科学技術振興事業団報 第249号
平成14年8月27日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
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メタルファイバーを用いたGHz帯電磁波吸収シートの開発に成功

(科学技術振興事業団 委託開発事業)

 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)は、宇都宮大学 教授 松村和仁氏らの研究成果である「メタルファイバーを用いたGHz帯電磁波吸収シート」を当事業団の委託開発事業の課題として、平成13年3月から平成14年5月にかけて関東鋼線株式会社(代表取締役社長 川淵秀和 本社 栃木県宇都宮市西川田南2−5−12、資本金 約2億5千万円、電話:028-658-0511)に委託して開発を進めていた(開発費約1億5千万円)が、このほど本開発を成功と認定した。

(開発の背景)
 近年、移動体通信や無線LAN、高度道路交通システム等において、GHz(ギガヘルツ)帯の電磁波を使用する電子機器が広く普及しつつあるが、これらの電子機器から放出される電磁波や反射電磁波が他の電子機器に悪影響を及ぼすことから、特にGHz(ギガヘルツ)帯の電磁波を効率よく吸収できる電磁波吸収材が望まれていた。

(開発の内容)
 本新技術は、切削ステンレスファイバーをグラスウールの中に均一に分散混合させたシートを積層することにより、GHz帯の電磁波吸収シートを製造するものである。  本開発の結果、減衰量13dB以上(95%以上吸収)の電磁波吸収積層シートを実現した。

(開発の効果)
 本新技術により、電磁波吸収シートとして高速道路自動料金収受システム(ETC)、船舶レーダー、無線LAN、一般建築物などへの利用が期待される。 本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。


(背景)
電子機器の普及に伴い、軽量コンパクト、取付け容易な電磁波吸収材が望まれていた。

 ポ従来、電磁波吸収材としては、@フェライト粒子を単体で固形化したもの、又は、この粒子をゴムに練り込みシート状にしたもの(磁性電波吸収材料)、Aウレタン発泡材にカーボン粒子を含有させたもの(誘電性電波吸収材料)が一般に用いられていたが、これらは構造的に大きい、重い、扱いにくい等の問題点があり電波暗室用として用いられる程度であった。
また、最近では移動体通信や無線LAN、高速道路自動料金収受システム(ETC)等GHz帯の電磁波を使用する電子機器から放出される電磁波や反射電磁波から他の電子機器に及ぼす悪影響を防ぐ必要が生じている。このため軽量コンパクト、取付け容易な電磁波吸収材が望まれていた。

(内容)
切削ステンレスファイバーをグラスウールの中に分散し積層化

 本新技術は、主に3〜10GHz帯の電磁波吸収材の吸収体に関するものである。新開発の電磁波吸収材は、繊維状の切削ステンレスファイバーをグラスウールの中に均一に分散混合した不織布シートを積層させたものであり、外部より電磁波を受けたとき電磁波の電界エネルギーを熱エネルギーに変換し、積層シート全体が誘電体として作用し電磁波を吸収するものである。このため、本シートが吸収性能を最大限発揮出来るよう、各シートの誘電率が最適なものを選んで組み合わせる必要がある。 本新技術では、シートに含まれる切削ステンレスファイバーの本数やシートの厚みを変え、誘電率の異なる各種シートを作製し組み合わせ検討を行った。この結果、4層の積層シート(トータル厚み24mm)により、広範囲のGHz帯で偏波面の向きに依存することなく吸収性能に優れた電磁波吸収材が開発出来た。

(効果)
広範囲(3〜10GHz帯)の電磁波に対応可能

 本新技術による電磁波吸収材は、繊維状の切削ステンレスファイバーをグラスウールの中に分散し、積層化した不織布シート状のため
(1) 広範囲の電磁波を偏波面の向きによらず吸収出来る。
(2) 軽量コンパクトで取り付け容易。
(3) 可撓性があるため複雑な形状にも取り付け容易。
(4) 電磁波吸収と共に吸音効果もある。
(5) 難燃性、断熱性があり内装材にも適している。
などの特徴を持ち、高速道路自動料金収受システム(ETC)、船舶レーダー、無線LAN、一般建築物などへの利用が期待される。


・開発を終了した課題の評価
・図1 電磁波吸収の原理
・図2 シート構造
・図3 4層品の性能
・写真1 開発品の外観

(注)この発表についての問い合わせ先は以下の通りです。
科学技術振興事業団 開発部第二課 日江井純一郎、井口 穣
[電話(03) 5214-8995]
関東鋼線株式会社 取締役EMF事業部長 中田秀一
[電話(028)658-0511]


This page updated on August 27, 2002

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