別紙3

平成13年度課題実施地域の提案内容に関する
「地域振興事業評価委員会」の評価結果


 
青森県
○課題名 「大画面フラットパネルディスプレイの創出」
 本課題は、@OCBモードを主体とした新規な液晶光学モードの創出を主軸に、A液晶応答速度の高速化の研究や、B大画面駆動を可能とする素子構造の開発を組み合わせることで、大画面・低消費電力で目に優しい高品位の液晶ディスプレイ技術を開発するものである。フェーズTでは、液晶表示モードとそれに関する光学設計と計測評価技術の開発、大画面化に必要なガラス基板の加工技術と駆動素子構造を開発し、フェーズUで、パネルの試作評価を行うものである。
 電子ディスプレイは、日本が創出した産業分野であるが、近年では生産技術だけでなく研究開発でもアジアの追い上げは激しい。情報化社会の進展につれ、電子ディスプレイはますます身近なものとなり、大画面対応、低消費電力、そして、さらなる高画質を目指しての技術開発競争が繰り広げられているが、わが国の液晶産業における国際競争力の強化や空洞化の抑制の観点から、次世代液晶の研究に対する公的資金投入の期待は強い。
 事業の推進に関して。青森県では、むつ小川原工業開発地区にフラットパネルディスプレイ産業の集積地を作るというクリスタルバレイ構想に基づき、平成15年度初頭までにフラットパネルディスプレイ先端技術研究所(仮称)が設置されることになっている。同研究所内にコア研究室を置いて本事業を遂行することにより、液晶を含めたディスプレイ技術における新展開が期待される。
 研究開発に関して。反射型液晶技術・OCBモードが課題の中核に据えられており、この技術の独自性と研究の水準は高い。現在の技術である反射型液晶の表示品位はまだ不十分であり、本事業によって反射型で高精細、あるいは良好な発色の実現が期待される。OCBモード開発の中心に据えられている光学解析、光学フィルムの開発、液晶の応答高速化の研究等は、反射型に限らず液晶技術全体への貢献が期待される。
 地域による支援に関して。青森県は、前述のクリスタルバレイ構想において、土地、インフラ、優遇税制、交通網の整備も予定しており、県からの十分な支援が見込まれるものと期待される。
 なお、本事業の実施に当たっては、液晶技術に集中し、関係するポテンシャルを持つ地域の研究者をさらに掘り起こし糾合することや、関係する周辺部品等で固有の技術を保持する企業との協力関係を構築することにより、本分野の力を結集することが必要である。
   
千葉県
○課題名 「ゲノム情報を基本とした次世代先端技術開発」
 本課題は、@マウス長鎖cDNAの取得・構造解析とそのための効率化技術の開発を行い、Aマウス長鎖cDNAがコードする蛋白質に対する抗体作製技術の開発及びその作製・評価を行い、BDNA・抗体マイクロアレイの作製技術開発及びその作製・評価をするとともに、C共同研究全般にわたるデータベースの構築及び管理を行うものである。
 バイオ産業の飛躍的発展が期待される中で、ヒトゲノムがほぼ解読された現在、ポストシーケンス時代において研究の出発材料となるのは完全長cDNAであり、それによってコードされる蛋白質、そしてこの蛋白質に対する抗体である。 事業の推進に関して。コアとなるかずさDNA研究所は、cDNAのコレクションとして世界のトップレベルにある。同研究所のあるかずさアカデミアパークは、既に事業推進のための実施体制の一部も整いつつあり、新技術・新産業を創出に資する科学技術基盤を形成する可能性が期待でき、国際的バイオパークとして拠点化できる可能性が高いと思われる。千葉県は、この分野における我が国で数少ない研究ポテンシャルを有する地域である。
 研究開発に関して。既にヒトcDNAのゲノム情報及びクローニング技術等のポテンシャルを有しており、今回それらに対応する動物(マウス)のプラットフォームを整えつつ、その素材及び研究・診断ツールの産業化を目標としており、将来大きく期待されるゲノム創薬に向けたフェーズとして、世界的に類を見ない研究が行われることになると思われる。
 地域による支援に関して。千葉県は早くから科学技術振興指針の中で記されている「かずさアカデミア構想」の中で、ゲノム分野に狙いを定め相当の投資をしてきており、是が非でも成功に導こうとしている。ヒト、モノ、カネのインフラ支援も十分に見込まれるものと思われる。
なお、本事業の実施に当たっては、この分野は世界的競争が激しく又研究領域も多岐にわたるため、千葉県内のみで事業をクローズせず、首都圏ゲノムベイ構想の中で理化学研究所、東京大学医科学研究所、慶応大学等主要なバイオ研究拠点との一層の連携が必要であり、その中でかずさDNA研究所の特徴を出すことが望ましいと思われる。
   
