社会技術研究推進事業 平成13年度新規採択
研究代表者および研究課題一覧


 
3. 研究領域:「脳科学と教育」
氏名 フリガナ 所属機関 所属学部・学科など 研究課題名
川島 隆太 カワシマ リュウタ 東北大学 未来科学技術共同研究センター 教授 前頭前野機能発達・改善システムの開発研究
定藤 規弘 サダトウ ノリヒロ 岡崎国立共同研究機構 生理学研究所大脳皮質機能研究系心理生理学研究部門 教授 人間のコミュニケーション機能発達過程の研究
瀬川 昌也 セガワ マサヤ 瀬川小児神経学クリニック 院長 神経回路の発達からみた育児と教育の臨界齢の研究

総評 : 領域統括  小泉 英明(鞄立製作所中央研究所 主管研究長)

 本研究領域は、Human Security & Well-being(安寧とよりよき生存)を基調とした未来を見据え、従来の脳科学にも教育学にも存在しなかった学習・教育指向の新領域を創生しようとするものである。先端技術・自然科学と人文学・社会科学を架橋・融合したTrans-disciplinary (環学的)な視点から、教育関連問題の根幹にアプローチする。
 具体的には、脳神経科学の蓄積されたデータの学習・教育への適用、発達認知神経科学や進化・発達心理学、各種神経科学を基盤とした知見の学習機序や広義の教育への応用、自然科学・人文学の成果と臨床・教育・保育等の現場の知識を融合した学習・教育等、前胎児期から一生を終えるまでの全ての学習・教育過程を包括的な視点で捉え直し、少子・高齢化社会における最適な学習・教育システムとその社会基盤構築に資する研究等を対象としている。
 本年度の募集に対し、研究領域の趣旨に沿った40件の非常に興味深い内容の応募があった。分子生物学・神経生理学から学習の感受期に迫るだけでなく、神経科学・認知神経科学・高次脳機能計測の視点からの学習機序・障害機序の解明や、具体的な教育法・教育カリキュラム改善の試みまで、提案された研究課題は多岐にわたった。分野の異なった複数研究室間の融合的連携を基調とした提案がほとんどであり、関係研究施設は150箇所以上に及んでいる。これらの提案は6名の領域アドバイザーにお願いして書類審査を行い、領域の趣旨に沿った成果が期待できる提案のうち、特に優れた研究提案10件を面接対象として選定し、それらに対し面接選考を行った。
 その結果、従来の研究制度では捉えきれない独創的かつ俯瞰的な研究で、同時に社会貢献が具体的に期待できる研究課題を選定した。特に、将来、自然科学・技術と人文・社会科学を融合させ、同時に、基礎の研究者(Scientist & Scholar)と現場の実践者(Practitioner)を結び付けることが可能な課題であることを重視した。
 本年度の選考にあたっては、社会技術の趣旨にきちんと沿った提案であることを基本とした。同時に、異分野の単なる寄せ集めではなく、異分野の架橋・融合に独創性・新規性があるかを吟味した。また、従来の神経科学の枠組みでは捉えきれない視点を重視するとともに、研究体制・組織が十分に練られているかどうか、また、具体的な成果に結びつく確度についても評価した。本来、「脳科学と教育」という課題は本質的かつ巨大なテーマであり、長期的・俯瞰的視点の下に確実な研究が必要である。長期的視点に立った基礎的研究の中にも極めて優れた提案が含まれていた。特に優れた提案は、全体で10数件に及んだが、選定件数の制約上、3件に絞り込まざるを得なかったのは誠に残念であった。

 

This page updated on December 21, 2001

Copyright©2001 Japan Science and Technology Corporation.