科学技術振興事業団報 第251号
平成14年8月28日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
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浸炭防止粉体の自動塗布システムの開発に成功

(科学技術振興事業団 委託開発事業)

 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)は、関西大学教授 赤松勝也氏らの研究成果である「熱融着粉体による部分浸炭防止技術」開発を当事業団の委託開発事業の課題として、平成10年3月から平成14年3月にかけて、株式会社ナード研究所(代表取締役社長 南則雄、本社 兵庫県尼崎市西長洲町2-6-1、資本金9,108万円、電話(06)6482-7010) に委託して開発を進めていた(開発費約8千万円)が、このほど本開発を成功と認定した。

(開発の背景)
 浸炭(用語解説参照)防止には古くから銅メッキが、また近年は酸化硼素等の浸炭防止材を樹脂と共に有機溶剤または水に分散させた浸炭防止塗料が用いられている。しかしながら、いずれの方法も浸炭防止膜形成工程が煩雑で、自動化が困難であり、作業環境に問題があり、簡便な浸炭防止技術が望まれていた。
(開発の内容)
 本新技術は、酸化硼素にポリエチレン等の熱可塑性樹脂、シリカ、アルミナ等の無機添加剤を混練分散した粉体を作製し、鋼製部品を高周波加熱装置等により、所望の部分のみ加熱し、浸炭防止粉体を融着させる部分浸炭防止技術に関するものである。
 従来の浸炭防止塗料を用いた浸炭防止膜形成工程に比較し、工程が簡便化されると共に、小型ロボットの採用で完全自動化を実現した。
(開発の効果)
 本新技術は、全く有機溶剤を用いないため作業環境が改善され、地球環境負荷を低減できる。また浸炭防止工程の自動化を可能にし、自動車や工作機械等の鋼製機械部品の部分浸炭防止に広く利用されることが期待できる。

 本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。


(背景)
浸炭防止膜形成工程の簡便化と自動化を可能にすると共に、作業環境が改善される浸炭防止技術が望まれている

 自動車のカム、シャフト等の鋼製機械部品の多くは、一酸化炭素雰囲気下で加熱する等により表面から炭素を拡散浸透させ、表面のみを硬化して強度や耐摩耗性を向上させている(浸炭処理)。
 浸炭は部品表面全体を処理すると靱性が劣化し、あるいは後工程における切削加工や溶接等が困難になるため、摩擦を受ける回転や摺動部分のみを浸炭処理し、その他の部分は浸炭防止材によりマスキングを施して、もとの硬度を保つことが必要となる(浸炭防止処理,図1)。
 浸炭防止には、浸炭防止効果のある酸化硼素を樹脂と共に有機溶剤または水に分散させた浸炭防止塗料を筆や刷毛塗りを繰り返して、浸炭防止膜形成を行っている。工程が煩雑であり、乾燥工程が必要であると共に自動化が困難であり、また、有機溶剤を用いているため作業環境に問題があり、作業者の負担が大きく、簡便な新しい浸炭防止技術が望まれている。

(内容)
浸炭防止熱融着粉体の作製、ロボットによる浸炭防止膜形成の自動化を実現

 本新技術は、浸炭防止効果のある酸化硼素にポリエチレン等の熱可塑性樹脂、シリカ、アルミナ等の無機添加剤を混練分散した浸炭防止粉体を作製し、鋼製品を高周波加熱装置等により所望の部分のみ加熱し、浸炭防止粉体を熱融着させる部分浸炭防止技術に関するものである。
 従来の浸炭防止塗料を用いた浸炭防止膜形成工程に比較し、工程が簡便化され、各種部品形状に応じ均一な浸炭防止膜形成が可能になり、小型ロボットの採用で完全自動化を実現した(図2)。

(効果)
浸炭防止膜形成工程が簡便化され、作業環境が改善される

 従来技術の浸炭防止塗料を用いた煩雑な浸炭防止膜形成工程と比較し、全く有機溶剤を用いないため乾燥工程がなく、簡便化されると共に、作業環境が改善され、地球環境負荷を低減でき、自動車や工作機械等の鋼製機械部品等の製造工程における部分浸炭防止に広く利用が期待できる(図3図4)。


【用語解説】
浸炭:鋼製品を一酸化炭素雰囲気下で加熱する等により表面から炭素を拡散浸透させ、内部の靱性を保ちつつ、表面のみを硬化する処理を施すこと。いわゆる、「焼き入れ」のこと。

・開発を終了した課題の評価
・図1浸炭防止処理の例
・図2浸炭防止粉体の自動塗布システム装置
・図3浸炭部分と浸炭防止部分の組織観察写真
・図4浸炭部および浸炭防止部の断面硬度分布

(注)この発表についての問い合わせ先は以下の通りです。
科学技術振興事業団 開発部第二課 日江井純一郎、福富 博
[電話(03)5214-8995]
株式会社ナード研究所 ナードガストップ事業推進室長 伊藤興一
[電話(06)6482-7010]


This page updated on August 28, 2002

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