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戦略的基礎研究推進事業における戦略目標および研究領域


戦略目標:大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦(平成7年度設定)
 我が国が、長引く景気の停滞や国内産業の空洞化を克服し、活力ある社会を維持・発展させていくためには、既存の概念にとらわれず、新たな分野・領域を開拓し、独創的・革新的な技術の創生を通じて、新技術・新産業を創出していかなければならない。また、我が国の国際的立場に鑑みれば、それ自身が価値を有するものとしての、人類の新しい知的資産の拡大にも積極的に貢献していく必要がある。
 このような観点から、多くの新たな知見の獲得が期待されてはいるが、未だ知られていないことが多い領域、例えば、複雑で多様な生命現象の解明、分子・原子単位の極微細な領域の解明及び超高圧・超高真空等の極限的な状態における現象の解明、新たな情報技術の探索を通じて、革新的な技術の確立を目指す研究を進めることが不可欠である。
 したがって、戦略目標を、以上のような多くの未知を抱えた領域の現象の解明等により知的資産を拡大するとともに、新技術・新産業の創出を目指す「大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」とする。
研究領域:「高度メディア社会の生活情報技術」
 
戦略目標:技術革新による活力に満ちた高齢化社会の実現(平成12年度設定)
 21世紀は、世界各国で高齢化が進み、特に我が国においては世界に例を見ない速度で高齢化社会を迎えることが予測されている。このような状況はかつて経験したことがないものであり、高齢化社会にどのように対応していくかという問題は、人類の直面する大きな課題である。このような中、大胆な技術革新に取り組むことにより、21世紀に向け、豊かで活力のある高齢化社会を実現することが大変重要である。
 このためには、高齢化社会に対応し個人の特徴に応じた革新的医療を実現することを目指して、オーダーメイド医療、再生医療等の実現に不可欠な発生・分化・再生のメカニズムを解明することや、豊かで健康な食生活と安心して暮らせる生活環境の実現を目指して、植物の持つ多様な機能を解明し、その機能を制御・利用すること等が必要である。
 従って、戦略目標を、豊かで活力のある高齢化社会の構築を目指す「技術革新による活力に満ちた高齢化社会の実現」とする。
研究領域:「生物の発生・分化・再生」「植物の機能と制御」
 
戦略目標:遺伝子情報に基づくたんぱく質解析を通した技術革新(平成13年度設定)
 ヒトゲノム計画が進む中、遺伝子の塩基配列の解析技術は飛躍的に高度化し、併せて、遺伝子情報のデータベース化が急速に展開されている。
 今後、遺伝子レベルでの生命現象を理解するとともに、遺伝子情報の医療技術等への橋渡しを行うためには、これらの遺伝子情報を活用して、個々の遺伝子が作り出すたんぱく質が生体内でどのような役割を担っているのかを理解し、生命現象との係わりを解明することが重要である。
 また、これらの研究は、将来的には、遺伝子情報に基づいたゲノム創薬や、高機能食物の実現、たんぱく質の高機能化、たんぱく質のデザイン等の革新技術への展開が期待される重要な分野である。
 このため、戦略目標として「遺伝子情報に基づくたんぱく質解析を通した技術革新」を設定し、ポストゲノム研究の大きな柱であるたんぱく質について、その構造・機能解析を進めることにより、たんぱく質の役割を明らかにする。
 なお、本戦略目標の下で行われることが想定される研究としては、例えば、たんぱく質の構造解析、たんぱく質の機能解析等が考えられる。
 戦略目標に例示されている研究のうち、たんぱく質の構造解析及び機能解析を相補的に推進するとともに、解析のための基盤技術である構造解析法の高度化に取り組むことが、タンパク質の機能の核心部分を明らかにし生命現象の解明へとつながり、また同時に、応用展開への手がかりの速やかな獲得へもつながりうると考えられることから、下記の研究領域を設定した。
研究領域:「たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム」
−たんぱく質の機能発現メカニズムに基づく革新的な新薬、診断技術及び物質生産技術の創製を目指して−
 
戦略目標:先進医療の実現を目指した先端的基盤技術の探索・創出(平成13年度設定)
 現在、ヒトゲノム計画の進展により、遺伝子の情報等遺伝子レベルでの生命現象が明らかになりつつあり、これらの知見を活用した新たな医療技術への期待が増大しつつある。
 急速な高齢化社会を迎えて、今後の社会をより豊かで活力のあるものとするためには、現状では克服が困難な疾患に対する新たな医療技術等の技術革新が望まれている。
 このため、戦略目標として「先進医療の実現を目指した先端的基盤技術の探索・創出」を設定し、DNA・たんぱく質工学技術、遺伝子ワクチン作製利用技術、ヒト幹細胞確立技術等の新しい医療技術の創出に向けた先端的基盤技術の探索・創出を進める。
 なお、本戦略目標の下で行われることが想定される研究としては、例えば、DNA・たんぱく質・細胞工学技術の確立・高度化、遺伝子ワクチンの開発等が考えられる。
 戦略目標に例示されている研究のうち、学術的な研究の蓄積が行われ、かつ、関係する疾患の患者が急速増大しており、それらの克服が期待されていることから、免疫系に焦点を絞り、免疫難病の解明とそれらに関わる医療技術の芽の創出を目指して、下記の研究領域を設定した。
研究領域:「免疫難病・感染症等の先進医療技術」
−遺伝子レベルでの発症機構の解明を通じた免疫難病・感染症の新たな治療技術の創製を目指して−
 
