「戦略的基礎研究推進事業」平成11年度採択研究課題の概要


1.研究領域「電子・光子等の機能制御」

研究代表者: 小田 俊理
所属・役職: 東京工業大学量子効果エレクトロニクス研究センター 教授
研究課題名: ネオシリコン創製に向けた構造制御と機能探索
概   要: ナノ結晶シリコンの粒径と粒子間隔を原子スケールで制御した「ネオシリコン」は、粒子内での電子の局在化と粒子間の相互作用により、電子輸送、光放出、電子放出特性などにおいて、従来の単結晶やアモルファスを超える新物性が期待できる第3のシリコン材料である。デジタルプラズマプロセス、ラジカル窒化、化学アニーリング法などのオリジナル技術を駆使し「ネオシリコン」特有の機能を発現させ、将来の情報通信、エネルギー、医療産業への応用につなげる。


研究代表者: 北川 勝浩
所属・役職: 大阪大学大学院基礎工学研究科 助教授
研究課題名: 核スピンネットワーク量子コンピュータ
概   要: 量子コンピュータが強力な量子並列性を発揮するためには、量子ビットの数を増やすことが重要である。そこで、高分子や結晶の規則的に配列した多数の核スピンを量子ドットとして用いた多ビット量子コンピュータの実現をめざす。物質固有の核スピンネットワークを活かした量子回路構成法の研究と、量子コンピュータに適した物質の探索・開発とを密接に連携して進めることによって、多ビット化への突破口を開く。


研究代表者: 中野 義昭
所属・役職: 東京大学大学院工学系研究科 助教授
研究課題名: 人工光物性に基づく新しい光子制御デバイス
概   要: 半導体材料の光物性を一原子層単位で設計・制御された人工結晶構造により変革し、発光、増幅、検出などの光能動基本機能ならびに光非線形性を飛躍的に高めること、これら半導体人工光物性に基づいて、ダイナミック光メモリ、光ロジック、デジタル波長変換器、光3R中継器などの全光子制御デジタルデバイス/回路群を実現し、デジタルフォトニクスの基礎を築くことによって光情報通信技術の発展に資することをめざす。


研究代表者: 中村 新男
所属・役職: 名古屋大学理工科学総合研究センター 教授
研究課題名: ナノサイズ構造制御金属・半金属材料の超高速光機能
概   要: 金属や半金属の大きさをナノスケール(1mmの百万分の1)にすると量子力学的効果が現れる。このようなごく微細な粒子に光を瞬間的に当てたり、当てなかったりすると、粒子の性質が大きく変わる。これを利用して、光によって光を制御したり、磁気的機能や電気的機能を制御する材料を創り出すことをめざす。


研究代表者: 覧具 博義
所属・役職: 東京農工大学工学部 教授
研究課題名: 光・電子波束制御エンジニアリング
概   要: 光の位相を制御する技術は、光エレクトロニクスに大きな自由度を与えるものと期待される。フェムト秒光パルス(光の波束)と、これによって量子ナノ構造材料中に誘起される電子波束との相互作用を用いて、光位相を精密かつ超高速に制御する技術の開発をめざす。


2.研究領域「分子複合系の構築と機能」

研究代表者: 桑嶋 功
所属・役職: (財)北里研究所生物機能研究所 研究部長
研究課題名: 高次構造天然物の全合成:制癌活性物質の探索と創製
概   要: 高次構造を含むタキソール及びインゲノール、興味ある制癌活性を示す微量天然有機化合物マクロスフェリド、マジンドリン、カズサマイシン等を合成標的として取り上げ、その簡便な全合成ルートを開発する。次いで、これらの制癌活性天然物を基盤として、各種の誘導体並びに合成過程で得られる類縁体も含めて構造/活性相関関係及び活性発現機構の解明を行い、真に有用な制癌活性物質の開発を目指した分子設計・分子合成研究を展開する。


研究代表者: 鈴木 啓介
所属・役職: 東京工業大学大学院理工学研究科 教授
研究課題名: ハイブリッド型生理活性分子の高効率構築法の開発
概   要: 天然の生理活性分子にはハイブリッド構造を有するものがある。こうした分子の活性は、その構造ならではのものであることが多い。一方、このような分子の合成は、既存の方法を単なる組み合わせでは達成できないことも多く、関連領域の進歩の妨げとなっている。この観点から本研究では主に(1)芳香族、(2)糖、(3)ヘテロ原子の三要素を含む複合分子をとりあげ、高効率合成法の開拓を研究する。


