトは、各々IT、医療、環境という目標をもつものであるが、今後5年間に解明するべきナノテクノロジー研究のターゲットが網羅されており、今後も全プロジェクトの連携の下に、各プロジェクトが推進されていかなくてはならない。
 本プロジェクトは、ナノテクノロジー推進の問題点であり、突破しなくてはならない鍵である、「いかに精緻な原子・分子配列をさせるか」という問題を「自己組織化」というキーワードの下に、化学、生命科学などの分野を横断した連携体制で解明していこうとするものである。
 結果として、応募件数は46件であった。書類審査においては、提案内容が意欲的であるかどうかの観点から、これまでの研究実績に拘わらず選考を行った後、面接により、自己組織化というキーワードをどのように捉えているかを主点に審査を行い、さらにプロジェクト参加による連携体制などを考慮しつつ判定を行った。応募内容はきわめて高度のものが多く、選考委員会としては、優れた研究課題については機会を与えるべきとの意見もあり、議論の結果チーム研究型Iを含む研究課題10件を採択することとした。結果として、活発な研究活動で著名な研究グループ、また若い意欲的な可能性をもつ研究者群などで、採択の枠から外れたものも多くなったことは残念であった。

戻る


This page updated on October 31, 2002

Copyright©2002 Japan Science and Technology Corporation.