(別紙2)

若手個人研究推進事業における募集研究領域の概要


【個人研究型】
平成13年度新規発足研究領域
研究領域及び領域総括 研究領域の概要
「生体分子の形と機能」

郷 信広
(京都大学大学院理学研究科 教授)
 この研究領域は、遺伝情報が機能として発現するのを支えている物理的実体としての生体分子(タンパク質)に焦点をあて、物理学、化学等の物質科学の原理に基づき、その立体構造形成の仕組みや立体構造に基づく機能発現の仕組みを研究するとともに、今急速に蓄積が進んでいるゲノム情報等を対象としたバイオインフォマティクス的手法を用いた研究も対象とするものです。
 具体的には、タンパク質等の立体構造の実験的決定・理論的予測、物性研究、相互作用や複数の分子からなる超分子構造体の解析に関する新しい研究方法の開発等の基礎的研究と共に、合理的薬物設計、生物的機能の工学的利用を目指した応用的研究等が含まれます。
「情報と細胞機能」

関谷 剛男
(医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構 研究顧問)
 この研究領域は、細胞がプログラム化された遺伝子情報(内的情報)を持っていることや、環境等に由来する多くのシグナル(外的情報)の作用で様々な影響を受けている観点から、これらの情報と細胞機能との関わりを独創的で斬新な手法、アプローチで明らかにすることにより、生命システムの謎に挑む研究を対象とするものです。
 具体的には、これら情報と細胞との相互作用の結果として発症するがん、痴呆など高齢者の疾患、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患など様々な疾病の病因解明ならびにその克服のための方法の探索に関する研究等が含まれます。
「情報基盤と利用環境」

富田 眞治
(京都大学大学院情報学研究科 教授)
 この研究領域は、10億個のトランジスタがチップ上に集積できる時代およびインターネットでコンピュータ利用環境が激変する時代における、新しいコンピュータシステムの基盤技術と利用技術に関連した研究を対象とするものです。
 具体的には、超高機能化、超高性能化、超省電力化、モバイル化、情報家電化などを視野に入れたコンピュータシステム(アーキテクチャ、ネットワーキング、言語・コンパイラ、OS)、超大規模集積システム設計技術(DA/CAD)、およびインターネット・マルチメディアを中心とした新しい利用に関する基礎研究が含まれます。また、ハードウェアシステムとの関連性を保ちながら行う研究に加えて、全く新しい原理に基づいたコンピュータや新しい知的なコンピュータ応用研究等が含まれます。
「ナノと物性」

神谷 武志
(大学評価・学位授与機構 学位審査研究部 教授)
 この研究領域は、原子・分子レベルで制御された物質、それらの集合体、異種材料の複合、さらに組成や構造をナノメーターレベルで制御・加工した材料、すなわち「ナノ材料」に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、機能材として従来のバルク材にない特異な能力を発揮することが期待される究極の人工物質であるナノ材料が、今後情報、医療、エネルギー等、あらゆる産業分野を支える技術となる状況を踏まえ、新規ないし高度な機能発現を目指した材料設計、合成・形成の方法、またナノ物性評価やデバイス試作に関する研究等が含まれます。


平成11・12年度発足研究領域
研究領域及び領域総括 研究領域の概要
「組織化と機能」

国武 豊喜
(北九州市立大学 副学長)


 ナノメータサイズの極微単位が組織化され、単純な構造から複雑な組織体へと転換する過程においては、ミクロからマクロに至るいずれのサイズでも、組織構造を保つ境界として界面が重要となります。このような観点に基づき、組織化と界面がもたらす機能について研究するものです。
 例えば、分子膜の関与するさまざまな働き、単一構造の観察と機能化、組織化の基礎としての分子認識、構造のヒエラルキー、組織化・構造のダイナミクス、ナノ構造体(材料)の組織や機能、及びこれらの分野への応用研究を含みます。
「認識と形成」

江口 吾朗
(熊本大学 学長)
 生物は、内的あるいは外的要因を認識して、フレキシブルに形づくりを営み、また部分的欠損を自ら修復しようとします。このような生物に固有の能力に注目し、遺伝子、分子、細胞等生物の構成要素の機能に基礎を求め、生物の形づくりと形の修復を制御している細胞内や細胞間の認識、情報伝達、各種調節因子の機能的カスケードなどについて研究するものです。
 単に個体発生や再生のみならず、細胞そのものの構造形成をはじめ、生体防御系・内分泌系・神経系などによる生体の恒常性維持機構、さらには個体集団の形成などに関する研究を含みます。
「秩序と物性」

曽我 直弘
(産業技術総合研究所 理事)
 物質の低次元化、非晶質化、ハイブリッド化などにより生じる構造や組織上の秩序性の変化と物性との関連を原理的に明らかにして、高性能・新機能の金属・無機・有機・複合材料の創出に結びつけようとするものです。
 例えば、秩序・無秩序の制御と物性評価、種々の物性と秩序性との相関の定量的評価、構造・組織秩序性と外場応答性、電子・原子・分子の相互作用と機能発現などに関する研究、およびこれらの応用研究を含みます。
「相互作用と賢さ」

