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研究概要一覧


【ポスドク参加型】

「タイムシグナルと制御」(領域総括:永井 克孝 三菱化学生命科学研究所 取締役所長) 14件

氏 名 機関・所属・役職 研究課題名 研究課題概要
笠原 浩二 東京都臨床医学総合研究所生命情報部門研究員 神経系におけるスフィンゴ糖脂質ミクロドメイン超分子構造の機能発現と制御 スフィンゴ糖脂質は神経系に豊富に含まれ、糖鎖を細胞表面に露出し脂質二重層の外側に存在している。最近、スフィンゴ糖脂質は細胞膜上で集合してミクロドメインを形成しシグナル伝達分子と会合していることが明らかになってきた。本研究は神経系におけるスフィンゴ糖脂質ミクロドメインの機能を解明することを目指す。
菊地 和也 東京大学大学院薬学系研究科助教授 新規蛍光プローブの創製による機能分子の細胞内可視化 個体内および細胞内において、生きた状態におけるシグナル伝達は、時間軸と空間軸とを巧妙に制御して行われている。本研究では、細胞をすりつぶさないで、リアルタイムの分子を可視化する技術として蛍光プローブをデザイン・合成して細胞系に応用する。また、分子を機能しているその場で不活性化するため、小分子を用いてレーザー分子不活性化を行う。
後藤 由季子 東京大学分子細胞生物学研究所助教授 大脳神経系前駆細胞の生死の制御とその生理的意義 大脳の発生過程において、多くの細胞が死んでいることが知られている。最近、その中でも神経系前駆細胞がたくさん死んでいることが分かってきた。細胞死を抑制すると異常な脳になることから、生死制御が脳発生上重要であることが分かる。本研究では、脳の発生過程における神経系前駆細胞の生死を制御する分子メカニズムと意義を明らかにすることを目指す。
齋藤 実 東京都神経科学総合研究所分子神経生理部門主任研究員 加齢に伴う学習・記憶低下の遺伝子プログラム いかなるヒトも加齢に伴う学習記憶能力の低下から逃れることが出来ない。そこにはどの様なメカニズムが関与しているのだろうか? これまでの研究ではモデル動物の寿命が障害となり、その分子メカニズムの解明に至っていない。本研究では寿命が短く、分子遺伝学的解析に有利なショウジョウバエをモデルとして、加齢に伴う学習記憶障害の原因となる記憶プロセスの同定、その発現に至る遺伝子プログラムの解明に迫る。
佐田 政隆 東京大学大学院医学系研究科リサーチレジデント 骨髄由来血管前駆細胞の同定と機能解析 動脈硬化や血管形成術後再狭窄といった血管病では、主として平滑筋細胞の蓄積によって内腔が狭窄する。最近、私は病変部の平滑筋細胞が骨髄細胞由来であることを見出した。本研究では、前駆細胞の骨髄からの動員、傷害血管への定着、血管細胞への分化、増殖の機序を分子レベルで明らかにする。そして、血管リモデリングの新しい概念の確立と治療法の開発を目指す。さらに、自己の成体幹細胞を利用した人工血管の作製を試みる。
篠原 彰 大阪大学大学院理学研究科助教授 減数分裂期の染色体機能部位におけるプロテインプロファイリング 配偶子形成に必須の減数分裂期では、染色体の様々な機能部位が大切な役割を果たす。本研究では、出芽酵母をモデルシステムとして染色体上の特定部位において、どのような一群の蛋白質が時間的、空間的にどのように存在するか、という情報解析(プロテインプロファイル)、およびその情報に基づいた染色体部位の機能解析によって、減数分裂期のDNA上で起こる現象を分子レベルで総括的に理解することを目指す。
鈴木 匡 State University of New York Assistant Professor 小胞体タンパク質品質管理機構に関わるPNGaseの構造と機能 ペプチド:N-グリカナーゼ(PNGase)は、糖タンパク質のアスパラギン型糖鎖を根元から切断する加水分解酵素である。真核細胞の細胞質に普遍的に存在する本酵素は、小胞体におけるタンパク質の品質管理機構、すなわちフォールディングやサブユニット構成が不十分、不的確なタンパク質を選択的に認識、分解する系に関わる。本研究は多様なアプローチによって、最近見出された本酵素とその複合体の構造と機能の実体に迫る。
