参考

平成13年度「委託開発事業(中堅中小企業対象、新規企業対象)」課題内容


○中堅中小企業対象(14件)
 
課題名: 人工関節用ビタミンE添加摺動部材
研究者: 京都大学再生医科学研究所 助教授 富田直秀
委託予定企業: ナカシマプロペラ株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、ビタミンEと超高分子量ポリエチレンを混合し、真空下等で圧縮成型した人工関節用摺動部材に関するものである。この材料は、抗酸化剤であるビタミンEを含有するので、耐酸化性が向上し経時的酸化劣化による破壊が起きにくい。また、破断伸びが向上するので耐摩耗性も向上する。
 本技術によるビタミンE添加摺動部材によって人工膝関節等の寿命が改善され、術後の長期安定性の実現が期待される。
 
課題名: 好熱性菌由来の分解酵素の製造技術
研究者: 産業技術総合研究所関西センター 主任研究員 石川一彦
名古屋大学名誉教授 鵜高重三
委託予定企業: 洛東化成工業株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、好熱菌パイロコッカス ホリコシ由来の超耐熱性分解酵素を、量産する技術である。好熱菌パイロコッカス ホリコシは沖縄海溝内の熱水鉱床付近に生息し、その分解酵素は至適温度が100度付近と超耐熱性である。体外に大量に酵素を分泌する菌バチルス ブレビスに、超耐熱性分解酵素の遺伝子を組み込むことにより、この分解酵素が量産される。  本新技術による超耐熱性分解酵素は、繊維加工や廃棄物の分解などへの利用が期待される。
 
課題名: 共分散法による酸化亜鉛基微粒子の製造技術
研究者: 物質・材料研究機構物質研究所 主幹研究員 羽田肇
委託予定企業: ハクスイテック株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、粒径が小さいため光の散乱が少なく、可視光透過性の高い酸化亜鉛基微粒子を製造する技術に関するものである。
 本新技術では、亜鉛化合物を液相で反応させることにより得られる微細で凝集しにくい前駆体を、粒径の増大が生じにくい低温で酸化亜鉛に転換させるため、微細で分散性のよい酸化亜鉛微粒子を得ることができる。本新技術により、可視光に対する透明性と酸化亜鉛の特性である紫外線遮蔽性を兼ね備えた微粒子が得られることから、工業用や食品用等のフィルム包装資材、抗菌脱臭用添加剤、サンケア用化粧品材料としての用途が期待される。
 
課題名: 大面積プラズマ支援スパッタリング法による自浄性ガラスの製造技術
研究者: 富山県立大学工学部 教授 石井成行
委託予定企業: 堀江硝子株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、大面積のガラス基板上に光触媒活性を有する酸化チタンを成膜し自浄性ガラスを製造する技術に関するものである。
 本新技術では、基板側面に配置したマイクロ波アンテナおよび基板背面に配置した往復運動可能な磁石を用い基板表面近傍に高密度プラズマ領域を作ることで、堆積する成膜分子の持つ活性化エネルギーを増大させることが可能となり、基板を加熱することなく結晶性に優れた膜を水平搬送で連続的に形成することができる。
 
課題名: 溶媒抽出法による混酸廃液からの酸回収装置
研究者: 関西大学工学部 教授 芝田隼次 
委託予定企業: 三和油化工業株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、混酸廃液から酸を溶媒抽出法を用いて分離回収することにより、廃液処理コストを低減すると共に、環境負荷を低減するものである。 
 本新技術では、混酸廃液から酸を回収する工程として、高級アルコールまたはリン酸エステルを用いた抽出、酸による洗浄、水による剥離を繰り返し行うことで、混酸廃液中のそれぞれの酸を高純度で分離回収することができる。本新技術は、半導体関連産業や電子部品製造業などから排出される種々の組成の混酸廃液処理への適用が期待される。
 
課題名: 低加速度水素吸蔵合金アクチュエータ
研究者: 北海道大学電子科学研究所 教授 伊福部達
委託予定企業: コペル電子株式会社
新技術の内容:
 本新技術は,水素吸蔵合金が加熱・冷却作用により大量の水素ガスを放出・吸収する特性を用いたアクチュエータに関するものである。
 本新技術によるアクチュエータは、水素ガスの圧力を動力として利用するため、耳障りな騒音がなく、不快な振動も発生せず、装置の質量当たりの出力パワーも大きい。また、水素ガスの圧縮性による柔らかな緩衝作用は人間の筋肉に備わっているものと近いので、手や足の関節リハビリ装置、車椅子の座面昇降装置、ベッドから車椅子への移乗介助装置および手指・腕・脚のパワーアシスト用アクチュエータとしての利用が期待される。
 
