「量子二重ドットにおいて電流整流作用を確認」
近年、半導体素子の微細化が進み、素子のサイズはミクロン(千分の1ミリ)の世界からナノメーター(百万分の1ミリ)の世界に移行しようとしている。ナノメーターの領域では電子は「粒子」としての性質よりも「波」としての性質をより強く示すようになってくる。このため、ナノメーターサイズの半導体素子を実現するためには従来とは全く異なる、量子力学に基づく動作原理を確立しなければならない。 脚注 *1 パウリ排他律: “2個以上のフェルミ粒子(ここでは、電子)が同じ量子状態を占有することができないというもので量子力学の基本的法則である。 *2 2重量子ドットの整流作用:(図3) 2つのドットにわずかな非対称性があると、まず、どちらか一方のドット(右側のドットとする)に1個の電子が入る。簡単のため、この電子は上向きのスピンをもっているとする。この2重ドットの両側には電極が付いていて、電極-ドット-ドット-電極という電子のトンネル過程を経て電流が流れる。このような状況で、右側の電極から右側のドットに電子が流れ込む場合(負バイアス側)を考える。パウリ効果のために、右のドットには既に存在している電子のスピンと反対向き(下向き)のスピンしか入ることができない。このスピンは、左のドットへ、さらに左の電極へトンネルすることができるので、電流を発生する。今度は、左の電極から左のドットに電子が流れ込む場合を考える。この電子のスピンは、パウリ効果の制約がないので、既に右のドットにある電子のスピンと同じ向き、反対向きのいずれも許される。これが、反対向きだとするとこの電子は、右のドット、右の電極へとトンネルして電流に寄与する。しかし、一旦、同じ向きのスピンが流れ込むと、この電子はパウリ効果のために右のドットにトンネルすることができない。定常状態では、いずれ、このような状況が起こるので、結果的に電流は流れなくなる。これが整流作用である。 ・図1 2重量子ドットの構造 ・図2 2重量子ドットの電流電圧特性 ・図3 整流作用の説明図 ******************************************************** 本件問い合わせ先: 長谷川 奈治(はせがわ たいじ) 科学技術振興事業団 特別プロジェクト推進室 〒332-0012 川口市本町4-1-8 TEL:048‐226‐5623 FAX:048‐226‐5703 東 良太 (あずま りょうた) 科学技術振興事業団 特別プロジェクト推進室 〒332-0012 川口市本町4-1-8 TEL:048‐226‐5623 FAX:048‐226‐5703 ******************************************************** |
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