科学技術振興事業団報 第227号

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体の分節化を司る遺伝子の発見


脊椎動物の体を形作る上で重要な組織である体節の分節化に決定的な役割を持つ遺伝子、
fused somitesが、ゼブラフィッシュより単離された。この遺伝子は近年多くの研究者によって精力的に研究がなされてきた体節形成分野において、その単離が待ち望まれていたものである。この成果は、科学技術振興事業団(理事長 沖村 憲樹)の二階堂 昌孝科学技術特別研究員、養殖研究所 荒木 和男室長、国立遺伝学研究所 武田 洋幸教授(現東京大学、科学技術振興調整費の開放的融合研究制度による研究)等の共同研究によって得られたもので、6月10日付けの米国科学雑誌「ネイチャー・ジェネティックス」に発表されるが、印刷版に先立ち5月20日に同誌のホームページ上に公開される。

脊椎動物の体の骨や筋肉は頭から尾に沿って規則正しく分節化した体節と呼ばれる組織から形成される。この分節性は背骨等に顕著に反映されており、この体節の規則正しい分節が正常な形態形成を行う上で必要不可欠である。ゼブラフィッシュを使った研究においても、体節形成に異常をきたす変異体を利用してその分節化に関わる遺伝子の単離がなされてきたが、その多くは他の脊椎動物でも単離されたものやその関連遺伝子であった。しかし、fused somites突然変異体は多くの証拠からこれまで見つかった遺伝子とは別の種類であることが予想されていたため、ゼブラフィッシュの研究者のみならず、体節形成を行う多くの研究者にその原因遺伝子の発見が望まれていたものである。

本研究ではtbx遺伝子と呼ばれる遺伝子のなかでも体節領域に限局して発現するものを単離し、その機能をモルフォリノオリゴを使って阻害する(註1)ことで、体節形成に関わる遺伝子の探索を行った。その結果、tbx24遺伝子がfused somites変異体と全く同じ表現型を示すことから、この遺伝子がfused somitesの原因遺伝子であることを証明することに成功した。

これにより、これまでマウスやニワトリなど他の脊椎動物で全く知られていなかった新たな遺伝子が体節形成に関わることが示されたため、体節形成の遺伝子機構の研究分野に新たな研究対象が提供されたことになる。今後多様な実験動物においてtbx24遺伝子と他の遺伝子の相互作用の研究などが波及的になされ、体節形成の分子メカニズムについて一層深い理解が得られることになるであろう。


本件問合せ先:

二階堂 昌孝(にかいどう まさたか)
埼玉大学理学部 生体制御学科 生体情報学大講座
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埼玉県さいたま市下大久保255
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荒木 和男(あらき かずお)
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武田 洋幸(たけだ ひろゆき)
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板山 和彦(いたやま かずひこ)
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This page updated on May 20, 2002

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