課題名: クロマトグラフィー用前処理濃縮装置
研究者: 豊橋技術科学大学物質工学系 系長・教授 神野清勝
委託予定企業: 信和化工株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、微量の物質をクロマトグラフィーで分析するために、試料を前処理する装置に関するものである。本装置では目的の物質と吸着しやすい繊維の束を中空細管に詰め、接触面積を大きくすることで抽出効率が高く短時間で処理ができる前処理濃縮管を用いる。流入した試料中の目的化合物のみが繊維に吸着するので、試料を流入した後、脱離用の溶媒を流して目的化合物を濃縮する。
 本新技術による装置は、創薬研究等における多量の化合物の迅速な分析や野外等での環境モニタリング等の用途での各種クロマトグラフィーによる分析法への利用が期待される。
 
課題名: 超精密薄膜チップ抵抗器
研究者: 秋田県高度技術研究所 所長 大内一弘
委託予定企業: アルファ・エレクトロニクス株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、高い温度安定性・長期安定性を示す超精密薄膜チップ抵抗器に関するものである。本新技術では、ニクロム(NiCr)合金をスパッタリング法で積層することによって0.1μm程度の薄膜を形成し、フォトリソグラフィーによりパターンを描くことでMΩ級の抵抗体を作成し、かつ高い温度安定性と長期安定性を示す超精密薄膜チップ抵抗器を製造するものである。
 本新技術による超精密薄膜チップ抵抗器は、MΩ級の高抵抗値を持つとともに高い温度安定性・長期安定性を示すなどの特徴を有することから、高精度の電子測定機器や医療機器などの分野での利用が期待される。
 
課題名: マスクレス露光装置
研究者: 産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門長 横山浩
委託予定企業: 株式会社ニュークリエーション
新技術の内容:
 本新技術は、フォトマスクを使用することなく露光を可能とするマスクレス露光装置に関するものである。
 本新技術によるマスクレス露光装置では、電気的に傾きを制御できる多数の微少なミラーとCADシステム、プロジェクター、可変倍率対物レンズ光学系等を組み合わせることにより、フォトマスクを使用せずに露光を行うことができるため、研究開発試作用の露光装置、半導体の製造工程管理用ID番号露光装置、その他電子回路用露光装置として利用されることが期待される。
 
課題名: HIV感染価・薬剤耐性測定法
研究者: 国立感染症研究所 主任研究官 巽正志
委託予定企業: 株式会社三菱化学ビーシーエル
新技術の内容:
 本新技術は、HIVウイルスに感染し易い培養細胞を用いた、HIVウイルスの感染価・薬剤耐性の測定法に関するものである。培養細胞はHIVウイルスが細胞に感染する経路となる受容体を細胞膜にもち、容易にHIVウイルスに感染する。感染後HIVウイルスが培養細胞内で増殖する際につくるタンパク質が信号としてはたらき培養細胞外に酵素を分泌する。この酵素と反応して発色する色素によって感染を容易に検出できる。
 本新技術は、患者検体中の増殖能力をもつHIVウイルスを検出できるため、HIVウイルスの検出や、薬剤耐性の判定に有用な情報を提供する検査法として期待される。
 
課題名: 三次元超微細構造プラスチック光学素子
研究者: 大阪府立大学大学院工学研究科 教授 岩田耕一
委託予定企業: ナルックス株式会社
新技術の内容:
 本新技術は、特定の波長や偏光方向を持つ光のみを反射する三次元超微細構造プラスチック光学素子に関するものである。
 本新技術による光学素子は、特定の波長と共振する性質を持つ微細パターンを電子線描画装置等により金型に描画し、この金型を用いて射出成形によりプラスチックにパターンを転写することにより、光学素子を安価かつ多量に製造することができる。本新技術により、光学素子の形状自由度が高まり、コストも低減できることから、波長分離素子、偏光分離素子、反射防止構造等へ利用が期待される。
 
課題名: 湿式成膜法による半導体ウェハー上の再配線加工技術
研究者: 関東学院大学工学部 教授 本間英夫
委託予定企業: 株式会社野毛電気工業
新技術の内容:
 本新技術は、めっき処理を用いた湿式成膜法による半導体ウエハー上の電極形成・再配線加工技術に関するものである。本新技術では、めっき処理における添加剤を適切に選定し液中電位差の調整と金属析出条件の最適化などを行い、電極部へのニッケル・金めっき処理や電極部からの再配線加工をするものである。
 本新技術による半導体ウエハー上の再配線加工技術は、めっき槽の中で一度に多数のウエハーのめっき処理ができるので半導体ウエハー上の電極形成・再配線加工を低価格で大量に行うことが可能となることから、小型半導体パッケージの分野での利用が期待される。
 
