概要


 
 システムバイオロジーは、遺伝子や蛋白質という部品レベルだけではなく、細胞や臓器、さらには個体といったシステム・レベルでの生命の理解を目指す研究分野である。本論文では、この新たな分野を概観し、基本的概念、直面する問題点、期待される展開について議論した。システムとしての生命の理解には、その構造の理解、ダイナミクスの理解、制御方法の理解、設計方法の理解の段階がある。また、高精度で網羅的な測定が、極めて重要であり、それらのデータから遺伝子のネットワークなどの推定が行われ、それに基づきダイナミクスの解析が可能となる。ここで、システムのロバストネス*1などが重要なテーマとなる。この分野の進展は、生命現象の理解だけではなく、よりシステマティックな製薬・投薬による副作用の低減や再生医療など医療に大きなインパクトを与えることが期待される。
 なお、本システムバイオロジー特集には、北野宏明の概論に加え、ERATO北野共生システムプロジェクトの研究顧問を務めるカリフォルニア工科大学のJohn Doyle教授の、生物の複雑さとロバストネスに関する論考も掲載される。
 
*1 ロバストネス : 頑健性のこと。この場合、システム(生物)が環境の変化に対しても、そのシステムが持つ本来の機能をはたせる能力のことをさす。
 

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