本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。
(背景) | ビル内やハウス栽培等における炭酸ガスセンサの重要性が高まるおり、従来のセンサには、大型で高価、かつ頻繁な保守が必要等の問題あり。 |
近年、ビル内や地下室等の局所環境の濃度管理、および植物のハウス栽培や植物工場における炭酸ガスの濃度管理等の重要性が高まってきている。
現在使用されている主な炭酸ガスセンサは、炭酸ガス分子が赤外線を吸収する性質を利用した赤外吸収方式のセンサである。しかし、この炭酸ガスセンサは、光学的測定法を用いるため、大気中の粉塵、水分、共存ガス(赤外域に吸収)の影響を受け、測定値の正確さに欠ける。また、これらの除去のために装置の小型化が困難であり、かつ価格も高価となる。さらには、汚れや粉塵のため煩雑な保守が必要となるという問題があった。
(内容) | 炭酸リチウムを検知極材料とする炭酸ガスセンサにより、小型で水分の影響を受けにくく安定な起電力(高精度)を実現した。 |
本新技術の研究者である故田川、水崎両氏らは、近年炭酸ガスセンサの種々の問題解決のために注目されている新しい電気化学炭酸ガスセンサの中で、固体電解質を用いるセンサが、測定ガス濃度の変化量と発生する起電力の電圧とが比例すること等に注目した。
しかし、これまでに研究されている固体電解質型炭酸ガスセンサは、ガス検知極に採用している固体電解質材料の炭酸カリウムや炭酸ナトリウム等が大気中の水分を吸収しやすく、当該センサを大気中に放置するとそれらの検知極材料が加水分解を起こし、正確な炭酸ガスの濃度測定が行えなくなるという問題があった。
本研究者らは、検知極材料に金属炭酸塩の中で水との親和性が最も小さい炭酸リチウムを採用することとした。
本新技術による炭酸ガスセンサは、検知極、リチウムイオン伝導体、および基準極の三層構造からなるものであり、検知極を構成する材料は、直接的に炭酸ガスと接触して起電力を生ずるための炭酸リチウムに導電性向上等のための金を添加したもの。また、リチウムイオン伝導体は、炭酸リチウムおよび結晶化ガラス、基準極材料は、2種類のリチウムフェライトに金を添加したものとした。
(効果) | 小型で安価しかも保守が従来よりも格段と軽減されているため、室内、作業現場等での換気制御やハウス栽培での炭酸ガス濃度制御等への利用が期待される。 |
本新技術で得られた炭酸ガスセンサには次のような特徴がある。
(1) | 小型に素子化することが可能である。 |
(2) | 汚れや粉塵の影響が比較的小さいので保守が軽減される。 |
(3) | 安価に製造が可能である。 |
(4) | 水分や他のガスの影響を受けにくく高精度である。 |
したがって、
(1) | 室内や作業現場等の換気制御 |
(2) | ハウス栽培や植物工場等での炭酸ガス濃度制御 |
のための炭酸ガスセンサとしての利用が期待される。
〔注釈〕
固体電解質:
荷電粒子には電子、正孔(ホール)、イオンの3つのタイプがある。イオンとは電荷を帯びた原子や分子である。固体電解質とは「その内部をイオ ンが自由に動き回れる固体」をいい、イオン伝導体ともいう。
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