課題名: 電子蓄積型高輝度X線発生装置
研究者: 立命館大学理工学部 教授 山田廣成
委託予定企業: 株式会社フジキン
新技術の内容:
 本新技術は、電子が減速する際失うエネルギーがX線に変換される制動放射現象を利用して、小型蓄積リングに蓄えた電子を軌道上に置いた微小ターゲットに繰り返し通過させることにより高出力のX線を得る電子蓄積型高輝度X線発生装置に関するものである。
 本新技術によるX線発生装置は、微小ターゲットを通過した電子をリング内で再加速し、X線発生に繰り返し使用することで小型装置ながら大きなX線強度が得られる。また、発生するX線の方向が軌道接線方向に集中し、輝度の高いX線が得られる。本新技術により、高強度のX線が小型の装置で得られるようになることから、滅菌装置、分析装置等のX線源として利用が期待される。
 
課題名: 二型糖尿病モデルマウスcDNAアレイ
研究者: 千葉大学大学院医学研究院 教授 古関明彦
東京都老人総合研究所分子遺伝学部門 室長 白澤卓二
委託予定企業: 株式会社サイメディア
新技術の内容:
 本新技術は二型糖尿病に関連した遺伝子の発現量を測定するcDNA(相補的DNA)アレイに関するものである。インシュリン受容体を変異させた二型糖尿病のモデルマウスと野生型で発現量の異なる遺伝子のcDNAを基板に固定化したcDNAアレイを用い、薬物投与や外部刺激等を与えたマウスのどの遺伝子の発現量が変化しているかを迅速に測定することができる。
 本技術による二型糖尿病モデルマウスcDNAアレイによって、二型糖尿病への環境要因や薬剤の影響を調べることができるので、二型糖尿病発症機構の解明や、創薬へのツールとしての利用が期待される。
 
 
○新規企業対象(3件)
 
課題名: 超高分解能X線分析顕微鏡
研究者: 東北大学大学院理学研究科 教授 中沢弘基
委託予定企業: 株式会社エックスレイ プレシジョン
新技術の内容:
 本新技術は、サブミクロンオーダーの高輝度X線ビームを試料に照射し、入射側及び透過側から発生した蛍光X線を用いて三次元構造体の元素分析をミクロンオーダーの高分解能で分析する超高分解能X線分析顕微鏡に関するものである。
 本新技術による超高分解能X線分析顕微鏡は、空間分解能がミクロンオーダーであり、元素分析ができ元素の三次元分布を測定できる。また、測定時間が短かく迅速な分析が可能であることから、高密度多層回路・精密電子部品の内部の非破壊三次元分析や半導体回路等の開発から製造における品質管理・故障診断用顕微鏡としての利用が期待される。
 
課題名: ハイサイクル樹脂成形用積層金型
研究者: 元理化学研究所研究基盤技術部長 中川威雄
委託予定企業: 株式会社積層金型研究所
新技術の内容:
 本新技術は、レーザ切断された鋼板を積層し、ろう材等で積層間を金属的に結合した後表面を加工することによって、成形サイクルの短いハイサイクル樹脂成形用積層金型を低コストで製作する技術に関するものである。
 本新技術によるハイサイクル樹脂成形用積層金型は、自動車産業等で通常使用している数mmオーダーの鋼板を積層して製作できるので、金型製作期間の短縮、金型製作コストの低減とともに成形サイクルの大幅な短縮による樹脂成形の生産性向上を図ることが可能となり自動車部品産業や建築用樹脂製品産業などの分野での利用が期待される。
 
課題名: 細胞培養用無血清培地
研究者: 九州大学大学院医学研究院 教授 濱崎直孝
委託予定企業: 株式会社トランスジェニック
新技術の内容:
 本新技術は、細胞賦活作用をもつ化合物を用いた細胞培養用無血清培地に関するものである。細胞賦活作用をもつ化合物は、細胞内のエネルギー代謝の改善や細胞の保存に幅広く利用することが可能である。また、培地成分のほとんどを化学合成で安価に製造することが可能なことから、安全性でかつロット間のばらつきも少ない。
 本新技術による細胞培養用無血清培地は、コスト安で、効率的で、汚染源が少なく安全であることから、再生医療や臓器移植等の培地として利用が期待される。

This page updated on February 14, 2002

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