平成11年度さきがけ研究21 採用研究課題概要

「素過程と連携」 研究領域

◆ 光を求めて動く葉緑体の運動機構の解明

  加川 貴俊   岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所情報制御部門 非常勤研究員
 植物の葉緑体は外界の光環境に呼応して、細胞内でその位置を変えています。私は、シロイヌナズナから葉緑体光定位運動の突然変異体を単離し、原因遺伝子を同定することで、この運動機構の解明を目指します。

◆ 電気魚が解き明かす超短時間感覚のメカニズム

  川崎 雅司   バージニア大学生物学部 准教授
 電気をレーダーのように使って泳動する電気魚は、体表の電気受容器官に生じるわずか100ナノ秒の時間差を感じることができます。このように神経系全体がその構成要素であるニューロンをはるかに上回る解像度を示すhyperacuity現象は、ヒトを含めた動物の様々な感覚系で知られていますが、その機構はほとんど不明です。刺激の流入から運動の出力にいたる情報処理機構が解明されつつある電気魚を用いて、hyperacuity のメカニズムに光をあてます。

◆ 中枢神経細胞が層構造を形成するメカニズム

  仲嶋 一範   東京慈恵会医科大学DNA医学研究所 部門長・講師
 哺乳類の脳皮質では、無数の神経細胞が誕生部位から移動して、脳機能に重要な見事な層構造を作ります。この皮質構造の形成過程を制御する分子を同定し、それが神経細胞の配置を決定する機構の解明を目指します。

◆ 多元的遺伝情報発現系の分子モーター複合体による協調化機構の解明

  中島 利博   筑波大学応用生物化学系 講師
 真核細胞の遺伝情報発現系は転写、プロセッシング、翻訳の反応が核、細胞質という異なった”場”において協調的に営まれています。この協調的遺伝情報発現系の統一的理解のため、個々の反応に関与し、かつ場を変えうる能力を有する”分子モーター”の存在を想定し、そのモデルの検証を行います。

◆ シグナル伝達の時空間動態を光で制御して光で解析する

  古田 寿昭   東邦大学理学部 講師
 多細胞生物における細胞内シグナル伝達の機構を解明するために、光活性化分子を用いて情報を担う分子の細胞内外での時空間動態を自由に操作することと、可視化解析を可能とするプローブ分子の開発を目指します。

◆ オ−トファジ−の分子機構と生理的役割

  水島 昇   岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所細胞内エネルギー変換機構部門 非常勤研究員
 オートファジーは真核生物に普遍的な細胞内物質の分解機構です。本研究では、酵母のオートファジーに必須なタンパク質群を足がかりにして、オートファジーの分子機構および哺乳動物での役割を解明します。

◆タンパク質分解ユビキチンシステムと細胞機能の連携制御機構

  山野 博之   英国王立癌研究基金(ICRF) 海外特別研究員
 ユビキチンシステムは、生体内で行われる選択的なタンパク質分解に必要です。その機構を理解するために、このシステムがいかにして時期特異的に分解基質を認識し、ユビキチン化するかを解明します。また新しい分解基質タンパク質群の同定により、それらタンパク質分解の細胞機能におよぼす効果を明らかにします。

◆ 生殖細胞の染色体分配の仕掛け

  渡辺 嘉典  東京大学大学院理学系研究科 助教授
 酵母からヒトにいたる全ての真核生物で、有性生殖のために染色体を半数化する染色体分配(減数分裂)が行われています。この染色体の減数分離を制御する機構を、分裂酵母を用いて解き明かすことを目指します。


This page updated on September 7, 1999

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