メタルファイバーを用いたGHz帯電磁波吸収シートの開発に成功(科学技術振興事業団 委託開発事業) 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)は、宇都宮大学 教授 松村和仁氏らの研究成果である「メタルファイバーを用いたGHz帯電磁波吸収シート」を当事業団の委託開発事業の課題として、平成13年3月から平成14年5月にかけて関東鋼線株式会社(代表取締役社長 川淵秀和 本社 栃木県宇都宮市西川田南2−5−12、資本金 約2億5千万円、電話:028-658-0511)に委託して開発を進めていた(開発費約1億5千万円)が、このほど本開発を成功と認定した。
ポ従来、電磁波吸収材としては、@フェライト粒子を単体で固形化したもの、又は、この粒子をゴムに練り込みシート状にしたもの(磁性電波吸収材料)、Aウレタン発泡材にカーボン粒子を含有させたもの(誘電性電波吸収材料)が一般に用いられていたが、これらは構造的に大きい、重い、扱いにくい等の問題点があり電波暗室用として用いられる程度であった。 また、最近では移動体通信や無線LAN、高速道路自動料金収受システム(ETC)等GHz帯の電磁波を使用する電子機器から放出される電磁波や反射電磁波から他の電子機器に及ぼす悪影響を防ぐ必要が生じている。このため軽量コンパクト、取付け容易な電磁波吸収材が望まれていた。
本新技術は、主に3〜10GHz帯の電磁波吸収材の吸収体に関するものである。新開発の電磁波吸収材は、繊維状の切削ステンレスファイバーをグラスウールの中に均一に分散混合した不織布シートを積層させたものであり、外部より電磁波を受けたとき電磁波の電界エネルギーを熱エネルギーに変換し、積層シート全体が誘電体として作用し電磁波を吸収するものである。このため、本シートが吸収性能を最大限発揮出来るよう、各シートの誘電率が最適なものを選んで組み合わせる必要がある。 本新技術では、シートに含まれる切削ステンレスファイバーの本数やシートの厚みを変え、誘電率の異なる各種シートを作製し組み合わせ検討を行った。この結果、4層の積層シート(トータル厚み24mm)により、広範囲のGHz帯で偏波面の向きに依存することなく吸収性能に優れた電磁波吸収材が開発出来た。
本新技術による電磁波吸収材は、繊維状の切削ステンレスファイバーをグラスウールの中に分散し、積層化した不織布シート状のため (1) 広範囲の電磁波を偏波面の向きによらず吸収出来る。 (2) 軽量コンパクトで取り付け容易。 (3) 可撓性があるため複雑な形状にも取り付け容易。 (4) 電磁波吸収と共に吸音効果もある。 (5) 難燃性、断熱性があり内装材にも適している。 などの特徴を持ち、高速道路自動料金収受システム(ETC)、船舶レーダー、無線LAN、一般建築物などへの利用が期待される。
(注)この発表についての問い合わせ先は以下の通りです。
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This page updated on August 27, 2002
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