研究代表者: 田中 順三
所属・役職: 無機材質研究所第10研究グループ 総合研究官
研究課題名: 無機ナノ結晶・高分子系の自己組織化と生体組織誘導材料の創出
概   要: 自然界の中では、分子領域から特異に組織化された有機・無機複合系細胞外マトリックスが存在する。本研究では、「組織化された複合系構造の構築」を「有機無機間の界面形成⇔配位結合」あるいは「結晶核の方位の規定⇔共有結合の方向性」のように材料科学的に理解し、ミクロから組織化されたナノコンポジットを創製する。生体組織誘導型人工骨・軟骨・歯・および神経・血管再建用材料の開発につながる研究をめざす。


研究代表者: 福住 俊一
所属・役職: 大阪大学大学院工学研究科 教授
研究課題名: 有機・無機複合光電子移動触媒系の開発
概   要: 地球が長年蓄積してきた資源・エネルギーをふんだんに使用した20世紀の科学技術に対して、21世紀はそのバブルのつけを科学技術自身が支払わなければならない。そのための戦略目標としては太陽光エネルギーの有効利用が鍵となる。本研究では、有機・無機複合系を用いて、有機分子光励起種と配位不飽和金属錯体と錯形成させることにより、種々の有機化合物との光電子移動触媒反応を精密制御し、高効率かつ高選択性を有する新しい物質変換手法を確立するとともに、高効率光電変換素子として応用することを目的とする。


研究代表者: 吉川 研一
所属・役職: 京都大学大学院理学研究科 教授
研究課題名: 自己生成する高分子ナノ秩序体:高次構造制御と機能発現
概   要: これまでにDNAの折り畳み転移がON/OFF型(一次相転移)のスイッチングであることが実験・理論の両面から明らかにされた。このような現象は遺伝子の転写や複製の制御に深く関与していると考えられる。また、高次構造のスイッチング(一次相転移)はDNA以外の各種天然・合成高分子でも起こっていることが期待される。本研究では、高分子の折り畳みの一般論を確立し、それを活用することにより、新たな機能を持つ高分子ナノ秩序体を創出することをめざす。


3.研究領域「ゲノムの構造と機能」

研究代表者: 田矢 洋一
所属・役職: 国立がんセンター研究所生物学部 室長
研究課題名: p53によるゲノム防御機構
概   要: p53はゲノムに傷がついたときなどに量が増加してきて、活性な転写因子となり、ある場合にはG1期に細胞を停止させるが、別の場合にはアポトーシスを誘導して細胞を殺す。この選択のメカニズムの解明をめざす。この選択はp53上のリン酸化或いはアセチル化部位の違いでなされると考えられるので、それらの部位を明らかにする。


研究代表者: 花岡 文雄
所属・役職: 理化学研究所細胞生理学研究室 主任研究員
研究課題名: ゲノム情報維持の分子メカニズム
概   要: DNAの損傷を修復する様々な機構のうち、最も広範な損傷に対応するヌクレオチド除去修復と、損傷を乗り越えて忠実な複製を行うメカニズムについて、徹底的に解明する。本研究によって、哺乳類におけるゲノムの安定保持のための基本的な戦略を明らかにすることのみならず、がんや老化の仕組みを根本的に理解することが期待される。


研究代表者: 馬場 嘉信
所属・役職: 徳島大学薬学部 教授
研究課題名: ナノチップテクノロジーの創製とゲノム解析への応用
概   要: 最先端の半導体集積化技術を駆使し、小型チップ上にナノ構造体を有するデバイスを開発し、極微量のゲノムDNAの抽出、増幅、シークエンシング、SNP検出等の集積化を実現するナノチップテクノロジーを創製することをめざす。本研究は、世界初の非スキャン型レーザー検出装置をも集積化した超高速ゲノム解析技術の確立を可能にするのみならず、半導体産業とバイオ産業の融合による新産業創出等の波及効果が期待される。


