研究主題「オーファン受容体」の研究構想の概要


  ヒトを含み全ての多細胞生物は、数々の情報伝達物質による細胞間コミュニケーション・ネットワークによって生命維持に必須のホメオスターシスを保っている。例えば食欲、睡眠、呼吸・循環などの我々がごく日常的に経験する基本的な生命現象の制御もすべて、複雑な全身性あるいは局所性の細胞間情報ネットワークによって営まれている。細胞間情報ネットワークは、まずホルモンや神経伝達物質等の細胞間情報伝達物質(リガンド)を同定し、さらにそれらを特異的に認識する受容体を同定することにより、大きく理解が進展してきた。しかし、新しいリガンドの発見は、近年徐々に頭打ちの感が出てきており、研究手法の転換が必要と考えられる。
 本研究は、リガンドが同定されていない受容体(オーファン受容体)をターゲットにして、未知のリガンドを探索し、その機能と作用機構を探究することにより、生命現象の理解を深め、新規医薬品等への応用の可能性を探索するものである。
 具体的な研究手法としては、通常の内分泌学と逆の研究手法を採る。すなわち受容体をコードする遺伝子群からオーファン受容体を得、それを釣り餌として対応するリガンドを同定する手法を用いて、リガンド−受容体で構成される特異的な情報伝達経路を探索する。また、これと並行して、リガンドが特異的に結合したときに生じる細胞内シグナルの高感度検出系を開発する。さらに、リガンド及び受容体の遺伝子を欠損あるいは過剰発現する動物(主としてマウス)を作製し、新規の細胞間情報ネットワークの機能解明を行い、生体内の高度な制御機能解明へと迫る。
 本研究は、基本的な生命現象の遺伝子レベルでの解明に資するばかりでなく、受容体が新規医薬創製のためのターゲットとなり得ることから、現状で克服が困難な疾患に対する先進医療技術等の実現に向けた、先端的基盤技術の創出につながることが期待される。


This page updated on April 24, 2001

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