(資料1)

高精度・高感度かつ手軽に測定出来る色変化でホルムアルデヒドを検出する試薬


ホルムアルデヒド測定の重要性
 近年、「シックハウス症候群」と呼ばれる住宅内装材の化学物質が原因とされる目や喉の痛み、あるいはアトピー性皮膚炎の悪化といった健康被害が問題にされています。中でもホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因物質として最も問題視されています。ホルムアルデヒドは、樹脂や高分子合成の原料として大量に使用されると共に、それらの製造工程や製品から大気中に放出され、例えば、新築住宅、リフォーム後の住宅で許容範囲をはるかに超える高濃度のホルムアルデヒドが検出された事例があります。また、ホルムアルデヒドは水に溶けやすいため、降水の酸性化を促進させる物質としても指摘されています。このため、室内空気中および大気中のホルムアルデヒド濃度を正確に見積もる必要があります。
 
既存技術の問題点
 現在利用されている室内空気中の化学物質を測定する方法として、標準的測定法、検知管法、蒸気拡散式分析法、化学発光法、電気化学分析法などが挙げられます。これらの方法は厳密な測定結果は得られるものの、i) 精密な分析装置と高度な技術が必要、ii) 結果検出まで長時間必要、iii) 測定試薬が環境に有害、iv) 妨害物質による悪影響、という問題点がありました。さらに、消費者あるいは住宅業者の間では、現場で、すぐ、手軽に知りたいという要求が強く、時間と装置、技術を要する既存の分析方法にとってかわる新しい手法が切望されていました。
 
ホルムアルデヒドを検出する試薬を開発
今回、神奈川県地域結集型共同研究事業において、研究グループリーダーの鈴木孝治(慶應義塾大学理工学部教授)、鈴木祥夫( KAST 研究員) が開発した検出試薬は、上記の問題点を解決し、高感度かつ手軽に効率的な分析を実現することが出来る試薬です(特許出願済)。
 
試薬の4大特長
1) 試薬とホルムアルデヒドを室温で混ぜるだけ(複雑な前処理操作は不要です)。
2) ホルムアルデヒドとのみ特異的に反応(妨害物質トルエン等による悪影響を受けません)。
3) 結果は無色→黄色へという目視で識別可能(複雑な測定装置は不要です)。
4) 測定時間はわずか10分(従来は最長で40 時間を要していました)。
 
代表的な測定例
 図2 に示すのは、試薬とホルムアルデヒドが反応する前後の写真です。
 図2(a)は、反応させる前の試薬溶液(無色)と、濃度1.0ppm のホルムアルデヒド溶液を試薬溶液に加え手で簡単に混ぜた後、10分後のもの(黄色)です。また、図2(b)は本試薬を乾燥させた紙に染み込ませたもの(無色)と、ホルムアルデヒドガスを接触させた後、10分後のもの(黄色)です。さらに検出下限値は0.05ppm です。
 一般にホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質として注目されており、厚生労働省の定めた室内濃度指針値は0.08ppm となっています。また各企業は壁紙、塗装剤などから放出されるホルムアルデヒドを低減させるため、JISの表示区分であるE0レベル(ホルムアルデヒドの放散量が0.5mg/L(400 ppm)以下)、およびJAS の定めるFc0 レベル(ホルムアルデヒドの放散量が平均値0.5mg/L(400ppm)以下、最大値で0.7mg/L(560ppm)以下)を目指した商品開発に取り組んでいます。これらから判るように、今回開発した試薬は現在の規格、規制などの基準値内か否かという検査を、現場で、すぐ、手軽に知りたい、というニーズに十分対応できる性能を持っています。
 さらに現場のニーズによって、赤色などへ変色する試薬の合成も可能です。
 
環境、医学、医薬など広い応用を期待
室内、戸外を問わず大気分析への応用が可能です。
住宅、環境分野のみならず、石油化学などの化学工業分野、医学、製薬に関連したアルデヒドの簡便測定といった広範囲な応用が期待されます。
   
この成果は1月24日開催の神奈川県地域結集型共同研究事業研究報告会で発表します。
(問い合わせ先:神奈川科学技術アカデミー研究部 電話044-819-2035)
 

This page updated on January 18, 2002

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