科学技術振興事業団報 第221号

平成14年4月11日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報室)

「ダイレスフォーミング加工機」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 沖村憲樹)は、職業能力開発総合大学校 教授 松原茂夫氏の研究成果である「ダイレスフォーミング加工機」を当事業団の委託開発制度の課題として、平成12年3月から平成14年2月にかけて株式会社アミノ(代表取締役社長 網野廣之 本社 静岡県富士宮市三園平555、資本金 約2億6千万円、電話:0544-27-0361)に委託して開発を進めていた(開発費270百万円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 従来、車両や自動車及び事務機器等のパネルの塑性加工には大型のプレス機と高価な金型設備及び金型の保管に広いスペースを長期間必要としていた。また、プレス作業は騒音や振動が発生するため環境面からも対策が求められていた。
 本新技術は、製品の底にあたる部分を頂上にし、CADでモデリング設計したデータを専用ソフトにより作成したNCデータに基づき、上から球底をした移動工具で等高線を描くように素材の金属板を押しつけ逐次的に製品形状に成形する技術である。また、加工精度向上のため、成形後に外観形状を3次元測定機で測定したデータを設計データにフィードバックし、モデリングデータの修正と、製品の再成形が出来るようにした。このため、本加工法ではプレス金型が不要になり、プレスでは成形不可能な複雑な形状が成形可能となった。また、製品設計のCAD/CAM化と専用加工ソフトの開発により形状変更が容易となり、加工工期の大幅短縮及び試作開発費の大幅低減を図ることが出来た。
本新技術により、大型成形品の小ロット生産や試作開発の迅速化が可能となり、また金属素材にはアルミ、スチール、ステンレス、チタン等が可能であるため、新幹線車両、自動車部品、家電製品、事務機器部品等の様々な分野での利用が期待される。

本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
消費者ニーズの多様化・海外への生産移転に伴い、多品種少量の成形品を短納期で供給でき、さらにリサイクルや環境負荷の低い成形加工法が望まれていた。

従来は、大量生産に対応する高生産性のプレス及びその金型はパンチとダイスを使用して成形する方法が主流であった。次に中少量生産,製品の多様化、高精度化、高品質化に対応するために対向液圧成形法が開発されていたが、下記のような課題があった。
(1) 少量生産の場合、金型生産方式では金型保管・運搬・メンテ等、非常に効率が悪い。
(2) 金型を廃却した場合、在庫でカバーしなければならない。⇒在庫量の増加
(3) 金型廃却時には永年分の在庫が必要となるが、予測は当たらない事が多い
さらに現在は、設備の低価格化、海外への生産工場移転等がおこなわれ,コスト競争が厳しく多品種・少量及び短納期が要求されている。具体的にはプレス設備、金型を使用しないで、低コスト、短納期での試作をしたいというニーズが多くある。また一方で、リサイクルや環境問題に対して省エネルギー、低騒音、低振動で環境にやさしい生産技術、製造システムの開発が要望されている。

(内容)
プレスのように金型を用いることなく、目的の製品を短時間で成形加工でき、製品の外観形状を容易に修正して再成形出来る加工システム。

本新技術の成形原理は図1に示すような固定工具をNCテーブル(X軸)に固定し、上から先端が球状の移動工具(テーブルに対して、Y軸、Z軸方向に可動) で等高線を描くように素材の金属板を押しつけ逐次的に製品形状に成形する技術である。被加工材は固定工具が貫通できる穴を設けた支持板と支持枠の間に固定され、移動工具が下方に動くと、支持板と被加工材を通じておされ同じ量だけ下に動く。成形における工具移動経路は成形品により設定したプログラムで等高線を描き、1周ごとに反転させる。同時に移動工具を下方に動かす。この繰り返しにより成形する。
次に、成形工程の概要を図2に示す。まず成形しようとする製品を3D-CADでモデリング設計し、このデータをIGES変換して装置に入力、本装置に内蔵された専用ソフトによりNC等高線データを作成し、装置を制御しながら成形を行う。さらに、成形した製品を3次元測定した後元の設計にフィードバックし、モデリングデータの修正、補正が必要かどうかを判断し、修正後のデータで再成形できる(形状変更、素材の材質及び板厚の変更がソフト上で簡単にできる)特徴を持つ。
本成形法は、従来のプレスでは成形不可能な製品を成形でき、低コスト、短納期の試作に対して非常に適している。また、環境問題に対しても、省エネ、低騒音、低振動で成形できるのみならず、スポーツ用樹脂ボートに使用されているリサイクルが不可能な樹脂材料をアルミ合金へ素材変更し、本技術で成形することにより、経済的、社会的にも大きな効果が有ると考えられる。

(効果)
大型成形品の小ロット生産や試作開発の迅速化が可能となり、様々な金属素材が使用可能であるため、新幹線車両、自動車部品、家電製品、事務機器部品等の分野での利用が期待される。

本新技術によるダイレスフォーミング加工機は、
(1) 成形形状によっては金型が不要
(2) 3軸NCプログラムにより操作性が向上
(3) 低騒音、高い安全性
(4) フロア-面積が少なくてすむ
(5) 複雑な形状が容易に成形できる
(6) 工期短縮、試作開発費の削減が図れる
などの特徴を持つため、新幹線車両、自動車部品、家電製品、事務機器部品等の様々な分野での成形加工に利用されることが期待される。

・開発を終了した課題の評価
・図-1 成形原理図
・図-2 ダイレスフォーミング加工機成形工程
・図-3 各種成形品サンプル
・図-4 開発品の外観
・図-5 開発品の外観

(注)この発表についての問い合わせは以下の通りです。 
科学技術振興事業団 開発部 管理課長 夏見 博康
[電話(03)5214-8435] 井口 穣
株式会社アミノ 開発技術課 主任技術員 呂 言
[電話(0544)27-0363]


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