芹沢 尚 日本学術振興会特別研究員 嗅神経回路の形成と再構築の分子機構 嗅神経は、ヒトやマウスなどの高等動物で常時再生しており、風邪などによって引き起こされる嗅覚障害は、数週間後には元通り回復する。これは嗅上皮の嗅神経が一旦死滅した後に再生され、嗅球上に神経回路が再構築されることに依る。本研究では、嗅神経回路形成のメカニズムを、嗅覚受容体遺伝子の発現、並びに、嗅神経の軸索投射の観点から解明する。
中山 潤一 コールドスプリングハーバー研究所ポスドク クロマチンの動的構造変換による遺伝子発現の制御 細胞が個体を作るための多様性を生み出すためには、決まった時期に適当な遺伝子をオン、あるいはオフにしてその状態を維持させることが重要になる。この際DNAの一次配列の変化では説明できない、エピジェネティクスと呼ばれる現象が注目されている。本研究では、クロマチンを構成するヒストンの修飾、およびそれを認識する蛋白質の結合状態を詳細に解析することで、遺伝情報の伝達におけるこの現象の役割の解明を目指す。
広常 真治 埼玉医科大学ゲノム医学研究センター助教授 神経細胞の遊走とTubulinネットワークの制御 ほ乳類の脳の形成の特徴はダイナミックな神経細胞の遊走である。これまでに神経細胞の遊走異常による疾患・滑脳症の原因遺伝子Lis1は、DyneinやKataninの調節因子であり、Tubulinネットワークの再編・制御を行っていることが分かった。本研究では、このように神経細胞遊走のメカニズムを分子のレベルで明らかにする。
深川 竜郎 国立遺伝学研究所集団遺伝研究系助手 染色体分配の制御機構の解明 生物が生命を維持するためには、染色体が安定に保持・増殖されなければならない。本研究では、染色体分配に重要な役割を担うセントロメアの形成機構と細胞周期における制御機構の解明を目指す。セントロメア機能を理解することによって、将来的にはセントロメアを試験管内で再構成して人工制御が可能な染色体ベクターが作成可能になると期待される。
古川 貴久 The University of Texas assistant professor 網膜光受容体細胞の運命決定機構と再生 我々の網膜は目の後部に位置する膜状の組織で、視覚系の光センサーとして働く必須の器官である。網膜色素変性症に代表される網膜疾患に苦しむ患者は世界的に多く、重篤な視力障害や失明を引き起こすため、その予防や治療は極めて重要である。網膜疾患では主に光受容体細胞が変性・障害されるが、ほとんど有力な治療法がないのが現状である。本研究では、光受容体細胞に注目し、その細胞運命決定機構の解明と再生を目指す。
星野 幹雄 京都大学大学院医学研究科助手 Rho類似G蛋白質の神経回路網形成に果たす役割 神経回路網の形成過程、とりわけ神経細胞移動、神経突起伸長、軸索経路探索、シナプス形成等、神経細胞の形態が大きく変化する過程にはRho類似G蛋白質が細胞の振る舞いを決定する分子スイッチとしての中心的な働きが示唆されてきているが、未だ個体レベルでの解析がほとんどなされていない。本研究では、子宮内エレクトロポレーション法やコンディショナルノックアウトなどのマウス個体を用いた手法を用いて、Rho類似G蛋白質が神経回路網形成に果たす役割について個体レベルで明らかにすることを目指す。
横溝 岳彦 東京大学大学院医科学研究科助教授 医薬品創製標的としてのG蛋白質共役受容体の膜移行の分子機構 ヒトゲノム上に1500種類以上あると考えられるG蛋白質共役型受容体(GPCR)は、新たな創薬の対象として注目されているが、そのリガンドが同定されているものはわずか1割に過ぎない。リガンドが不明のGPCRの多くは、過剰発現系ではうまく細胞膜に発現せず、リガンドの同定や拮抗薬の開発を困難にしている。本研究では、GPCRの細胞膜移行のメカニズムを明らかにし、新規医薬品創薬の基礎的基盤を築くことを目指す。
*下線部は研究の実施により期待される技術の発展や新技術の創製を示す。

This page updated on November 12, 2001

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