研究主題「透明電子活性」の研究構想(概要)


 酸化物は、人類が生存する大気雰囲気下では、最も安定な存在形態であり、またガラスやサファイアに象徴されるようにその多くは光学的に透明である。このことは、光学的応用を考えた時に大きな特長であるが、これまで、透明性を活かし電子が主役を演じるアクティブな機能はほとんど見出されていない。
 しかしながら、最近、新しい光・電子機能をもつ透明酸化物の結晶とアモルファス物質が相次いで発見され、透明酸化物の電子活性に乏しいことは必ずしも物質の本性そのものに基づくものでなく、本性である電子状態を把握し、引き出すための工夫が不足していたのが原因であると考えられる。例えば、電子機能ではこれまで知られなかったP型伝導性の透明酸化物や新しいN型伝導性透明酸化物がバンドの電子状態に関する考察をもとに発見された。また、光機能では、従来、光透過能、電子機能の劣化原因とみなされてきた点欠陥(化学的秩序の乱れ)を新しい機能発現のための活性化学種として積極的に活用する試みの中で見出された。長残光蛍光や輝尽蛍光などの蓄光性がその一例である。
 本研究は透明酸化物の結晶とアモルファスを主な対象物質とし、そのバンド構造や点欠陥の電子状態の解明、制御、そしてバンド−欠陥−光活性イオンの間の電子伝達系の構築により光学的透明性を活かした新しい光・電子機能の探索をしようというものである。
 本研究により、これまで研究の進んでいなかった透明酸化物の電子状態や光反応性を明らかにすることより、安定な酸化物をベースとした透明電子回路や新しいアモルファス半導体の領域が拓け、また、バンド構造や点欠陥に関する知見は、透明酸化物を舞台とした新しい光・電子機能のエンジニアリング誕生につながるものと期待される。


This page updated on May 20, 1999

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