科学技術振興事業団報 第145号

平成12年9月7日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「近接場光学顕微分光測定システム」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)は、(財)神奈川科学技術アカデミー(理事長 長倉三郎)、東京工業大学大学院総合理工学研究科教授大津元一氏らの研究成果である「近接場光学顕微分光測定システム」を当事業団の委託開発制度の平成9年度課題として、平成10年3月から平成12年6月にかけて日本分光株式会社(代表取締役社長 重久三行、本社 東京都八王子市石川町2967-5、資本金 約9,000万円、電話:0426-46-4111)に委託して開発を進めていた(開発費約2億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 試料に一定波長の可視光を当てたとき、試料で散乱される光や試料からの発光の波長分布(スペクトル)を測定する分光測定は、物質の化学組成や構造を調べるための分析法として広く利用されている。
 一般に、光を波長より小さな領域に集光することはできないので、可視光を用いては、1ミクロンよりも微細な半導体構造や細胞内の組織などの精密な分析は事実上不可能であった。このため、より微細な領域を分光測定するための新たな手段の実用化が望まれていた。
 本新技術は、光波長(可視光)より微小な領域の分光測定が可能となる装置に関するものである。その操作等は次の通りである。@光ファイバーの一端に円錐状の微小突起を形成し、その突端部に直径が100nmオーダーの開口部を形成させ、他の部分は遮光コーティングしたプローブ(探針)を開発する。Aこのプローブの他端からレーザー光を導入することによりプローブ先端部に近接場光を局在させる。Bこの近接場光だけが試料表面に触れるまでプローブ先端を試料表面に近づける。Cこの操作により、試料表面から散乱光等が発生するのでこれを取り出し分光測定する。
 本新技術により光の波長以下の微小領域へ適用が可能となり、半導体構造や生体組織などの微小部分の分析を伴う先端的な研究開発の基盤技術としての利用が期待される。          

「近接場光学顕微分光測定システム」の開発に成功(背景・内容・効果)

開発を終了した課題の評価

近接場顕微分光測定器外観(図6)

(注)この発表についての問い合わせは以下の通りです。
科学技術振興事業団 開発業務部 管理課長 草野辰雄
管理課 井口 穣[電話(03) 5214-8996]
日本分光株式会社 営業部 営業推進課 松村幸彦[電話(0426) 46-4116]

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