科学技術振興事業団報 第159号

平成13年5月10日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報室)

「腹腔鏡下臓器摘出手術装置」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)は、日本赤十字社和歌山医療センター院長、京都大学名誉教授 吉田 修氏、および天理よろづ相談所病院泌尿器科部長、京都大学臨床教授 寺地敏郎氏らの研究成果である「腹腔鏡下臓器摘出手術装置」を当事業団の委託開発制度の平成7年度課題として、平成7年11月から平成12年11月にかけて株式会社モリタ製作所(代表取締役社長 森田隆一郎、本社 京都市伏見区東浜南町680番地、資本金 約4億円、電話:075-611-2141)に委託して開発を進めていた(開発費約4億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 近年、患者の肉体的負担をできるだけ軽減させるため、開腹手術に代わって、腹腔鏡下手術が急速に普及しつつある。腹腔鏡下手術とは、腹壁に小さい孔を設け、そこに腹腔鏡(CCDカメラ)や鉗子等の器具を体内に入れて、モニター画面を観察しながら行う手術である。この手術法は開腹手術に較べ筋肉等への損傷が小さいため、術後の痛みが軽微で回復が早く入院期間が短縮でき、また傷痕が小さく患者の心理的な負担も小さくできるなどの優れた特徴を持っている。このため、消化器系を中心に広く普及しつつあるが、腎臓等の比較的大きな臓器の摘出手術に対しては、その大きさが要因で腹腔鏡下手術を行うことは困難であった。
 本新技術は、開腹をせずに腹壁に小さい孔を設け、そこに腹腔鏡(CCDカメラ)や鉗子等の器具を体内に入れて行う手術である腹腔鏡下臓器摘出手術装置において、従来困難であった腎癌の摘出手術なども可能とする手術装置に関するものである。皮膚切開孔より腹腔鏡、臓器細切装置、および鉗子等を挿入し、効率よく摘出すべき臓器を病理学的試験片を採取したあと、臓器を破砕し体外へ搬出することが可能となる。
 本新技術は、開腹手術や従来の腹腔鏡下手術と比較して、患者への侵襲(傷つけること)が少なく、腫瘍の進展様式や進展度の診断を可能とする病理学的試験片が容易に採取可能であるなどの特徴を持ち、腎癌等の摘出手術等、今まで困難とされていた手術に対しても腹腔鏡下手術が適用されるものであり、多くの患者に腹腔鏡下手術の利点を供与できるようになることが期待される。


「腹腔鏡下臓器摘出手術装置」の開発に成功(背景・内容・効果)
開発を終了した課題の評価
図1.従来の腹腔鏡下臓器摘出手術
図2.腹腔鏡下臓器摘出手術装置
図3.腹腔鏡下臓器摘出手術の流れ
表1.従来技術との比較

(注) この発表についての問い合わせは以下の通りです。
科学技術振興事業団 開発部 管理課長 夏見博康[電話(03) 5214-8435]
第一課  増渕 忍
株式会社モリタ製作所 研究開発部 専門課長 新関隆一郎[電話(075)-611-2141]

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