研究代表者: 平岡 泰
所属・役職: 郵政省通信総合研究所関西先端研究センター生物情報研究室 室長
研究課題名: ゲノムの安定保持を保証する細胞核構造の解明
概   要: クラゲ蛍光タンパク質GFPとの融合遺伝子の細胞内局在を指標に、目的のタンパク質を同定する。この方法の特色は、局在を知ることにより、そのタンパク質の遺伝子が直ちに得られることである。この方法の有用性は、すでに分裂酵母で作製したGFP融合ゲノムライブラリーによって特異的局在を示す新規遺伝子が多数発見されたことによって実証されている。今回はこの方法をさらに発展させ、GFPとともにHistidine-tagをつけたGFPライブラリーを分裂酵母とヒトで構築し、局在を指標に、特定の細胞核構造と相互作用する一連のタンパク質を芋づる式に発見する。このような方法を用いて、染色体機能領域や核膜などの核構造に関して解析し、体細胞分裂や減数分裂におけるゲノムの保持機構を明らかにしていく。分裂酵母と高等動物で解析を進め、種を越えた普遍的な制御を明らかにする。


研究代表者: 吉田 稔
所属・役職: 東京大学大学院農学生命科学研究科 助教授
研究課題名: 核内因子の局在と修飾に関する化学遺伝学的研究
概   要: タンパク質の修飾や機能モチーフの同定と解析はゲノム塩基配列情報と相補的で重要である。本研究は核内因子の局在調節とアセチル化の意義の解明を中心におき、核外移行シグナルを有するタンパク質と可逆的アセチル化を受けるタンパク質を吉田らが発見、開発した核外移行阻害剤レプトマイシン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗アセチル化リジン抗体などを用いる独特の方法によって検索し、それらの機能を明らかにする。この成果をもとにゲノム機能の人為的制御や治療法への可能性を探る。


4.研究領域「脳を知る」

研究代表者: 重本 隆一
所属・役職: 岡崎国立共同研究機構生理学研究所 教授
研究課題名: 細胞膜上機能分子の動態と神経伝達調節メカニズム
概   要: 神経細胞やグリアの細胞膜には、シナプス等の特殊化されたコンパートメントが存在し、受容体やチャネル等の機能分子が集積している。脳の情報伝達制御には、これらの局在された機能分子の相互作用が重要であると考えられる。本研究では、高解像度で、さらに生細胞においてリアルタイムで膜状機能分子の動態や相互作用を明らかにする方法を確立し、そのダイナミズムに基づいた神経伝達調整のメカニズムを解明する。


研究代表者: 丹治 順
所属・役職: 東北大学大学院医学系研究科 教授
研究課題名: 行動制御系としての前頭前野機能の解明
概   要: 大脳前頭前野は行動発現における統合的な制御系として重要と思われているが、その具体的な働きの機構と動態は未だ殆ど知られていない。本研究では新たな視点から系統的な実験を行い、行動の時間的・空間的制御および問題解決機構としての働きを細胞活動の時空間パターンとして明らかにし、他方前頭前野の領域特異性と伝達物質リセプターの関与を知ることによって、前頭前野の機能理解をめざす。


研究代表者: 八尾 寛
所属・役職: 東北大学大学院医学系研究科 教授
研究課題名: 学習・記憶のシナプス前性メカニズムの解明
概   要: 本研究は、シナプス前終末の構造的・機能的な可塑性がどのような分子により調節されているのか、学習・記憶の過程で、それらの分子がどのような修飾を受けるのかを解明する。シナプス前終末の微小性、ヘテロ性、生化学的複雑性などに由来する困難を、GFP誘導体リコンビナントプローブ、新しいプローブ導入法などの新しい生理学的研究法を開発することによってブレークスルーをめざす。


5.研究領域「脳を守る」

研究代表者: 荒畑 喜一
所属・役職: 国立精神・神経センター 神経研究所疾病研究第一部 部長
研究課題名: DNAチップによる遺伝性筋疾患の分子病態解明
概   要: 展開する先端的DNAチップ技術の開発構想は、膨大な量の遺伝子発現・変異情報へのアクセスを可能にする革新的技術戦略である。そこで本技術を、疾病研究の新世代方法論と位置づけ、その独自開発を行う。さらに遺伝性筋疾患をモデルとして、応用化研究を推進する。筋の障害機構に関与する多数の未知遺伝子並びに修飾因子の発見と、それらの発現情報のデータベース化によって、筋障害過程に最も重要な細胞のシグナル伝達経路を一挙に解明することが期待される。これは、根拠に基づく医療(EBM)の実現に不可欠の課題である。


