研究主題「ジーンセレクター」の研究構想(概要)


 遺伝子DNA(ジーン)が担う様々な情報は、その全てが常に読み出されているわけではない。変化する環境に応じて、必要な情報が選択され的確に読み出されている。一方、DNAは、ヒストンと呼ばれる蛋白質が結合してヌクレオソームと呼ばれる構造体をとり、その複合体は様々な蛋白質を巻き込み、更に何段階かの巻き込みを経て高次の複合体となって、最終的に染色体を形成している。つまり、DNAの持つ情報はこの複雑な染色体構造内に埋め込まれた状況にある。DNAに書き込まれている多数の情報を任意に引き出すには、高次DNA構造体の一部が選択的にほどかれなければならないと考えられているが、高次DNA構造体の状態から様々なタイプの蛋白質が解離した、いわゆるむき出しのDNA構造状態に変換する仕組みおよびその反応に関与する機能分子については解明が殆ど進んでいない。
 本研究は、高度に組織編成された染色体構造内のDNAを取り巻く蛋白質群の存在やそれらの相互作用に着目して、染色体の一部を選択的にほどく仕組みを探求し、生体内DNAの本来の状態からDNAが持つ情報の選択的な引き出しを司るものを「ジーンセレクター」として捉え、その本質を明らかにしようとするものである。
 本研究により、これまで研究の進んでいなかった生体内での遺伝情報が選択されて発現する機構の理解を深めることができることから、細胞の増殖等の異常によって引き起こされる疾患に対する診断・治療応用や医薬品の開発などに貢献できるものと期待される。

遺伝子をとりまく環境:染色体からの情報選択


This page updated on March 26, 1999

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