科学技術振興事業団報 第110号


平成11年5月27日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話(048)226-5606(総務部広報担当)

「リン脂質極性基を有するポリマーの製造技術」の開発に成功

 科学技術振興事業団(理事長 中村守孝)は、東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 教授 中林宣男氏および東京大学 工学部 マテリアル工学科 助教授 石原一彦氏の研究成果である「リン脂質極性基を有するポリマーの製造技術」を当事業団の委託開発制度の平成5年度課題として、平成6年3月から平成11年3月にかけて日本油脂株式会社(代表取締役社長 宇野まさやす允恭、本社 東京都渋谷区恵比寿4-20-3、資本金 約160億円、電話:03-5424-6600)に委託して開発を進めていた(開発費約8億円)が、このほど本開発を成功と認定した。
 従来、カテーテルや血液透析器などの医療用具などに用いられている材料は、生体からは異物として認識されるために血液凝固が誘起されるなど、性能に於いて満足できるものではなかった。そこで、次世代の先端医療機器や人工臓器の開発のためには、抗血栓性などの生体適合性を有し、なおかつ、使用目的に合致した分子設計が自由に施せる新素材の開発が基礎的要件とされてきた。
 本新技術は、理想的な生体適合性表面である生体膜(細胞膜)を模倣した新物質として、一分子中に生体膜の構成成分であるリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)と重合性を有するメタクリロイル基とを併せ持つ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)およびこの重合体であるMPCポリマーを製造するものである。MPCポリマーは、タンパク質や血球などの生体成分との相互作用が極めて小さいことや極めて優れた抗血栓性を発現することなど、従来にはない高度な生体適合性を有する。
 本新技術では、MPCポリマーの商業的規模での製造に成功し、高純度で安定した製品の供給を可能とした。MPCポリマーの応用分野は広範であり、バイオメディカルサイエンス分野、バイオテクノロジー分野、医薬品産業分野、環境テクノロジー分野等での応用展開、さらには、本新技術を核とした新しい産業の創成が期待される。

「リン脂質極性基を有するポリマーの製造技術」の開発に成功(背景・内容・効果)

開発を終了した課題の評価

図1 MPCの化学構造

図2 MPCポリマーの化学構造

図3 MPCの血液適合性

※この発表についての問い合わせは以下のとおりです。

科学技術振興事業団 開発業務部 管理課長 草野辰雄[電話(03) 5214-8996]
管理課 増渕 忍
日本油脂株式会社 総務部 広報担当 木村雄一[電話(03)5424-6633]

This page updated on June 16, 1999

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