平成11年度さきがけ研究21 採用研究課題概要

「状態と変革」 研究領域

◆ スピン−軌道偏極固体材料の創製と物性制御

  朝光 敦    東京大学低温センター 助教授
 スピン−軌道偏極材料とは、伝導電子系のスピン、あるいは軌道状態が偏極した物質を指します。本研究では、反強磁性ハーフメタル材料や軌道偏極した物質の創製とその物性制御を目指し、新規物理現象を探索するとともに、将来のスピンエレクトロニクス材料のひとつとして利用しようとするものであります。

◆ ナノ構造金属薄膜における光励起ダイナミクス

  小川 晋   鞄立製作所 基礎研究所255ユニット 研究員
 固体表面に量子化されたエネルギー準位を持つ金属薄膜ナノ構造の作製を行い、電子系の光励起フェムト秒ダイナミクスの観測、その位相と光パルスとの干渉を利用したコヒーレント制御を試み、新規物性の開拓を目指します。

◆ 強磁性と超伝導の共存と自己誘起磁束格子の探索

  川野 はづき   お茶の水大学理学部 助教授
 強磁性超伝導体では,強磁性成分が作る内部磁場により系が自発的に磁束格子を作ることが期待されます。本研究では,自己誘起磁束格子を持つ物質を探索し、その構造を明らかにすることを目標とします。

◆ 赤外磁気光学イメージングによる局所電子構造

  木村 真一   神戸大学大学院自然科学研究科 助教授
 赤外放射光は通常の光源に比べて高輝度性と偏光特性に優れており,顕微分光と磁気光学を組み合わせた「赤外磁気光学イメージング分光」が可能です。この方法を開発し,物質の相転移近傍の局所的な電子状態を明らかにします。

◆ 分子層制御溶液成長による有機導体超格子の作成と物性

  島田 敏宏   東京大学大学院理学系研究科 助手
 光信号に応答する配位化学を開拓し、表面解析手法を駆使して溶液中の結晶成長を1分子層単位で制御する技術を開発します。多彩な物性を示す有機導体の超格子や素子構造を作り新しい現象を探索します。

◆ 超高速画像分光法による化学反応の可視化

  鈴木 俊法   岡崎国立共同研究機構分子科学研究所 助教授
 光化学反応における電子や核の運動を超高速光電子画像観測法を用いて追跡し、化学反応途中での電子構造や幾何構造の変化を可視化します。特に、溶液中の化学を理解するために、微少液滴中での分子動力学を詳細に検討したいと考えています。

◆ 量子常誘電相の解明と光誘起強誘電相転移

  田中 耕一郎   京都大学大学院理学研究科 助教授
 本研究では、低温で10000以上の誘電率を有する量子常誘電体に着目し、この物質系の低温相の秩序状態を時間分解・空間分解測定が可能な非線型レーザー分光法により解明します。また、光照射による強誘電相転移の可能性を探ります。

◆ スピントポロジーに基づく環境応答型機能の開発

  松下 未知雄   東京都立大学大学院工学研究科 助手
 合成的に自由に形を変えられる有機配位子を利用して、磁性や導電性を担う金属イオンをこれまでに無い新規な形状に集合化し、その特異な形に依存した新しい物性を発現させることをねらいとしています。


This page updated on September 7, 1999

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