[補足説明]


 
(研究の背景)
 システムバイオロジーは、著者が提案している生物学の新たな分野であり、生命をシステムとして理解することをその目的とする。分子生物学は、分子機械としての生命の研究、いわば部品の研究であり、近年の目覚しい進歩により、多くの遺伝子と蛋白質の性質が解明されつつある。これらの研究の成果を基盤に、それらの部品がどのように組み合わせられ、細胞や臓器、さらには個体を形成するかをシステムとして理解することが可能な段階に入りつつある。システムバイオロジーは、網羅的かつ高精度な実験、それを可能にする装置、データからモデルを形成するシステム、ダイナミクス解析のためのシミュレーションや解析理論などからなる、統合的な生命科学であり、システムとしての生命の理解を目指す。
 この領域の研究の進展により、製薬や医療において、特に複数の遺伝子の変異や代謝回路の複雑な動態がかかわる疾病に対しては、大きな効果をもたらすと考えられる。たとえば、薬を開発する過程で、その安全性や効果をまずコンピュータによるシミュレーションにより確認するということが可能になる。また、各個人の遺伝的個性や細胞の代謝状態を考慮し、シミュレーションに基づく高度な個別医療や予防医療への道も開けると考えられる。さらに将来、個別の臓器のクローニングを行うにあたり、その成長過程をモニターし、シミュレーションなどによって培養している臓器の状況を推定し、適切な形状と機能になるよう、精密な制御をしながら培養するといったことにも役立てることができると考えられる。
 
(今回の成果のポイント)
 システムバイオロジーという新しい分野を「サイエンス」誌が特集というかたちで、取り上げることで、この分野の認知度が高まり、研究がさらに促進されると考えられる。
 

This page updated on March 1, 2002

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