新規採択研究代表者・個人研究者および研究課題概要
CRESTプログラム
戦略目標
「遺伝子情報に基づくたんぱく質解析を通した技術革新」

  研究領域「たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム」

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
一條 秀憲 東京大学 大学院薬学系研究科 教授 ストレスの受容・認識とシグナル変換の分子機構 本研究は、ストレス応答性MAPキナーゼタンパク質群、特にストレスセンサーとしてのMAP3Kファミリーの分子機構解明に基づく戦略的創薬基盤の開発を目指します。本研究により、ASK1ならびにストレス応答性MAPキナーゼタンパク質群の構造機能相関に立脚した全く新しい薬剤開発への発展が期待されます。
伊藤 維昭 京都大学 ウイルス研究所 教授 タンパク質の細胞内ダイナミズムの原理と制御装置 タンパク質が細胞の特定の場所に配置され細胞を形づくる際の、膜を越えた分泌輸送、膜組み込み、局在化、構造形成、分解過程などをつかさどる細胞機構の実態解明を目指して研究を行います。本研究は、ポストゲノムの研究において、ゲノム情報、プロテオーム情報、そして構造情報を有効に利用するために必須の基盤知識を提供するものとなります。
後藤 祐児 大阪大学 蛋白質研究所 教授 アミロイドーシス発症の分子機構解明 本研究では、アミロイドーシス発症の分子機構を、蛋白質の動的立体構造や物性に基づいて原子レベルで解明します。これにより、関係する疾病の治療基盤の提供に止まらず、蛋白質フォールディング機構の原理的解明、ゲノムにおけるアミロイド原性蛋白質の予測、アミロイド原性蛋白質を材料とするナノテクノロジーの開発など、多くの分野の開拓と進展への貢献を目指します。
反町 洋之 東京大学 大学院農学生命科学研究科 助教授 細胞内モジュレータプロテアーゼの生理機能の解析 カルパインは様々な生命現象の制御を担っているため、その不調により糖尿病や筋ジストロフィーをはじめ多くの疾患と関係するモジュレータプロテアーゼの代表と考えられています。カルパインの作用機序の分子機構を新規活性測定システムの開発などにより解析し、プロテアーゼによる生体制御機構の根本原理を解明します。本研究によりカルパインの関与する疾患の発症の分子機構を明らかにして、その診断・治療・予防に対し、モデルマウス開発をはじめ大きな寄与を成すことが可能となります。
山口 明人 大阪大学 産業科学研究所 教授 異物排出トランスポーターの構造機能解析 異物排出トランスポーターは21世紀の病原細菌多剤耐性の主因となっています。本研究では、異物排出トランスポーターのX線結晶構造解析を進め、その構造を もとに異物認識排出機構を解明し、多剤耐性を克服する創薬につなげます。異物排出トランスポーターライブラリの中から、主要な3類型全ての構造を決定し、部位特異的変異導入等の分子生物学的、物理化学的解析と併せて、トランスポーター複合体の解離会合、異物輸送機構を全面的に解明し、阻害剤・回避剤の分子設計を目指します。
吉森 保 国立遺伝学研究所 細胞遺伝研究部門 教授 蛋白質と膜が造る細胞内物流システム 細胞内には蛋白質に制御された膜の動きによる物流システムが存在し、多彩な生体機能を担っています。本研究では膜との連携という観点から蛋白質機能を捉え、1分子イメージング等の最先端手法を駆使した解析を行います。具体的には未知の多い物流経路オートファジーとエンドサイトーシス経路に焦点を当て、分子メカニズムの解明と同時に高次生体機能と疾患における役割を探り、臨床医学に資する知的財産の創出を目指します。
米澤 一仁 神戸大学 バイオシグナル研究センター 教授 細胞成長を司るたんぱく質群の同定と機能解析 本研究では、プロテオーム解析法によって細胞成長を司るたんぱく質の候補群を迅速かつ効率的に同定し、その機能解析を行うことにより細胞成長制御機構の解明を目指します。これらの知見に基づき、細胞成長機構の異常によって惹起される疾患の解明と創薬のための基盤を構築し、さらに食料増産や高機能食品の開発に直結する有用遺伝子を探索します。加えてこの制御機構解明の過程で必要なプロテオミクス新技術・新方法論を開発し提供します。

総評:研究総括 大島 泰郎(東京薬科大学 生命科学部 教授)
 昨年に引き続き、本年度も新規に採択課題の公募を行ったところ79件の応募があった。昨年より、応募の数は減っているが、領域の対象外と判定される応募がほとんどなかったことなど、昨年度の採択結果をよく吟味検討してから応募された方が多いためであろう。その結果、それぞれの研究計画は質が高く、実質的には昨年以上の激しい競争となった。選考は、領域アドバイザー8人による採点をもとに合議を行って、十分議論を尽くして採否を決定したが、甲乙つけがたい内容の申請が当落線上に並び、選考は困難を極めた。私個人の感想では、応募された79件の1/3は採択されたならば、本領域に多大な貢献をされるに違いないと確信している。昨年の選考と併せて、日本のタンパク質科学の研究の底の広さと質の高さを実感した。配分できる研究費(CRESTに限らず他の研究資金を含め)が、それに見合っていないことが残念である。

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This page updated on October 31, 2002

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