研究主題「不均一結晶」の研究構想の概要


 最近、窒化ガリウム系半導体を利用した発光ダイオードやポーラスシリコンにおいて、結晶中に組成、構造あるいはサイズなどについてナノメートルレベルの不均一性を持たせることにより新たな性質が発現されることが見出されている。すなわち、結晶欠陥はデバイスの特性に悪影響を及ぼすものであるが、それまでの発光デバイスにおいては、結晶欠陥の密度が1×103cm-2以下でなければ実現不可能とされていたのに対し、1×1010cm-2と格段に欠陥の多い結晶でも高輝度かつ長寿命な青、緑、白色発光ダイオードを窒化ガリウム系半導体を利用して実現したことに端を発する。その機構は明らかになっていないが、InGaN(窒化インジウム・ガリウム)材料中のInN(窒化インジウム)の不均一性が結晶欠陥の影響を低減しているものと考えられている。
 本研究は、このような不均一性により発現される性質を明らかにし、その意図的制御の可能性を探ることにより、高性能電子デバイス等への端緒を得ようとするものである。
 研究を進めるにあたっては、窒化ガリウム系半導体における組成不均一を対象として、ヘテロ基板上に成長させた結晶と完全結晶との相補的な研究により不均一性と結晶欠陥の関係を理論的、実験的に明らかにするとともに、不均一性の意図的制御により発光のモード広がり抑制、高励起下での機能発現などを試みる。また、この成果を手がかりとして、組成不均一だけでなく構造、サイズなどの様々な不均一性による効果、原理を探求するとともに、その制御の可能性を探り、電子デバイス等への展開の基礎とする。
 結晶の不均一性を利用して新たな性質の発現を目指す本研究は、結晶成長と物性研究に新たな領域が開き、その融合により新産業の創出に向けた技術革新をもたらすことのできるナノスケールにおける新技術の創製に資することが期待される。また、新たな高性能電子デバイス等の創製を通じ、次世代の高速大容量情報処理技術を構築するための要素技術の創出につながるものと期待される。


This page updated on April 24, 2001

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