科学技術振興事業団報 第167号

平成13年7月19日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報室)

「炭そ病防除用微生物農薬」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 沖村 憲樹)は、栃木県農業試験場 生物工学部 応用生物研究室長 石川成寿氏らの研究成果である「炭そ病防除用微生物農薬」を当事業団の委託開発制度の平成8年度課題として、平成9年3月から平成12年9月にかけて出光興産株式会社(代表取締役社長 出光 昭、本社 東京都千代田区丸の内三丁目1-1、資本金 約388億円、電話:03-3746-8701)に委託して開発を進めていた(開発費約2億円)が、本開発を成功と認定した。
 炭そ病は、植物の葉や茎、果実などに病斑を形成し、大きな被害を与える重要病害である。本病菌による病害は約600種以上あり、イチゴやリンゴ、キュウリ、スイカなどの炭そ病が知られている。その中でも、特にイチゴ炭そ病は、育苗期を中心に発生し、株を枯死させる最重要病害であり、現在の主要品種では、いったん発病すると防除がきわめて困難である。本病の発生により、イチゴ栽培を放棄したり、以後の栽培を打ち切る農家さえ出ており、離農のきっかけになる病害である。本病に対する雨よけ栽培などの耕種的防除は、効果を示すが栽培者の高齢化などにより、なかなか実施されていないのが現状である。なお、本病による被害は、我が国のみならず、イチゴを栽培している各国で大きな問題となっている。
 本新技術は、炭そ病に対して強い抑制力を示す拮抗糸状菌(タラロマイセス・フラバス)を苗に散布させることにより、炭そ病を防除する微生物農薬に関するものである。 本農薬は、(1)土壌に普遍的に存在する糸状菌を用いるため環境にやさしい、(2)植物に定着することで長期間の効率的防除が期待でき、散布回数の削減が可能、(3)耐性菌出現の心配がない、等の特徴を有し、イチゴ炭そ病の防除用微生物農薬としての利用だけでなく、他農作物、および炭そ病以外の病原菌への適用拡大も期待される。

「炭そ病防除用微生物農薬」の開発に成功(背景・内容・効果)
開発を終了した課題の評価
表1.微生物農薬と化学農薬
図1.従来技術との比較
図2.本微生物農薬の形態
図3.本微生物農薬の効果試験例1
図4.本微生物農薬の効果試験例2

(注) この発表についての問い合わせは以下の通りです。
科学技術振興事業団 開発部
      
管理課長 
管理課  
夏見博康
増渕 忍[電話(03) 5214-8435]
出光興産株式会社 新規事業推進室 伊豆 進[電話(0438)75-7020]

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