アルブミン回収型腹膜透析装置の開発


 
腹膜透析用具チーム/リーダー 竹澤真吾、サブリーダー 酒井 旭
 
研究の概要
 腎機能不全疾患治療法として腹膜透析法が十数年前にアメリカで開発され、日本には1983年に導入された。近年では慢性腎不全患者の維持透析法として定着している。技術の向上に伴い腹膜透析療法期間も延長されているが、患者体内のアルブミン損失による低アルブミン血症や、長期腹膜透析患者での腹膜硬化症の発症が大きな問題となっている。腹膜透析の原因物質は高浸透圧物質として使用しているグルコースだが、グルコースに代わる浸透圧物質は現状で存在していない。そこで、本研究では腹膜透析排液中に存在するアルブミンに着目し、自己アルブミンを回収濃縮し、浸透圧物質として利用するとともに低アルブミン血症の回避を行い、長期腹膜透析を可能とする。
 
自動腹膜透析装置の開発
 カセット型の回路を試作し、開発した自動腹膜透析装置にて排液濃縮が可能となるようにした。装置はコンピュータプログラムにて全自動で作動し、カセット装着の認識後自動的に準備、治療、終了操作を行う。全ての過程において携帯電話網を使用した遠隔モニタが可能であり、主治医は自分のコンピュータから状態を把握することが可能である。
 
濃縮実験結果
 濃縮患者排液を開発した装置で濃縮し、アルブミンが目的とする濃度(10g/dl程度)まで可能かどうか検討した。その結果、アルブミンは効率よく濃縮され、現在廃棄している自己アルブミンを回収、再利用できることが判明した。
種類 濃度(g/dl) 濃縮率
排液 0.05 -
1回目濃縮後 1.74 34.1
2回目濃縮後 3.55 69.5
3回目濃縮後 7.70 151.0
4回目濃縮後 8.26 161.8
腹膜硬化症の回避
 腹膜の変性を防ぐことによって、腹膜硬化症そのものを回避できる可能性がある。そこで、亜硫酸ソーダなどによる抗酸化作用を利用して腹膜の変性を防ぎ、腹膜硬化症予防を検討した。基礎実験では予防効果が期待でき、今後動物実験等による確認を行い、臨床へ向けて開発する。
 

This page updated on March 27, 2002

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