「プレス部品高自由度複合生産システム」の開発に成功


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) プレス加工業界から、高い自由度で複雑形状の加工が行える生産システムが望まれていた。

 プレス加工は、生産性の高い加工方式として生まれ、高精度、低コストなどの部品生産に要求される諸要素を満足し、大量生産に適した生産方式として進歩してきた。その結果、多工程連続自動加工を実現した生産方式の一つとして、順送りプレス加工という生産方式が生み出された。これらの加工法は、大量生産を前提として、電気機器部品や自動車部品などの小物プレス部品の生産に用いられている。現在では、大量生産が必要な部品は、プレス加工による生産が行えるような構造設計が予め行われている。また、機械加工や粉末成型などにより生産されている部品についても、コストダウンのために、プレス部品加工による代替化が検討されている。しかし、近年では、大量生産品の海外移転や消費者ニーズの多様化にに伴い、より付加価値の高い加工や、さらなるコストダウン、多品種変量生産への対応がプレス加工にも求められている。しかしながら、プレス加工は金型を用いた二次元の塑性加工であり、入り口よりも奥の方が大きな形状や異材質の組み合わせ、また板の厚さの変化が大きな部品など、塑性加工の限界を超えた形状の加工は困難である。そのため、このような限界を超えた形状や寸法を必要とする金属部品のプレス加工による生産を可能とする生産システムが求められている。

(内容) 高付加価値の加工を高精度・高自由度で行うために、順送りプレス加工に積層・加熱・切削バリ取り、検査等のユニットをインラインで組み合わせた複合加工生産システム

 本新技術は、順送りプレス加工に積層・加熱・切削・バリ取り等が行える各種ユニットを組み合わせ、従来の加工法では複数の工程を個別に処理し加工を進めていた複雑な三次元形状部品や塑性加工の限界を超えた寸法の部品を、一連の工程で成形出来る複合加工生産システムであり以下のような特長がある。
 @従来の金属プレス加工で作製される代表的な積層部品としては、トランスやモーターのコアがある。(図1)これらは、金型の中で型抜きされた同一形状のプレス部材を積層し、ダボカシメなどにより接合するものであり、部品形状は同形状の柱状に限定される。本新技術では1本のコイル材からプレスにより複数の異なる形状を抜き落しまたは半抜きし、積層ユニットまで搬送するとともに複数の形状の共通形状部を利用し、ピンなどをガイドに材料同士の位置決めを行う。(図2)これにより、外形の異なる打抜き材料を積層した異形状積層部品、例えば複数の歯車とカムを組み合わせた形状を1個の部品として一連の工程で作製できる。(図3) 特に、異材質・異形状の部品を成形加工しながら1つの製品として組立まで行えるロータリー積層システムの開発により複雑形状・機能を持つ部品を一体成形できる。(図4
 Aプレス加工時の素材の加工硬化による成形性の限界を向上させる目的で、プレス機械の駆動源をサーボモーター化し、素材の流動性に対応した成形速度を得ることで絞り成形性が飛躍的に向上する。(図5
 B精密鍛造加工においては、プレス工程内に高速切削ユニットインラインで組込むことで加熱せずより複雑かつ高精度な形状を作製できる。(図6

(効果) 高精度の追求、高度な成形性、さらに異形状を組み合わせる複合加工など、付加価値の高い部品製作手段としての利用拡大

 本技術による複合生産システムによれば、

(1) ベースマシンによる順送りプレス加工に、各種加工ユニットを組み合わせ複合加工が連続的に行えるため、部品点数や工数の削減により生産性の向上、コストの低減が図れる。
(2) 通常のプレス加工では加工困難な形状を高精度に作製できる。
(3) 各種機能ユニットは簡単に交換接続可能で変種変量にスピーディーに対応できる。
(4) 多品種少量生産にもイニシャルコストが少なく対応できる。
などの特長を持つため、
(1) 複雑な三次元形状部品の一体成形
(2) 高精度な部品加工
(3) 複合加工を要する高精度なプレス部品の一体成形などに広く利用できることが期待される。

This page updated on March 22, 2001

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