原島 文雄
(東京都立科学技術大学 学長)
 人間の知力と行動力を最大限に発揮させる人工生命体と呼ぶべきシステムを構築しようとするものです。人間と機械が相互作用としての物理的関係と情報交換によって、さらに賢くなる人工の空間形成に関して研究するものです。
 例えば、情報の感知と命令の集積・融合化、スマートアクチュエータ、インターフェースなど構成要素のほか、知能ロボット、学習機能、微小機械、人工現実感、メカトロニクス、新システムの設計や構築に向けての研究などを含みます。
「機能と構成」

片山 卓也
(北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 教授)
 これからの社会を支える高度な機能をもった情報システムの構築を目指し、そのための構成や構築方法に関して、基本技術や先進応用事例および基礎となる理論の研究を行なうものです。
 例えば、ソフトウェア、ネットワーク、プロセッサ、分散・実時間・埋め込みシステム、セキュリティ、設計・実装・進化方法論と環境、テスト・検証技術、形式的手法、高信頼性技術、ユーザインタフェースなどの研究を含みます。


【ポスドク参加型】
平成13年度新規発足研究領域
研究領域及び領域総括 研究領域の概要
「生体と制御」

竹田 美文
(実践女子大学生活科学部 教授)
 この研究領域は、感染症、アレルギー、免疫疾患等の発症のメカニズムを生体機能や病原微生物との関わりに着目して、分子レベル、細胞レベルあるいは個体レベルで解析することにより、これらの疾患の新しい予防法、治療法の基盤を築く研究を対象とするものです。
 具体的には、病原微生物のゲノム解析によって明らかとなった情報や、ヒトゲノム計画の進展によって得られたゲノム情報を利用したワクチンの開発や遺伝性疾患の解析、あるいは生体防御反応・免疫応答に関わる分子の生体レベルでの解析による免疫系疾患の病因解明、およびそれらに対する新しい治療方法の探索を目指す研究等が含まれます。
「光と制御」

花村 榮一
(千歳科学技術大学 光科学部 教授)
 この研究領域は、受光と発光、光の伝達制御、スイッチング等に用いられる光デバイス等の実現に向けて、光と物質の相互作用や光機能性材料創製に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、非線形光学材料、発光および光記録材料を始めとした光機能性材料実現のため、半導体、酸化物結晶、分子複合体を用い、薄膜、超微粒子とナノクラスター、フォトニクス結晶、それらのハイブリット化と微細加工など、さまざまな形態制御を受けた新規物質創製に関する研究等が含まれます。
「合成と制御」

村井 眞二
(大阪大学大学院  工学研究科 研究科長)
 この研究領域は、材料化学などの領域における有用な物性と機能を持った新物質創製に対する要請に応え、新現象・新反応・新概念に基づく新しい化学の展開、さらには新合成手法と新機能物質の創製に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、有機合成の革新的手法・革新的なシステム、高分子の革新的合成法、などに加え、有機系・有機無機複合系物質、生理活性物質、分子エレクトロニクス材料など優れた機能を持つ新物質・新材料へのアプローチが含まれます。


平成11・12年度発足研究領域
研究領域及び領域総括 研究領域の概要
「協調と制御」

沢田 康次
(東北工業大学 教授)
 人間・社会・環境のそれぞれで生成されその間で伝達される情報の特徴抽出・モデル化、「協調」的情報処理(コミュニケーション)する様式とその「制御」、さらにそれを実現するための手法を研究します。
 例えば、インテリジェントなデバイスとシステム、ブレインコンピューティング、言語的・非言語的コミュニケーション、異種情報の統合シミュレーション、大量データの高速処理による意思決定支援システムの研究などを含みます。
「タイムシグナルと制御」

永井 克孝
(三菱化学生命科学研究所 取締役所長)
 生物は、自らが一旦遺伝子の内にセット(制御)したプログラムを、環境変化に応じてリセットすることにより、生命を維持しようとしている。こうした仕組みとその応用について研究するものです。高齢化への方策に向け、個体から細胞、ゲノム、分子に到る様々な階層的次元で生命を時間的存在として捉えようとする研究などを含みます。
 例えば、配偶子形成は成長から加齢に至るタイマーのリセット機構、幹細胞の存在や再生は個体レベルでのタイムプログラムのリセット機構であり、また老化はその機構の能力低下として理解できます。
「変換と制御」

合志 陽一
(国立環境研究所 理事長)
 省資源、省エネルギー、さらには環境調和型の物質変換プロセスを目指すため、新規化学反応やエネルギーの創出、それらの利用効率の向上や制御などの研究を行います。
 例えば、錯体や反応触媒、反応プロセスや生成分子のデザイン、エネルギー変換、無害化の促進、計測制御技術の開発及びリサイクルの実現を目指した廃棄物の資源化などに関する研究を含みます。

This page updated on June 22, 2001

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