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研究概要一覧


【個人研究型】

「生体分子の形と機能」(領域総括:郷 信広 京都大学大学院理学研究科 教授) 10件

氏 名 機関・所属・役職 研究課題名 研究課題概要
伊倉 貞吉 キリンビール(株)医薬探索研究所ポスドク 水和情報を取り入れた蛋白質相互作用解析法の確立 蛋白質の相互作用インターフェースには多数の水和水が存在する。蛋白質分子間の相互作用の安定性と特異性には、蛋白質間の直接的な相互作用と同様に、水分子を介した間接的な相互作用も重要な役割を担っている。本研究では、低温X線結晶構造解析と計算機シミュレーションを主な手段として、蛋白質の会合・解離に伴う水和水の挙動を実験的かつ理論的に解析し、水分子を介した相互作用の解明を目指す。
稲葉 謙次 京都大学ウイルス研究所博士研究員 oxidative protein foldingに関わる細胞因子の構造・機能解明とその工学的利用 細胞内において、oxidative protein foldingすなわちジスルフィド結合の形成を伴う蛋白質の巻戻り反応は幾つかの細胞因子の助けを借りて効率的に進行する。この細胞システムにおいて、ジスルフィド導入経路とジスルフィド組換え経路は互いにクロストークすることなく分業体制を整えている。本研究では、X線結晶構造解析を主な手段として、これら細胞因子の構造と特異的な分子間相互作用機構を解析し、この細胞システムの機能メカニズムの解明を目指す。
井上 豪 大阪大学大学院工学研究科講師 2種のプロスタグランジン合成酵素の構造解析と医薬品への応用 ヒト由来造血器型プロスタグランジン(PG)D合成酵素は、肥満細胞において、アレルギー情報伝達物質としてPGD2を合成する。一方、トリパノソーマ由来PGF合成酵素は、ツェツェバエによって感染したトリパノソーマが血液中で、子宮平滑筋の収縮作用を持つPGF2αを合成する。本研究では、新規抗アレルギー剤およびアフリカ睡眠病の特効薬を開発するために、両PG合成酵素のX線結晶構造を基にしたドラッグデザインを行う。
木下 賢吾 横浜市立大学大学院総合理学研究科助手 たんぱく質の構造機能相関構造を利用した構造からの機能予測法 蛋白質の立体構造がどのように機能を決めているのは未だ明らかにされていない。本研究では、すでに数多くの立体構造が解かれ、機能情報も十分に蓄積されているモノヌクレオチド結合蛋白質を対象とし、構造と機能の関係を系統的に調べることにより、構造-機能相関の一般的なルールの発見を目指す。また、そこで得られるルールを応用することにより、立体構造から機能を予測する方法の開発を目指す。
永井 健治 理化学研究所脳科学総合研究センター研究員 色素タンパク質による生体機能の時空間的な不活性化法の確立 光増感物質は特定波長の光をあてると酸素の存在下で反応性の高い活性酸素を生成する。本研究では、cDNAにコードされた光増感物質を開発し、細胞内小器官やある組織中の任意の細胞種に特異的に発現させ、光照射によりそれらを破壊した時に何が生じるかを調べ、細胞内小器官や細胞の役割を解明していく。
長野 希美 産業技術総合研究所生命情報科学研究センター産総研特別研究員 新規機能創製を目指した酵素蛋白質の立体構造・触媒機構の系統的解析 従来の酵素の分類法では、酵素蛋白質の立体構造や触媒機構を考慮しているものは、殆ど存在していない。そこで、酵素の機能である触媒機構を反応のタイプ、各反応ステップや酵素・補酵素・基質・産物の立体構造に基づいて系統的に解析・分類し、データベース化する。また、酵素の新規機能を開発することを目指すために、立体化学を考慮した触媒機構を可視化する。
根本 知己 岡崎国立共同研究機構生理学研究所助手 2光子励起法を用いた生体膜融合分子機能の顕微解析とシステム化 SNARE連関タンパク質は進化上真核生物に保存され、細胞内の膜系の輸送現象に必須であると考えられている。そこで、近赤外超短パルスによる2光子励起と蛍光タンパク質の技術を用い、細胞内で分子機械のアセンブリとその内部運動を測定することを可能とする顕微解析システムの構築を行い、インタクトな細胞でSNAREタンパク質複合体が開口放出を引き起こすメカニズムを明らかにする。
早川 枝李 National Institute of HealthNIAAA/LMBB/SFS Visiting Fellow 機能性分子素子の構築を目指した脂質膜の物性に関する基礎的研究 脂質二重層膜を構築する際、異なる分子構造を持つリン脂質を組み合わせると様々なCurvature Stress を持った人工膜を作成できる。本研究では、膜構成脂質分子の形状並びに膜のCurvature Stress に着目し、膜蛋白質の機能発現に対する脂質膜物性について分子レベルでの解明を目指します。最終的には細胞膜をモデルとした機能性分子のデザインを目指す。
水島 恒裕 大阪大学蛋白質研究所ポスドク 癌・パーキンソン病の解明を目指したユビキチンリガーゼ複合体の結晶構造に関する基礎的研究 ユビキチン蛋白質分解系はβ-カテニン、IκBα等様々な調節因子を分解することにより生体反応の調節を行っている。ユビキチンリガーゼはこの反応経路において、分解されるべき蛋白質を選び出し標識する役割を担っている。本研究ではユビキチンリガーゼの立体構造を完全な状態で決定し、その反応機構の解明を目指す。
水谷 泰久 神戸大学分子フォトサイエンス研究センター助教授 タンパク質機能の構造揺らぎの検出と制御 タンパク質はそのエネルギーポテンシャル面で多くのローカルミニマムを持ち、その階層的なポテンシャル構造は非常に幅広い揺らぎを絶えず生み出している。蛋白質中で起こる化学反応を理解する上で極めて重要な機能に関係した構造揺らぎを時間分解振動分光法によって直接捉え、機能発現のメカニズムについて調べる。分子構造に基づいて、特に揺らぎと機能との速度論的な関係について注目する。本研究では、タンパク質の構造がどのように機能を生み出すかという概念を動的な側面から肉付けすることを目指す。

This page updated on November 12, 2001

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