夜尿症の治療装置


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 望まれていた患者負担の少ない夜尿症の治療法

 夜間睡眠中に不随意に排尿を行ってしまう夜尿症は、小児のみならず成人にも認められる疾患であり、とりわけ、小児においては、5〜12歳の小児においても10%程度に見られるなど、もっとも頻度の高い疾患の一つである。夜尿症は、睡眠の異常と排尿の異常が原因となっていると考えられており、従来、その治療は、抗利尿ホルモン剤等の薬剤の投与や夜尿後に尿を検知して警告音で知られる方法などにより行われているが、必ずしも満足すべき治療効果が得られていなかった。そのため、患者に対する負担が少なく夜尿症を治療する方法の開発が望まれていた。

(内容) 脳波計による睡眠深度と超音波による膀胱容量の同時計測により、排尿前に患者に知らせる条件付けにより学習を促し、夜尿症を治療

 本研究者は、これまで独立に研究されることが多かった睡眠機構と排尿機構に関する研究を体系的に関連づけて行い、夜尿症患者約1200名を対象に調べたところ、夜尿症は3つの型に分類されることを初めて明らかにした。すなわち、夜尿症は、(1)膀胱機能は正常であるが、健常者に比べ軽い覚醒機能障害を有するT型(約60%)、(2)膀胱機能は正常であるが、重い覚醒機能障害を有するUa型(約10%)、(3)夜間睡眠時において膀胱内圧が不安定で、かつ、重い覚醒機能障害を有するUb型(約30%)から構成されるものとした。  本新技術は、このうち、T型の夜尿症に対する治療を行う装置に関するものである。正常な場合、膀胱に尿が充満してくると、深い睡眠から浅い睡眠になり脳波のうちデルタδ波(周波数0.5〜3.5Hz)が占める割合の急激な減少を伴って覚醒しトイレでの排尿が出来るのに対し、I型夜尿症の場合は、睡眠は浅くなるものの、完全に目覚め排尿するという学習が不充分であることが原因との考えに立っている。本新技術は、浅い睡眠になるとδ波が減少する現象を捉えるため、δ波の比率を計測する脳波計測部と、超音波により膀胱容量を計測する膀胱容量計測部からの情報を解析し、夜尿前に警告音で患者に知らせ学習を促すことにより夜尿症を治療する装置に関するものである。 本装置は、夜尿後に知らせる従来の装置とは異なり、夜尿前に覚醒させる条件付け療法であるため、副作用が全く認められないこと、また寝具を濡らさないことなど、患者負担の軽減が可能になった。  本装置は、以下の各部により構成される。1)脳波計測部:脳波センサーにより、脳波のうちδ波の比率を計測する。2)膀胱容量計測部:超音波探触子を用いて計測した膀胱の左右径、上下径、前後径より膀胱容量を計測する。必要に応じて画像表示を行い、臨床での利便性の向上をはかる。3)解析・入力部:脳波と膀胱容量の各々の情報を解析し、所定の値を越えた時点で警告音を鳴らし患者を覚醒させる。この値は、個々の患者に合わせて医師が設定できる。

(効果) 患者に対する負担が少なく、効果的な夜尿症の治療が可能

本新技術には、次のような特徴がある。

以上の特徴を有することから、病院での夜尿症の治療のほか、今後在宅療法にも適用できるとともに、夜尿症・尿失禁の研究などに利用が期待される。


This page updated on April 22, 1999

Copyright© 1999 JapanScienceandTechnology Corporation.

www-pr@jst.go.jp