研究代表者: 垣塚 彰
所属・役職: (財)大阪バイオサイエンス研究所 第4研究部 部長
研究課題名: 神経変性の分子機構解析に基づく新しい治療戦略の開発
概   要: マシャド・ジョセフ病やハンチントン舞踏病の原因遺伝子から作り出されるポリグルタミンが神経変性を引き起こすことが判明した。本研究では、ポリグルタミンによる神経変性の分子機構を解明することによって「神経変性とは何か」という問いに答える統一概念をつくること、さらには、神経変性に共通する分子機構に基づいた治療法を開発して神経変性疾患を一網打尽にする新しい方法論を構築することをめざす。


研究代表者: 金子 清俊
所属・役職: 国立精神・神経センター 神経研究所疾病研究第七部 部長
研究課題名: プリオン複製に関与する新しい因子の同定とプリオン病治療法開発への応用
概   要: 正常型から異常感染型プリオンへの構造変換に重要な役割を果たしている新しい因子を同定し、現在深刻な社会問題化している乾燥硬膜移植後や狂牛病に代表されるプリオン病の治療法開発をめざす。プリオン病の治療法開発は、他の様々なコンフォメーション病の治療の先駆的モデルとしても重要である。さらに、新方法論の開発により、生化学並びに病理組織学分野における蛋白研究の飛躍的な発展が期待される。


6.研究領域「脳を創る」

研究代表者: 石川 正俊
所属・役職: 東京大学大学院工学系研究科 教授
研究課題名: 感覚運動統合理論に基づく「手と脳」の工学的実現
概   要: 脳が持つ感覚運動統合機能の可能性を探求し、実環境に対する柔軟な認識・行動の実現に向けて、人間と同等の機能、あるいはそれを越えた機能を実現する工学的に意味を持つ脳型システムとしての「手と脳」を構成論的に体系化することを目的とする。実世界と整合した新たな工学的な感覚運動統合モデルに対応した実システムを構築し、そのシステム上で「手と脳」の様々な機能を工学的に実現することを通して実時間感覚運動統合理論の構築をめざす。


研究代表者: 銅谷 賢治
所属・役職: (株)国際電気通信基礎技術研究所研究開発本部 主任研究員
研究課題名: 行動系のメタ学習と情動コミュニケーション機構の解明
概   要: 行動学習系のグローバルな制御機構(メタ学習)のメカニズムを、理論計算、脳における実体の両面から明らかにする。神経修飾物質系と個体の行動、環境との相互作用の数理モデルにより、人間の行動/情動系の理解とその障害の解決を図り、真に自律的な学習ロボット、人間的なコンピュータ/コミュニケーションの基盤技術を提供する。


研究代表者: 山口 陽子
所属・役職: 東京電機大学理工学部 教授
研究課題名: 海馬の動的神経機構を基礎とする状況依存的知能の設計原理
概   要: 空間探索時に観察されるラット海馬でのシータリズム依存的な固有のダイナミックスが、個体の状況変化の情報をコードするという作業仮説を設ける。海馬神経回路モデルを用いて同ダイナミックスの記憶および情報生成への寄与を理論的に研究する。さらに人間を含めた動物で実験的に検証することで、状況依存的知能としての脳の設計原理を解明する。


7.研究領域「地球変動のメカニズム」

研究代表者: 梶井 克純
所属・役職: 京東京大学先端科学技術研究センター 助教授
研究課題名: 化学的摂動法による大気反応機構解明の研究−ラジカル測定を中心として−
概   要: 大気反応機構の記述では、反応性微量成分及び反応中間体の濃度に加えてそれらの生成および消失過程の把握が必要になる。そこで、消失過程に対する知見を得るために、人為的な化学摂動法を用いた反応中間体の大気寿命測定の方法論を構築し、それに基づく装置を開発し、実際の野外観測を通して反応機構の解明を行うことをめざす。


研究代表者: 才野 敏郎
所属・役職: 名古屋大学大気水圏科学研究所 教授
研究課題名: 衛星利用のための実時間海洋基礎生産計測システム
概   要: 海洋の定点において、海洋の基礎生産を自動的に測定し、データを実時間転送する、小型で安価な光学測定ブイシステムを開発する。これを多数展開することによって、人工衛星データから推定される基礎生産の値を検証する。これにより検証済みの衛星データが天気図のように得られるようになることが期待される。


