研究主題「フォトニクスポリマー」の研究構想の概要


 光学ポリマーは、無機ガラスにはない種々の固有の特性を有することから、光学、フォトニクス分野の新材料として注目されつつあるが、光学ガラスと比較して、透明性が低い、複屈折が大きい、屈折率の波長分散が大きい、光学的均一性が低いなどの光学ポリマーに避けられない固有の問題が指摘され、これが光学ポリマーデバイスの性能向上と用途拡大を妨げ、次世代フォトニクス分野には不向きであると考えられてきた。しかし、この光学ポリマーの特性の常識は、単純なモデルによる基礎的な物理理論から予測される光物性と、ポリマーの高次構造とそこから発現される光物性との関係について、本質的な議論がほとんどなされずに形成されているように思われる。
 本研究は、高分子物質学と光学の研究領域の壁を取り払い、高分子の光物性を、その起源にまで迫り究明していくことにより、その構成要素のサイズとそこから発現する固有の光物性の相関を体系化し、フォトニクスポリマーの新たな科学技術領域を構築しようとするものである。
 研究を進めるにあたっては、「構成分子のデザイン」、「光機能発現機構」、「フォトニクスポリマーの応用」の研究について相互に密接な連携を保ちつつ展開し、光の偏波またはフォトンが、さまざまな高分子の鎖(オングストロームのオーダ)やその集合体(数百オングストローム)、高次構造、更に巨大な不均一構造とどのようなかかわりを有するかを詳細に検討し、そこから「最も透明なポリマーとは何か」、「最も高速光情報伝送を可能にするポリマーとは何か」、「最も光を増幅できるポリマーとは何か」といった本質的な特性を追求する。
 本研究によるアプローチは、従来の断片的な知見に基づいた「光学ポリマー」の限界を超える数々の「次世代フォトニクスポリマー」の提案・実証へとつながり、今まで無機ガラスの独壇場であった光通信等の分野における革新的新材料の創出に寄与することが期待される。


This page updated on April 27, 2000

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