戦略的基礎研究推進事業 平成13年度新規採択 
研究代表者及び研究課題一覧


 
5. 戦略目標:「ナノスケールにおける融合的革新技術の構築」
研究領域:「物理的手法を用いたナノデバイス等の創製」
     −ナノスケールでの物理現象を応用した画期的なデバイス、センシング、操作、制御に関する技術の創製を目指して−
氏名 フリガナ 所属機関 所属学部・学科など 研究課題名
猪俣 浩一郎 イノマタ コウイチロウ 東北大学 大学院工学研究科材料物性学専攻 教授 スピン量子ドットメモリ創製のための要素技術開発
岩佐 義宏 イワサ ヨシヒロ 東北大学 金属材料研究所 教授 ナノクラスターの配列・配向制御による新しいデバイスと量子状態の創出
大串 秀世  オオクシ ヒデヨ 独立行政法人 産業技術総合研究所 新炭素系材料開発研究センター 総括研究員、ダイヤモンド半導体チーム長 高密度励起子状態を利用したダイヤモンド紫外線ナノデバイスの開発
河田 聡 カワタ サトシ 大阪大学 大学院工学研究科 教授 非線形ナノフォトニクス
小森 和弘 コモリ カズヒロ 独立行政法人 産業技術総合研究所 光技術研究部門 グループリーダー 光量子位相制御・演算技術
三澤 弘明 ミサワ ヒロアキ 徳島大学 大学院工学研究科エコシステム工学専攻 教授 量子相関光子ビームナノ加工

総評 : 研究統括  梶村 皓二((財)機械振興協会 副会長・技術研究所 所長)

 「新しい原理に基づくナノデバイス等への挑戦を」

 近年、ナノメートルスケールの分析技術、材料加工技術等の進歩に目覚しいものがあります。一方、高度情報化社会の担い手となる半導体デバイスは微細化が進み、その加工精度においてはサブミクロンからナノメートルオーダーへと進展しつつあります。最近提唱されている量子コンピューティングを実現するためには、量子効果が現れるナノメートルスケールの複合構造と集積を持つデバイスが必要とされます。

 この研究領域は、物理的手法を用いて新しいデバイス、センシング、装置を実現するための研究を対象とするもので、具体的には、ナノスケールにおいてはじめて現われる電子系やスピン系の物理的特性を応用して演算、記憶等のアクティブな機能をもつ新しいデバイスの実現、ナノスケールの局所的特性を対象として電気、機械、光等の物理的手法を用いてセンシング、操作、制御等を行うデバイスや装置の実現のための研究です。加えて、センシングにおける精度、分解能、判別機能や、デバイスや装置における速度、集積度、容量、エネルギー消費等の点で既存技術の限界を打破する新しい技術の創出に向けた研究、現在まだ対象とするものの性質の研究にとどまっている現象をデバイスに結びつける研究等を含みます。

 今回の応募は87件(ナノ計測系16件、ナノプロセシング系20件、ナノデバイス系34件、物性物理系8件、分野融合系9件)で、本研究領域の研究統括、領域アドバイザー6名により戦略目標に対する議論を深め方向性の考え方を共有した後、書類審査により11件の提案を選択し、面接審査により6件の提案を採択しました。新しい技術を実現するためには、単なる既存概念の延長ではなく、処理速度、精度、集積度、エネルギー消費、信頼性の点で、限界を打破し、飛躍的な性能を実現する技術として、ナノテクノロジーを駆使した新しいデバイスやセンサーを創製する必要があります。また、単に物理現象のみではなく化学、生物現象を利用したものあるいはそれらを対象とし、既存の領域を越えた融合的な提案で、ブレークスルーをもたらす挑戦を期待して審査を行いました。

 採択できなかった提案に採択提案に匹敵する優れた提案もありましたが、逆に、ナノスケールであっても20年以上にわたって研究が続けられてきた概念の延長・改良のような、必ずしも趣旨に沿って新しい技術を実現するものでない提案が見られました。また、新規であっても上記特性のごく一部のみを研究対象としていて、周辺技術や同時に満足させなければならない動作条件等との関係など、テクノロジーとして十分吟味されていないものもあり、今後「ナノテクノロジー」という新しい概念を打ち出すため、一層綿密な考察にもとづく提案が望まれます。

   
   
研究領域:「化学・生物系の新材料等の創製」
     −ナノスケールでの化学や生物系の革新的な機能材料、分子機械、バイオ素子、バイオセンサ技術の創製を目指して−
氏名 フリガナ 所属機関 所属学部・学科など 研究課題名
宇田 泰三  ウダ タイゾウ 広島県立大学 生物資源学部・生物資源開発学科 教授 健康・福祉のためのナノバイオ材料およびバイオ素子としての「スーパー抗体酵素」の創製
大須賀 篤弘 オオスカ アツヒロ 京都大学 大学院理学研究科 教授 巨大ポルフィリンアレーのメゾスコピック構造デバイス
岡野 光夫  オカノ テルオ 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授・所長 新規組織再構成技術の開発と次世代バイオセンサーの創製
岡畑 恵雄 オカハタ ヨシオ 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 教授 生体分子間相互作用を連続的に検出するための多機能型水晶発振子マルチセンサの設計と開発
片岡 一則  カタオカ カズノリ 東京大学 大学院工学系研究科 教授 遺伝子ベクターとして機能するナノ構造デバイスの創製
山瀬 利博  ヤマセ トシヒロ 東京工業大学 資源化学研究所 教授 ナノクラスターポリ酸を用いた分子機械の構築

総評 : 研究統括  相澤 益男(東京工業大学 学長)

 ナノテクノロジー「化学・生物系の新規材料等の創製」は、今回が初年度の募集である。
 この分野への関心の高さと期待の大きさを示すように、応募件数は99件に達した。生体材料の利用と人工的な材料の利用、医療用途を意識したものと電子回路への応用を意識したものなど、材料、用途なども種々のものがあった。 興味ある提案が多数ある中で6件に絞り込むのに難渋したが、ウイルスの機能と構造を模して人工的な遺伝子ベクターを創製する研究や、スーパー抗体酵素の創製、巨大分子やポリ酸の開発とその応用、バイオセンサーを含めたセンサーの開発とそれを利用した解析方法が採択された。いずれも実績を持った研究者の意欲的な提案であり、大きな成果を期待している。

 応募者の所属を見てみると、国立大学:64件、公立大学:6件、私立大学:11件、国研:10件、民間:3件、特殊法人(理研、JST等):4件、高専:1件 であった。 基礎研究を対象とすることから、国立大学の応募が多いのは止むを得ないが、戦略を持った実用化をも配慮した民間ならではの提案も大いに期待したい。提案されたテーマそのものは大変興味あるものが多数提案されたが、今回の領域のスコープに掲げるようにナノテクノロジーを真に生かした提案になっていないものは,残念ながら、採用には至らなかった。 また、この領域に合致したテーマでも萌芽的な研究で興味ある提案があったが、研究の実績をつみ、大型のプロジェクトに相応しい段階での再提案を期待したい。

 

This page updated on November 12, 2001

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