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研究概要一覧


【個人研究型】

「認識と形成」(領域総括:江口 吾朗 熊本大学長) 11件

氏 名 機関・所属・役職 研究課題名 研究課題概要
秋山-小田 康子 科学技術振興事業団月田細胞軸プロジェクト研究員 左右相称動物の共通祖先のボディープランの究明 地球上に存在する多様な動物種は共通の祖先から進化を経て誕生したものである。本研究では、節足動物・鋏角類のクモの初期胚発生を分子生物学的に解析し、ショウジョウバエで蓄積した知見との比較から節足動物の祖先的なボディープランを導く。さらに脊索動物や他の動物の胚発生と比較することによって、左右相称動物の共通祖先に対する理解を深めるとともに、多様な動物の誕生につながったゲノムや遺伝子機能の変化を究明する。
浅原 弘嗣 The Salk Institute for Biological Studies staff scientisit 軟骨に特異的な遺伝子機能による軟骨分化制御の解明 軟骨細胞は動物を形どる四肢の「形成」において中心的な役割を果たしている。また、リウマチなどによる関節軟骨破壊後の「形の修復」は不可能で、新しい関節治療のためにも遺伝子レベルでの軟骨細胞分化メカニズムの解明が必要とされている。本研究では、新しい軟骨に特異的な遺伝子の研究を発生学、分子生物学、再生医学、病理学の4つの異なる角度から行い、将来的に遺伝子治療とステム細胞治療を組み合わせた、軟骨の再生医療の確立を目指す。
岩里 琢治 理化学研究所行動遺伝学技術開発チーム研究員 大脳皮質の生後発達の分子基盤 高等動物では、生後限られた期間(臨界期)に、大脳皮質の神経細胞が、神経活動によって伝えられる外界の情報を“認識”することが、機能的な大脳皮質の“形成”に必要と考えられている。本研究では、そうした神経活動依存的大脳皮質発達の分子機構解明を目的としている。マウス体性感覚野の第4層に見られる“バレル構造”(ヒゲのパターン)の形成を主要なモデルとして、条件的遺伝子操作マウスを活用して研究する。
太田 訓正 熊本大学大学院医学研究科助手 眼の形態形成制御遺伝子の機能的カスケードの解明 眼はほとんどの動物が持つ重要な感覚器官である。眼の発生は形態学的にはよく研究されてきたが、眼の形づくりの分子メカニズムはほとんど明らかになっていない。本研究では、最近発見した新しい分泌型タンパク質の機能解析を中心として、眼の形態形成時における分子間の機能的カスケードを研究することにより、眼の形づくりの分子メカニズムの解明を目指す。
加藤 薫 産業技術総合研究所脳神経情報研究部門研究員 成長円錐の運動解析による神経細胞形成へのアプローチ 成長円錐は伸張している神経突起の先端に見られる構造である。成長円錐が動き回り、神経伸張の経路を探索し、ターゲットを認識し、シナプスを作り、神経系を形成していくと言われている。本研究では、さまざまな刺激条件下での初期培養神経細胞の成長円錐の運動を高解像で捉え、生物物理的手法を用いて解析し、神経系の形成過程の基本原理の解明を目指す研究を行う。
桑原 一彦 熊本大学医学部助手 胎児形成におけるDNA複製酵素系の制御機構 動物の個体や器官の形成は、それぞれ固有の大きさが保たれているが、そのためには前駆細胞が急速に細胞分裂を起こして、それぞれの細胞が機能的な分化をする必要がある。この内在性の「増殖のオン・オフと分化誘導」の機構が胎児形成においてどのように働いているのかを、最近発見したDNA複製因子GANPの変異マウスを利用して、解明することを目指す。
永田 由香 理化学研究所分子細胞生物学研究室協力研究員 巨核球・血小板の特異的形態形成機構とその医科学的意義 必要時に細胞数を瞬時に大量に増やすため哺乳動物が進化の過程で獲得した戦略の一つに、巨核球・血小板の分化成熟過程に見られる形の制御による特異な現象がある。巨核球は細胞質分裂を経ず染色体数の増加により細胞の体積を増加させ、さらに神経突起に似た細長い多数の突起を形成し、断裂するという劇的な形態変化を起こし多数の血小板を一度に放出する。本研究では、この巨核球・血小板の形成メカニズムを分子レベルで解明し、血液疾患の診断・治療・予防に必要となる基礎知見の確立を目指す。
中村 輝 筑波大学生物科学系・遺伝子実験センター講師 初期発生における母性RNAの時空間的制御機構 細胞の極性は、しばしば局在化したmRNAによって決定されている。これら局在化するmRNAは、翻訳が抑制された状態で局在化し、局在化した領域で時期特異的に翻訳され機能している。しかし、このようなmRNAの時空的制御機構については不明である。本研究では、ショウジョウバエにおいて母性RNAの局在化と翻訳とを連携させている母性 RNP複合体に焦点を当て、一連の過程を連携させる分子機構の解明を目指す。
新美 輝幸 名古屋大学大学院生命農学研究科助手 遺伝子機能によるテントウムシ斑紋のパターン形成機構 私たちが日常よく見かけるナミテントウには、翅の斑紋に遺伝的多型が存在する。本研究では、トランスジェニックナミテントウを用いた遺伝子機能解析により、テントウムシ斑紋のパターン形成機構を解明し、斑紋パターン形成過程に生じた遺伝子上の変化と斑紋の多様性を関連づけることを目指す。
吉田 松生 京都大学大学院医学研究科助手 ほ乳類の精子形成を支える幹細胞の究明 ほ乳類の精巣では、次世代にゲノムを伝える任務を帯びた精子を、長期間にわたり極めて多数生み出し続ける。この継続的な精子形成は、種となる幹細胞を維持しつつ分化細胞を生み出す、幹細胞システムにより支えられている。本研究では、幹細胞システムを担う細胞群を生きた組織中で観察し、形態、機能、遺伝子発現といった多角的なアプローチで、その実体に迫る。
和田 洋 京都大学大学院理学研究科助手 脊椎骨形成の制御遺伝子ネットワークの系統発生学的解析 脊椎動物を特徴づける脊椎骨の進化が、どのような遺伝子レベルでの進化によってもたらされたかを調べる。ホヤやナメクジウオには脊椎骨はないが、その形成に必要な遺伝子はある。したがって、これらが脊椎骨形成のための新しいネットワークを形成したことが脊椎骨の進化につながったと考えている。この遺伝子間の新しい関係がどのように構築されていったかを脊椎動物とホヤ、ナメクジウオとの比較から解明する。
*下線部は研究の実施により期待される技術の発展や新技術の創製を示す。

This page updated on November 12, 2001

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