研究代表者: 中島 映至
所属・役職: 東京大学気候システム研究センター 教授
研究課題名: アジア域の広域大気汚染による大気粒子環境の変調
概   要: アジア域の広域大気汚染によるエアロゾルの増加に伴って、同地域の放射エネルギー収支と雲・降水場がどのように変調するのかを明らかにする。そのために、(1)エアロゾル、雲粒、霧粒までの雲のライフサイクルに関わる全粒径分布の形成機構と(2)粒子系の光学特性パラメーターと大気力学的、化学的パラメーターとの間の依存性に関する研究を行う。本研究を通して、温暖化予測や広域汚染の気候影響における国際的議論での強い足場になるような知見を得ることとする。


研究代表者: 吉村 宏和
所属・役職: 東京大学大学院理学系研究科 助教授
研究課題名: 太陽輻射と磁気変動の地球変動への影響
概   要: 太陽からの輻射は地球の気象、気候、海流を駆動する原動力である。この輻射は様々な時間スケールで変動している。本研究では、この太陽からの輻射の変動は、太陽対流層内の流れと磁場のダイナミックスの非線形過程の結果として自然に起こるものだという考えのもとに、定量的な太陽輻射と磁場の過去の変動の再現と、未来の変動の予測を可能にすることをめざす。これにより太陽輻射と磁場の変動の地球環境への影響を定量的に評価し、過去の地球環境の再現と未来の変動の予測の精度を高めることを目的とする。
そのために、太陽対流層内部で熱を運ぶ流体運動と磁場の構造と時間的発展の一般的性質を数値シミュレーション実験によって明らかにし、そのダイナミックスの結果を100年間におよぶ黒点の位置の移動のデータの解析によって検証する。


8.研究領域「内分泌かく乱物質」

研究代表者: 有賀 寛芳
所属・役職: 北海道大学 大学院薬学研究科 教授
研究課題名: 内分泌かく乱物質による精子形成異常に関与する癌遺伝子産物DJ-1とAMY-1
概   要: 癌遺伝子DJ-1、癌遺伝子c-Myc結合タンパク質AMY-1はともに精巣特異的に発現し、DJ-1は内分泌撹乱物質による精巣の消長とパラレルに減少し、AMY-1トランスジェニックマウスはオスの不妊をもたらすことから、両者は精子形成に重要な因子と考えられる。本研究において、DJ-1、AMY-1の精子形成における機能解析を行うことで、内分泌撹乱物質、癌化との接点を明らかにし、男性不妊治療への可能性をさぐる。


研究代表者: 井口 泰泉
所属・役職: 横浜市立大学 理学部 教授
研究課題名: 内分泌かく乱物質の動物への発生内分泌学的影響
概   要: 発生途上でのホルモン系の乱れにより生じると考えられる様々な異常を、脊椎動物では視床下部−下垂体−生殖系、非生殖系、神経・行動、発生を軸に、無脊椎動物では発生、生殖、行動を軸にして検証する。その上で、形態形成遺伝子、性分化関連遺伝子などによる分子レベルでの正常発生・分化を理解し、遺伝子発現の乱れとしての発生・生殖・行動の異常を解明して知的資産に貢献し、内分泌かく乱物質問題を整理する。


研究代表者: 岩本 晃明
所属・役職: 聖マリアンナ医科大学 泌尿器科 教授
研究課題名: 内分泌かく乱物質のヒト生殖機能への影響
概   要: 内分泌かく乱化学物質(EDs)のヒト生殖機能に及ぼす影響についての本質的な問題はEDsの活性、作用さらに影響を評価する高感度かつ信頼性のある判定法が確立していないことにある。本研究ではヒト試料を用いて、分析化学的、生物学的、分子生物学的、遺伝学的、形態学的、運動生理学的手法から新しいアッセイ法の開発を目指し、地球規模のEDsの影響を評価可能にする。そしてヒト生殖機能維持のための一助とする。


