「車載用磁気インピーダンスセンサ」の開発に成功


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 検出感度の高い、小型・低消費電力の磁気センサが望まれていた。

 現在、磁気センサとして最も広く利用されているのは、外部磁界より半導体で顕著に現れるホール効果を利用したホールセンサや、多層薄膜の電気抵抗が変化するMRセンサである。これらは、安価で寸法が小さいため空間分解能には優れているが、検出感度が極めて低い。また、高感度磁気センサとして用いられているものに、磁性媒体を通る磁束の総量をコイルで検出するフラックスゲートセンサ(FGセンサ)がある。これは、検出感度は先のセンサに比べ1,000倍程度大きいが、ヘッド形状が大きいため空間分解能が低く、かつ消費電力量が数Wと大きいため、一般的には普及していない。
 自動車においても、主に磁気−抵抗効果を利用したMRセンサ等が使用されているが、エンジンや動力系等から発する熱や振動、気象条件の変化等、車載特有の過酷な環境下で微弱磁界を検出する必要があった。従って、従来型のものは、所定の信号源(磁石)と磁気センサの間隔を1mm程度の微小な距離に保つよう組み付け精度を上げて検出感度の不足を補う必要があった。この結果、センサの単価は低いものの、磁気センサシステム全体としては複雑な機構や、組み立て・調整が必要となるため、高価となり、また、システムの小型化・省電力化にも限界があるなどの問題があった。このため、過酷な車載環境下での使用に適合する、小型、低消費電力で、信号源磁石と磁気センサとの距離の検出許容範囲を大きく取れる高感度な磁気センサの開発が望まれていた。

(内容) 接着剤で基板に仮止めしたアモルファスワイヤを、接合剤にアルミニウムを用いた超音波ボンディングで歪みを与えることなく堅牢な接合をすることで、素子のモールド化を可能とした。また、アナログスイッチを用いた検出回路の開発により、耐久性に優れ安定した出力が得られる高感度磁気センサを実現した。

 本新技術は、FeCoSiB系アモルファスワイヤを検出部の感磁媒体として用い、これに高周波電流を通電したとき、外部磁界により磁気インピーダンスが大きく変化するMI効果を利用した車載用磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)の製造技術に関するものである。 本MIセンサは、ホールセンサやMRセンサ並みの空間分解能、低消費電力で、FGセンサと同等の感度を有する超高感度磁気センサとして期待されている。このMIセンサはMI素子部において、アモルファスワイヤの電極接合にアルミニウム接合剤を用いた超音波ボンディングにより、ボンディングツールからアモルファスワイヤに直接応力を与えることなく接合力を高めることができ、耐振動、耐熱衝撃が飛躍的に向上した。また、アモルファスワイヤ自身を接着剤で仮止めすることで超音波振動による影響もなく、モールド等の素子化を行ってもセンサの特性を損なうことがない。さらに、センサ素子を駆動する電子回路については、ピックアップ検出方式にアナログスイッチを用いた検出回路の開発により、温度安定性を向上させることに成功した。また、量産プロセスにおいては、平面基板上にアモルファスワイヤにストレスを与えることなしに組み付ける方法、装置を考案し、従来センサに対し、耐久性に優れ安定した信号出力を示す車載用途の高感度磁気センサが開発できた。

(効果) 車載等の過酷な環境下での使用に耐える、高感度磁気センサとしての利用が期待される。

 本新技術による車載用磁気インピーダンスセンサは、

(1) 耐振動性や温度安定性に優れ、車載などの過酷な環境下での高精度磁気センシングが可能である。
(2) 小型・軽量で低消費電力である。
(3) 超高感度であるため、センサと信号源磁石との距離を大きくとれるため、取り付けが簡略化できる。

などの特徴を持つため、

(1) 各種車載用磁気センサ
(2) その他、過酷な環境下で使用する高感度磁気センサ

などに利用されることが期待される。


This page updated on October 17, 2001

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