本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。
(背景) | 半導体素子の高集積化や高性能化が進む半導体産業において、超微細加工が可能なエッチング装置が強く望まれていた。 |
半導体産業においては、素子の高集積化や高性能化が常に求められており、微細加工技術の向上が必要とされている。その微細加工技術のエッチング工程には、プラズマエッチングやスパッタエッチング等があるが、高効率で大面積の微細加工が可能なプラズマエッチングが主流となっている。
SiO2をプラズマエッチングする場合、材料ガスのC4F8等から、プラズマ中の分解したCF、CF2ラジカル等がエッチングされたホール側壁面に付着して保護膜の働きをする一方、バイアスにより加速された異方性イオンがホール底面をエッチングするものと考えられている。
このため、加工精度を高めるためには、イオンに対してCF、CF2ラジカルの密度を最適化することが求められていたが、従来はラジカルの密度を計測する手段がなく、経験や勘に頼る加工をおこなっていたため、加工精度の向上に限界があった。
さらに、深いホール(高アスペクト比)のエッチングの場合、(1)ホール底面(エッチング部)がプラスに帯電し異方性イオンの照射を阻害することと、(2)ホール底面における反応物の堆積、等が原因と考えられるエッチングの停止(エッチングストップ)が発生するので高アスペクト比のエッチングに限界があった。また、これらの阻害要因は原料ガスにO2を添加することで改善が図られるが、そのO2添加により、レジスト部と被エッチング部(酸化膜[SiO2])との選択性が低下(エッチング選択比の低下)する。このことは、高集積化に伴いレジストの薄膜化が進むことと相反し、高集積化の課題の一つであった。
このため、半導体素子の高集積化や高性能化が進む半導体産業において、超微細加工が可能なエッチング装置が強く望まれていた。
(内容) | 赤外線レーザ吸収法を用いてラジカルの有無によるレーザの強度比からラジカル密度を測定する方法を用いてラジカル密度を最適化 |
本新技術は、プラズマ発生用高周波電源のパルスのオン・オフ比やガス圧等を変化させてプラズマ雰囲気中のラジカル密度、イオン量等を最適化するとともに、添加ガスであるO2の供給量を最適に制御して高アスペクト比のホール底部におけるエッチング効率とエッチング選択比を維持することで超微細加工をおこなうものである。
プラズマ雰囲気中へラジカルの吸収スペクトル線に対応する波長の赤外線レーザを照射するとレーザの一部が吸収され強度が変化する。開発ではこの現象に着目して、赤外線レーザ吸収法(IR-LAS:Infrared
Diode Laser Absorption Spectroscopy)を用いてラジカルの有無によるレーザの強度比(標準ガスとそのプラズマ化した状態の比較)からラジカル密度を測定し、高周波電源(オン・オフ比や電力など)やガス圧などを変化させることで、ラジカルの密度の最適化を図ることを可能とした。また、エッチングの進展により添加ガスのうちO2添加量を段階的に増やすことでレジスト部と被エッチング部との選択性を向上させ、深いホール底面においてもエッチングが可能となった。
(効果) | 半導体製造用の超精密加工が可能なエッチング装置としての利用が期待される。 |
本新技術によるプラズマエッチング装置は、(1)プラズマ中のラジカル密度・組成の最適化が可能である、(2)エッチングの進行によりO2添加量を段階的に増やすことでレジスト部と被エッチング部との選択性が向上する等の特徴を有することから超精密加工が可能であり半導体製造用のエッチング装置としての利用が期待される。
This page updated on December 22, 1999
Copyright©1999 Japan Science and Technology Corporation.
www-pr@jst.go.jp