別紙2

アセチルコリンエステラーゼ活性測定用トレーサー


 
課題名: アセチルコリンエステラーゼ活性測定用トレーサー
研究者: 放射線医学総合研究所画像医学部 入江俊章分子トレーサー開発室長、福士清主任研究員、棚田修二部長
委託予定企業: 株式会社第一ラジオアイソトープ研究所(取締役社長 奥田順三、本社 東京都中央区京橋一丁目17番10号、資本金14億円)
開発期間6年、委託開発費9億円の予定

 本新技術は、脳内のアセチルコリンエステラーゼ活性を単一フォトン断層像撮影法(SPECT)で測定するための放射性同位体ヨウ素123を含んだトレーサーの開発に関するものである。
 本新技術によるトレーサーは、脳内におけるアセチルコリン作動性神経系の機能低下を計測できることから、神経疾患等による痴呆病態の解明等に寄与することが期待されるとともに、将来的には、アセチルコリン作動性神経系の疾患の診断を助ける新たな指標となることが期待される。

 本新技術の背景、内容、効果は次のとおりである。

(背景) 望まれる、神経変性疾患における脳機能を非侵襲的に簡便で的確に測定できる方法

 痴呆症状の検査では、脳血流測定、脳萎縮パターン等の検討が用いられているが、他の神経変性疾患と特異的に鑑別することが難しく、確定診断は死後の脳の病理検査によっているのが現状である。これらの方法では、神経変性疾患での初期病変を的確に捉えることは困難であり、早期診断や治療効果の判定等のためにも、脳機能を簡便かつ的確に測定する技術が望まれている。

(内容) 神経伝達機能を調節する役割を担っているアセチルコリンエステラーゼの活性を、単一フォトン断層像撮影法で測定できるトレーサーの作製

 トレーサーは、アセチルコリンの基本骨格を有するアセチルコリン誘導体と放射性同位体ヨウ素123を含むヨウ化ナトリウム(Na123I)を反応させて生成される。トレーサーは、脂溶性化合物であり、動脈血流から血液脳関門を介して脳組織内に取り込まれ、脳内のアセチルコリンエステラーゼによって代謝され水溶性化合物が生じる。しばらくのあいだ脳内に滞留している水溶性化合物の放射性同位体ヨウ素123標識をSPECTで測定することにより、アセチルコリンエステラーゼの活性を測ることができる。

(効果) 神経変性疾患における脳機能を非侵襲的に簡便で的確に測定できるトレーサーとしての利用

 本新技術には、次のような特徴がある。

1. アセチルコリンエステラーゼ活性の定量化が可能となる。
2. 手術等が不要で簡便に測定できる。
3. 国内に普及しているSPECT装置を利用できる。

 従って、以下の用途に利用が期待される。

1. アセチルコリン作動性神経系の機能低下による神経疾患の病態の解明
2. 神経疾患等の診断薬や治療薬の開発研究

This page updated on August 24, 2001

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