石川県
○課題名 「次世代型脳機能計測・診断支援技術の開発」
 本課題は、@脳深部対応型MEG(脳磁気計測・解析システム)の開発、A新規PET(放射線を利用した脳活動計測・解析システム)診断薬の開発と脳標準化データベースシステムの開発、B脳機能計測用バイオセンサの開発、Cそしてこれらの異種多様な診断情報のデータを統合し、総合的に活用するための医用ナレッジ・ハンドリング技術の開発を、D医学研究者による早期痴呆診断支援システムの基本設計の下で行うことにより、痴呆の早期診断支援技術を開発するとともに、その過程で開発される基盤技術を産業へ移転していこうとするものである。
 事業の推進に関して。本課題は、記憶に深く関わりがあるといわれている脳深部等における脳機能情報計測や、新たな診断薬による効果的な脳神経活動測定等を可能にし、脳変性疾患の早期発見や診断の支援につなげることを目指すものであり、我が国が直面している高齢化社会の到来に向けて、研究の意義は高い。開発が進めば、脳の臨床や脳研究のよきツールになることが期待できる。
 研究開発に関して。参画する各機関は、要素技術として高いレベルのものを持っており、国際的に最先端の環境を提供できる可能性がある。地域内の研究ポテンシャルが充分活用できる体制がよく検討されており、医学と工学にまたがった、学際的な研究基盤の形成が期待できる。
 地域による支援について。石川県では、金沢地区といしかわサイエンスパークを中心とする科学技術振興の取り組みが活発である。課題に複数の大学が参画していることなど、県の努力が見られる。
 なお、本事業の実施に当たっては、ヒトを対象としたときの評価体制を構築することが重要であり、被験者をきちんと集める工夫が必要である。
   
長崎県
○課題名 「ミクロ海洋生物の生理機能活用技術の開発」
 本課題は、@海洋環境保全技術の開発、A海洋生物育成技術の開発に取り組むことにより、多量のエネルギーを消費しない自然の生物循環サイクルに組み込まれた物質循環型生産システムを構築することで、ミクロ海洋生物を活用する環境保全・生物生産に関する産業技術の創出を目指すものである。
 事業の推進に関して。本課題を推進することで、海洋系に存在するミクロ生物の環境状況を、画像及び遺伝子のモニタリングによって把握することが出来るため、赤潮予知とその対応等の環境修復技術への展開が期待できる。また、養殖初期段階に不可欠な餌料生物の育種技術の開発により、環境が整備された海洋系での育苗生産技術を確立させることも期待される。これらの研究開発に取り組むことは、今後、我が国における、環境負荷の少ない海洋生物育成産業の基盤形成に寄与するものと期待されるものである。
 研究開発に関して。海洋県である長崎県は、長年にわたり、長崎大学をはじめとして海洋分野の研究開発が行われてきた経緯があり、当該分野についての実績や研究基盤が集積している。よって、本課題は、こうした地域の特性を背景とした妥当な課題であるとともに、地域の研究ポテンシャルが充分に活用される内容であり、研究の推進が強力かつ効率的に展開されるものと期待される。
 地域による支援に関して。長崎県では、産学官の連携を強力に推進しており、産学官連携支援室を整備するなどの県としての支援体制が図られている。また、将来の科学技術基盤構築の構想の中で、アカデミア長崎内に海洋生物生理機能研究所(仮称)等、課題に係わる拠点作りにも積極的である。従って、本事業で得られる研究成果を、地域に存在する海洋関連産業等に展開することができると期待される。以上から、当該地域における中核的研究拠点(COE)の確実な形成が期待できるとともに、本事業を通じた成果の創出が期待できる。
 なお、本事業の実施に当たっては、産学官の連携を推進させることで、地域の当該分野における科学技術基盤を形成させるため、研究内容の新規性と地域の優位性を十分に考慮するとともに、民間企業の積極的な参画による研究体制の強化を図ることが必要である。また、地域の産業育成への展開を強力に推進させるために、研究内容の一層の具体化を図るとともに、長崎県の強力な支援体制による研究活動推進の加速が必要である。
 

This page updated on September 19, 2001

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