研究主題「協同励起」の研究構想(概要)


 近年のレーザー技術の進歩により、光を物質の組成や構造を解析するためだけでなく、物質の性質を変えるために用いることが出来るようになった。例えば光の波長やパルス幅を精巧に制御しながら半導体や有機物材料にレーザー光を照射すると、照射を受けた物質を構成する原子が強く励起されて元来その物質が持っている性質を一時的に変えることができる。また気体原子にレーザー光を照射して熱運動を抑制することもできるようになってきた。
 本研究は、最先端のレーザー技術を駆使して、光によって物質を日常我々が見ている状態とは大きくかけ離れた状態、すなわち多数の励起された原子等が相互に作用し合った、多体系としての励起状態、を作りだしこの状態を利用した新しい光の制御技術や微細加工技術等への応用の芽を探索するものである。
 本研究では、励起された物質に現れる様々な現象を理論的、実験的に探求するとともに、励起状態で発現する非線形光学効果を利用したデバイス、金属を蒸発させて原子気体の熱運動をレーザーで抑制し微細パターンを形成させる方法といった技術的な可能性も探求する。
 本研究により、光と物質の相互作用や固体の中の励起状態に関する新たな科学技術の領域が生み出されるとともに、将来超高速光コンピューターに必要とされるであろうデバイスや大規模集積回路の超微細加工技術といった先端技術への貢献が期待される。

注)非線形光学効果 光の電磁場によって物質中に誘起される非線形(単純比例でなく、2乗、3乗等の変化となる)分極から生ずる効果で、波長変換素子等に用いられている。

光による集団の量子制御(図)


This page updated on March 26, 1999

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