「戦略的基礎研究推進事業」平成12年度
採択研究代表者および研究課題一覧


3.研究領域「分子複合系の構築と機能」

研究代表者氏名 所属及び役職 研究課題名
カツキ  ツトム
香月 勗
九州大学
大学院理学研究院
教授
次世代合成のための多機能集約型触媒の構築
シミズ トシミ
清水 敏美
工業技術院 物質工学工業技術研究所
有機材料部
研究室長
一次元孤立微小空間構造の組織化と機能発現
タナカ  コウジ
田中 晃二
岡崎国立共同研究機構
分子科学研究所
教授
化学エネルギー変換素子の構築
トベ  ヨシト
戸部 義人
大阪大学
大学院基礎工学研究科
教授
混合混成型巨大炭素パイ電子系の創出
ナカニシ ハチロウ
中西 八郎
東北大学
反応化学研究所
所長・教授
有機ナノ結晶の作製・物性評価と多元ナノ構造への展開
(アイウエオ順)

総評 研究統括 櫻井 英樹

 「化学は21世紀もセントラルサイエンスであり続ける」

 激動の20世紀も余すところ3ヶ月で終わろうとしている。今世紀はハーバー・ボッシュの空中窒素固定に始まり、チーグラー・ナッタ法など人類の生存の根幹を作る発明が続々と続き、現代の物質文明の基礎が築かれた。まさに化学の世紀でもあった。一方では、物質文明のもたらす負の面も見逃せなくなって次の世紀へと遷ろうとしている。21世紀は薔薇色の未来というのではないかもしれない。しかし、間違いなく、人類の直面している多くの問題の解決に化学が必要とされる。物質科学や生物化学にそのスコープを広げた化学は21世紀においてもセントラルサイエンスであり続けるであろう。さて、化学を基礎とする本研究領域の研究提案も三年目を迎え、提案公募受付としては最終年度となった。本年も国公私立大学のみならず、国立研究機関や民間研究機関などからも多数の優れた提案が寄せられ、戦略的基礎研究推進事業のなかでももっとも激戦の領域となった。化学の持つ可能性と、研究人口の豊富さを改めて実感した。
 本年度も7名の研究アドバイザーにお願いして2段階の書類審査を行い、12件の提案を選択し、面接による三次審査によって5件の研究提案を採択した。面接では研究の背景、ねらい、構想、研究の進め方、研究体制、将来展望などの説明に基づき質疑応答によって理解を深めながら行った。
 本研究の趣旨に添って、物質系の構築と機能の両面にわたってどのようなねらいによって研究を進めるかを重点にして選考をすすめた。化学は物質系を分子レベルでとらえ、その構造や機能を明らかにし、反応機構を解明するところに存在意義がある。さらに、分子系の複合化によって新たな機能を獲得し、21世紀に向けて物質科学や生物化学にもその領域を積極的に展開しようとしている。提案の中には魅力的ではあるが、分子レベルで構築する本研究領域とは背馳していて割愛せざるを得なかったものもあった。本年度採択された提案には、巨大パイ共役系の構築と機能、ナノサイズ結晶の持つ特異な物性と機能、有機ナノチューブの構築と機能、さらには高度の不斉触媒系の構築や、新規燃料電池の構築につながる金属錯体上でのエネルギー変換など、分子集合体の構築と機能の面で多彩な研究が含まれる。すでに世界的な評価を得つつあるものもあり、今後の発展が楽しみである。プロジェクト遂行の期間で画期的な成果の出ることを期待している。

This page updated on October 5, 2000

Copyright©2000 Japan Scienceand Technology Corporation.

www-pr@jst.go.jp