新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
CRESTプログラム
戦略目標
「技術革新による活力に満ちた高齢化社会の実現」

  研究領域「生物の発生・分化・再生」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
中山 敬一 九州大学 生体防御医学研究所 教授 細胞周期の再活性化による再生能力の賦活化 成人において細胞周期に入っている細胞は1%以下の少数の細胞で、その他大部分の細胞は細胞周期から逸脱して休止状態にあります。幹細胞は細胞周期に再侵入する能力を有していますが、最終分化を遂げた神経・心筋細胞は、傷害があってもほとんど再生せず、その組織の欠損は生命の危機に直結します。本研究では、細胞周期への再進入の分子メカニズムを解明することによって、神経・心筋細胞を細胞周期へ再進入させる技術の理論的基盤を構築することを目指します。
広海 健 国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門 教授 細胞内パターニングによる組織構築 組織構築に必要な細胞の運命決定や形態・運動の制御は、細胞間相互作用や細胞外の分泌因子による長距離作用によって担われていると考えられています。しかし、神経細胞のように長い突起を持つ細胞では、細胞「内」の物質の分布が広い範囲に位置情報をあたえてパターン形成を司ることが可能です。本研究では、組織構築というグローバルな現象の根源を細胞内輸送を介した細胞内の分子の局在に求め、新しいパターン形成パラダイムの確立を目指します。
松崎 文雄 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター グループディレクター 脳構築の遺伝的プログラム 脳の発生に際だった特徴である神経細胞の多様性はどのような遺伝的プログラムによって形成され、どのように機能的な脳構築に組み込まれるのでしょうか。複雑な脳の構築と機能を理解するうえで、これらは根本的な問題です。本研究では、神経幹細胞が多様な神経細胞を生じる機構と、多様な神経細胞が秩序構造を形成する仕組みを追求し、脳発生に共通の論理を導き出すと同時に、脊椎動物に固有な仕組みを発見することにより、幹細胞応用技術の基盤を構築します。

総評:研究総括 堀田 凱樹(国立遺伝学研究所 所長)
「発生・分化・再生生物学の新たな展開をめざして」
 今年度も、多細胞生物の発生・再生過程のメカニズムを分子・細胞・器官・個体などさまざまなレベルで意欲的に研究を展開し、世界的な活躍が期待出来る研究を募集したところ、国公立大学のみならず、国立研究機関その他から55件の応募があった。これらは、各種幹細胞の研究、発生分化の制御に関する研究、それらの知識を応用して再生医療をめざした基礎研究など多岐にわたる興味のある提案があった。
 これらの応募提案について7名の領域アドバイザーにお願いして書類審査を行い、特に優れた11件を選定して面接を行った。面接では、研究の背景、ねらい、独創性、他にない優れた点、研究の進め方、研究体制等の点から質疑応答を行い、提案課題の採択に関する検討を行った。その結果、脳の構築や神経幹細胞の発生分化の分子機構をショウジョウバエと脊椎動物の脳を対比させて研究する計画、再生医療への応用も視野に入れた細胞分裂周期の制御機構とその制御の研究、神経細胞など長い突起をもつ細胞の細胞内分子パターニングの機構とその組織構築における役割の研究などがいずれも世界的な活躍とインパクトの期待される非常に高いレベルの研究であると評価され、本領域の研究計画としてもっともすぐれていると判定された。このほかにも多くの興味ある提案があったが、採択できず残念であった。
 この研究領域は公募の最終年度を迎え、研究プロジェクトも出そろって研究体制が確定したことは大変に嬉しく思っている。幸いに多数の優秀な研究計画の応募をいただき、毎年選考は困難を極めたが、採用された研究課題はいずれも世界の舞台で活躍する研究ばかりで、さすがにこの分野のわが国の研究活性は充実していると改めて感じている。

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This page updated on October 31, 2002

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