プラズマを用いた化学的気化加工法(大口径非区球面レンズ用)


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景)
形状精度が良く、表面粗さが小さく、加工変質層を伴わない加工法が望まれていた

 収差の少ない大口径ガラス非球面レンズは、望遠鏡や特殊カメラ、分光器、半導体製造関連設備などのレンズとして利用されつつある。従来、小口径非球面レンズは、カメラなどにおいてレンズ枚数の削減のため使用されており、その加工はNC機械で研削、研磨や金型によるプレス加工など被加工物を物理的に加工する方法で行われている。このため、これらの加工法では加工変質層の発生に加え、形状精度の確保に苦心していた。なお、光源の短波長化が進んでいる半導体製造関連設備の光学系においては、屈折率変化や加工変質層による影響を低減し、充分な透過光量を得ることができる光学素子が必要とされている。
 本新技術は、こうした要請に応える新しい加工技術として、加工変質層を伴わずに加工形状の精度に優れ、表面粗さが小さい加工物が得られるものと期待される。

(内容)
化学的に活性なフッ素ラジカルを得、合成石英ガラスの表面原子と化学反応 させ揮発性物質のフッ化物として表面原子をはぎとる

 本新技術は、反応ガスの六フッ化硫黄とヘリウムの混合ガスを大気圧程度とし高周波電圧を印加することにより、電極近傍にプラズマを発生させ、これによりフッ素ラジカルを得て、合成石英ガラスの表面原子を化学反応させて揮発性物質のフッ化物にして蒸発除去するプラズマCVM(Chemical Vaporization Machining)により、大口径非球面レンズを製造するものである。
 本新技術は、合成石英ガラスを対象として、次のような加工法により行う。
 チャンバー中に反応ガスの六フッ化硫黄とヘリウムの混合ガスを導入して1気圧弱に保ち、この中にパイプ型電極を設置し、100MHz前後の高周波電圧を電極に印加して発生させたプラズマによって六フッ化硫黄ガスが分解して化学的に活性なフッ素ラジカルを得、合成石英ガラスの表面原子と化学反応させ揮発性物質のフッ化物として表面原子をはぎとり、パイプ型電極中空部により吸引除去することで合成石英ガラスを精密加工する(図1図2)。
 本新技術による加工装置は、チェンバー、高周波電源、ガス供給装置、ガス排気装置、電極などから構成され、ガス圧や電極形状、印加電圧、加工時間、加工位置などを制御することにより、大口径ガラス非球面レンズの非接触精密加工を可能にした。
 大口径ガラス非球面レンズの加工は次の手順により行われる。
 合成石英ガラス母材をダイヤモンド砥石によるNC研削装置などにより、粗研削した後、砥粒による研磨を行い形状精度1μm程度、表面粗さ0.5nm程度まで加工する。これをNC機構付きプラズマCVM装置により、許容量以上の誤差を示す部分の修正加工を行い、形状精度0.1μm以下、表面粗さ0.5nm以下の加工精度の大口径ガラス非球面レンズを得る。

(効果)
形状精度が良く、表面粗さが小さく、加工変質層を伴わない大口径非球面レンズが得られる新しい加工法

 本新技術は、非接触加工であり形状精度が良く、表面粗さが小さく、加工物表面に加工変質層の発生がなく、大口径レンズの加工が可能であり、半導体製造関連設備用レンズを始めとし、精密光学機器におけるレンズや反射鏡などの光学素子の精密加工への利用が期待される。また、非接触加工であることから薄膜材料や微小材料でも撓みや歪みを与えることなく加工ができることから、超軽量光学素子や微小光学素子の加工への利用が期待され、航空・宇宙関連やマイクロマシンなどへの応用展開も期待される。

(注)この発表についての問い合わせは以下のとおりです。

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This page updated on March 5, 1999

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