科学技術振興事業団報 第199号

平成13年12月26日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報室)

エッジ励起型マイクロチップYb:YAGレーザの発振に世界で初めて成功

 科学技術振興事業団(理事長:沖村 憲樹)と福井県にて平成12年度より推進中の福井県地域結集型共同研究事業(中核機関:(財)福井県産業支援センター(理事長:下川 道雄)、事業総括:松浦 正則((株)松浦機械製作所 代表取締役社長))において、マイクロチップ化したYb:YAG(イッテルビウム:YAG)を、エッジ励起の方式により、レーザ発振させることに世界で初めて成功した。これにより、従来よりも小型で低コストかつ高効率な超短パルスレーザの発振が可能となり、半導体などに代表される超微細加工への応用が期待される。なお、本研究成果は、分子科学研究所、福井大学および福井県工業技術センターの共同研究チームによって得られたもので、平成13年12月3日に米国アリゾナ州ツーソン市で行われたレーザーズ2001 (LASERS 2001) で発表された。
 超短パルスレーザは、高品質の超微細加工等を可能とするもので、ナノテクノロジーを始め半導体や高機能の機械加工、化学反応制御に不可欠な先端的なレーザと位置付けられている。しかし、現在までに超短パルス化が実現されているTiサファイヤレーザは、その励起エネルギー源としてNd:YAG(ネオジウム:YAG)レーザ装置を使用しなければならないなど装置が大型で複雑なため非効率で不安定かつ高コストであり、出力も制限されている。そのため産業への実用は進んでいない。またNd:YAGレーザは、結晶の性質から超短パルス化ができない。ところがYb:YAGレーザは、励起エネルギー源として半導体レーザを用いることができることから小型化・低コスト化ができることに加え、超短パルス化も可能なことから、最近関心が高まってきている。
 この研究グループのリーダーを努める分子科学研究所の平等拓範助教授らは、エネルギー源である半導体レーザ光のほとんどをマイクロチップ化したYb:YAG結晶に集中させることができ、良好なビーム品質と高出力化が同時に得られる独創的な構成のエッジ励起型Yb:YAG/YAGコンポジット構造を考案し、今回始めてその発振(準CW(準連続波)動作で出力41W、スロープ効率38%、パルスエネルギーとしては最高1.5J)に成功した。
 平等助教授は、今日では次世代の高出力、高効率レーザとして認識されつつあるYb:YAGレーザについて1993年より米国スタンフォード大学と共同して研究を進め波長可変レーザの発振等にも成功している。同助教授のこれまでの研究成果と今回の実験結果とを組み合わせることで、低コストで小型・高効率のYb:YAG超短パルスレーザシステムが実現できるものと期待される。福井県地域結集型共同研究事業では、ビーム品質や高出力化などのさらなる改善や超短パルス化の実現に向け研究を進めていく予定である。

補足説明

本件に関する問い合わせ先:

(研究内容について)
平等 拓範(たいら たくのり)
岡崎国立共同研究機構 分子科学研究所 助教授
〒444-8585 愛知県岡崎市明大寺町字西郷中38
TEL: 0564-55-7480 / FAX: 0564-53-5727

(事業について)
菊池 文彦(きくち ふみひこ)
科学技術振興事業団 地域事業推進室 調査役
〒332-0012 埼玉県川口市本町4−1−8
TEL: 048-226-5634 / FAX: 048-226-5666

勝木 一雄(かつき かずお)
財団法人 福井県産業支援センター 主任
〒910-0102 福井県福井市川合鷲塚町61−10
TEL: 0776-55-1555 / FAX: 0776-55-3430

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