研究代表者: 黒田 雅彦
所属・役職: 東京医科大学 第一病理学教室 講師
研究課題名: 内分泌かく乱物質が減数分裂、相同組み換えに与える影響
概   要: TLS遺伝子の解析から、核内受容体ファミリーが減数分裂に関与している可能性が見い出された。このことは、核内受容体のリガンドであるダイオキシン類が相同組み換えを通じて、生物の生命活動に影響を与える可能性を示唆している。本研究では環境ホルモンが相同組み換えに与える影響を検討し、さらに、その影響の大きさ、程度をモニタリングするシステムを提案する。


研究代表者: 黒田 洋一郎
所属・役職: 東京都神経科学総合研究所 参事研究員
研究課題名: 内分泌かく乱物質の脳神経系機能発達への影響と毒性メカニズム
概   要: 知能低下など脳の機能発達障害への内分泌かく乱物質の影響の可能性について、どの脳内受容体を介して、どのようなかく乱が神経回路発達に起こり、どのような行動異常を起こすかを調べる。培養神経細胞による機能神経回路形成、次世代動物の学習・情動などへの影響を中心に明らかにし、脳発達関与遺伝子発現異常の包括的検出など、その毒性メカニズムを分子・細胞・個体レベルで順次解明し、サルなどを用いた種差の検討も行い、有用な評価系開発のための基礎データを得る。


9.研究領域「資源循環・エネルギーミニマム型システム技術」

研究代表者: 生島 豊
所属・役職: 工業技術院東北工業技術研究所反応化学研究室 主任研究官
研究課題名: 機能環境流体を利用した資源循環・低エミッション型物質製造プロセスの創製
概   要: 超臨界水、超臨界二酸化炭素は経済性、安全性に加え、温度、圧力の調整により容易に種々の有機溶媒に相当する機能を引き出せる。本研究では本流体を機能環境流体として用いて反応場への展開を図ることで、環境、エネルギー消費に配慮した資源のリサイクルシステムの構築や物質・材料の効率的な製造法の創製をめざす。


研究代表者: 鈴木 健二郎
所属・役職: 京都大学大学院工学研究科 教授
研究課題名: 超小型ガスタービン・高度分散エネルギーシステム
概   要: 21世紀の個性化社会に適合し、「資源循環・エネルギーミニマム」の概念に沿う高度分散エネルギーシステムを構築するため、マイクロガスタービンと高温固体電解質燃料電池(SOFC)とのハイブリッド・コンバインドシステム開発に着目する。同システムのフィージビリティーと最適化、SOFCモジュールの高性能化、高温・複雑熱流動場の解明と予測、ミクロ混合と小容量燃焼などの研究を行う。


研究代表者: 舩岡 正光
所属・役職: 三重大学生物資源学部 教授
研究課題名: 植物系分子素材の高度循環活用システムの構築
概   要: 植物資源は生態系における物質循環基礎資源である。新たに開発した相分離システムにより、構成素材を循環型素材へと精密変換・分離し、木材工業から植物系分子素材工業を展開する。誘導した素材の複合化、組み替え、機能変換をカスケード的に行い、分子レベルにおける植物資源の高度循環活用システムを構築する。これにより植物体を始点とする化石資源に依存しない持続的資源供給システムを確立することをめざす。

研究代表者: 安井 至
所属・役職: 東京大学国際・産学共同研究センター 教授
研究課題名: 社会的受容性獲得のための情報伝達技術の開発
概   要: 環境技術は市民社会に受容されなければならない。現時点で市民社会と環境専門家がそれぞれ持つ環境情報の乖離は、質的にも量的にも深刻な状況にある。本研究は、トレードオフの記述が可能なライフサイクルアセスメントを仲介として、市民社会へ「情報そのもの」と情報を理解するスキル」とを同時に伝達することによって、真に優れた環境技術が受容されるような社会を形成できると考え、技術開発とその実証を行おうとするものである。


研究代表者: 渡辺 政廣
所属・役職: 山梨大学工学部 教授
研究課題名: 高温運転メタノール直接型燃料電池の開発
概   要: 高効率、無公害のメタノール直接型燃料電池(DMFC)は、将来のポータブル或いは電気自動車の電源等として幅広い用途が期待される。そこで、新たに、高温作動(〜150℃)が可能なDMFCの実現に向け、高性能アノード、カソード合金触媒の設計、メタノールクロスオーバー抑制型の高温作動電解質の開発により、世界でトップの電池性能の実証をめざす。

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