戦略目標:新しい原理による高速大容量情報処理技術の構築(平成13年度設定)
 現行のコンピュータをベースとした情報処理技術は、ハードウェア・ソフトウェア共に飛躍的な進歩を遂げ、20世紀における情報革命として社会の変革に多大な役割を果たしてきた。しかしながら、デバイスの微細化やアルゴリズム上の限界によりこれまでのペースでの性能・容量の向上は望めなくなってきている。
 一方、コミュニケーションの多様化に伴う通信・計算容量の増大や、立体映像データ処理や複雑系の解析を行うための高速演算の必要性等、高速大容量情報処理技術に対する社会的ニーズは依然として高く、これらのニーズに応じた技術の確立が喫緊の課題となっている。
 このため、戦略目標として「新しい原理による高速大容量情報処理技術の構築」を設定し、量子コンピュータ、分子コンピュータ、ニューロコンピュータ等を含む新しい原理に基づく計算機構の探索を行うとともに、ノイマン型コンピュータにおいても全く新しい技術を導入し、新デバイスや通信技術も含めた高速大容量情報処理環境を構築するための要素技術を探求・確立することを目指す。
 なお、本戦略目標の下で行われることが想定される研究としては、例えば、量子計算理論及び量子システムの探索・開発、生体工学と情報処理科学による新規原理・システム等の探索・開発等が考えられる。
 戦略目標に例示されている研究のうち、高速大容量化の中核をなすと考えられる情報処理システムに関する研究、及び、社会ニーズに対応した従来システムの安全性や信頼性に関する研究等を包含した、下記の研究領域を設定した。
研究領域:「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」
−量子効果、分子機能、並列処理等に基づく新たな高速大容量コンピューティング技術の創製を目指して−
 
戦略目標:水の循環予測及び利用システムの構築(平成13年度設定)
 世界の人口のうち、約8%の人々が居住している地域では、現在も深刻な水不足が発生しており、最近取りまとめられた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第3次評価報告書に示されるように、今後もその悪化が懸念されている。特に、農耕地の急速な拡大や都市化による水不足の問題は、一つの国だけの問題にとどまるものではなく、国家間の問題を引き起こす要因となる可能性がある。
 また、安全な飲料水を確保するとともに、穀倉地域への安定した水の供給に貢献することは、我が国を含め、世界の食糧問題の解決にも資する重要な課題である。
 このため、戦略目標として「水の循環予測及び利用システムの構築」を設定し、地圏・水圏・気圏における水循環の解明・予測に向けた研究を行うとともに、土壌や生態系を含めた適切な水の利用・保全を行うためのシステムの構築を目指す。
 なお、本戦略目標の下で行われることが想定される研究としては、例えば、水循環と環境の相互作用の解明、水の機能を踏まえた水の利用・保全システムの構築等が考えられる。
 戦略目標に例示されている研究のうち、水循環へ特に大きい影響を与えていると見られる人間活動との相互作用の解明等から、水循環の予測に資するモデル構築、及び、水の効率的な利用等を目指した、下記の研究領域を設定した。
研究領域:「水の循環系モデリングと利用システム」
−水資源と気候、人間活動との関連を踏まえた水資源の循環予測・維持・利用のシステム技術の創製を目指して−
 
戦略目標:ナノスケールにおける融合的革新技術の構築(平成13年度設定)
 現在、ナノテクノロジー(10−9mレベルの技術開発)によって、エレクトロニクス、材料、機械、バイオテクノロジーなどの従来の分野の垣根が崩され、新たな共通知識基盤が得られ始めたところである。
 情報通信、環境、医療等のあらゆる局面において、21世紀の産業革命の原動力となる技術革新を実現するためには、ナノスケールにおける基礎研究を推進し、エレクトロニクス、材料、バイオテクノロジーなどの異なる分野の壁を越えた全く新しい領域を開拓することが必要である。また、新物質・新素子の探索をはじめとして、ナノプロセス技術、計測技術、シミュレーション技術などの基礎的・基盤的技術を速やかに確立することが重要である。
 このため、戦略目標として「ナノスケールにおける融合的革新技術の構築」を設定し、個々の科学技術の融合に着目した基礎研究を推進することにより、新産業の創出に向けた技術革新をもたらすことのできるナノスケールにおける新技術の創製を目指す。
 なお、本戦略目標の下で行われることが想定される研究としては、例えば、有機と無機の融合による技術革新、バイオテクノロジーと工学の融合による新技術の創製等が考えられる。
 戦略目標は広範な研究分野から構成されているが、ナノスケールでの研究が進んでいる物理的な現象の応用としてのデバイス創製に関する研究、及び、基盤技術となりうる新しい計測技術等に関連する、下記の研究領域を設定した。また、医療やバイオテクノロジー・新素材等の分野についても、広範な応用が期待されるため、その基盤となる有機及び無機化学、生物系等において多様な技術革新が生まれるよう、下記の研究領域を設定した。
研究領域:「物理的手法を用いたナノデバイス等の創製」
−ナノスケールでの物理現象を応用した画期的なデバイス、センシング、操作、制御に関する技術の創製を目指して−
「化学・生物系の新材料等の創製」
−ナノスケールでの化学や生物系の革新的な機能材料、分子機械、バイオ素子、バイオセンサ技術の創製を目指して−

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