補足説明


 
@ 用いた有機化合物
 分子内にアセチレン(3重)結合を2ケ有するジアセチレン化合物の一種、1,6仙ジカルバゾリル−2,4−へキサジイン(略称、DCHD)であり、この化合物の結晶は、光照射により重合して、図1に示すように、動きやすい電子を持つ共役高分子(略称、poly−DCHD)の結晶に変わることが知られている。半導体的挙動を示すことから、光材料や電子材料関連で、永年、基礎研究の対象となってきた。
   
A 有機化合物と金属との複合ナノ結晶の作成(図2参照)
 上記ジアセチレン化合物、DCHDを親水性有機溶媒であるアセトンに溶解して希薄溶液とし、これを、あらかじめ作製した平均粒径15ナノメータの球状の銀ナノ結晶を分散させた水中に注入した。その結果、水に不溶のDCHDは、銀ナノ結晶の表面に、沈殿・析出し、有機分子で覆われた銀ナノ結晶の分散液が得られた。走査型電子頼微鏡による観察では、大部分は、平均粒経30ナノメータの複合粒子になっており、DCHDの量を多くした場合には、それらがさらに融合した長方形状のナノ結晶も得られることが分かった(図3)。
B 有機化合物と金属との間で電子状態が混成した(ハイブリッド)ナノ結晶生成の証拠 上記で得られた銀とDCHDの複合ナノ結晶の光吸収スペクトルは、図4に点線で示す銀ナノ結晶に特有の吸収にほぼ近いものであったが、この系に光照射してDCHDを重合させ、共役高分子poly-DCHDに変えた結果、銀の鋭い吸収は消失し、代わりに、poly-DCHDの吸収が、それ単独の物質の場合より遙かに低エネルギー側にシフトし、且つ鋭くなって現れた(図4の実線の吸収曲線参照)。これは、両者の間での、電子状態の混成を明確に示す結果である。

 同様の結果が、金のナノ結晶との複合においても認められており、現在、このような電子状態の混成の原理と限界を明らかにすべく、種々の金属と有機化合物の組み合わせについて実験を展開中である。
 

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