戦略的基礎研究推進制度における戦略目標について(抜粋)


戦略目標:分子レベルの新機能発現を通じた技術革新
 我が国が、長引く景気の停滞や国内産業の空洞化を克服し、活力ある社会を維持・発展させていくためには、既存の概念にとらわれず、新たな分野・領域を開拓し、独創的・革新的な技術の創生を通じて、新技術・新産業を創出していかなければならない。また、新しい革新技術の波が分子レベルでの新機能発現により誕生していることを考慮し、重点的にこの分野を推進し、社会の活性化を図っていくことが重要である。
 このため、分子レベルでの機能発現の視点から、世界レベルの大きな成果が期待できる新機能デバイス等の開発、新たな物性や機能を有する新材料の開発、ゲノムの構造・機能の解明や遺伝子機能の特定・制御技術の開発を目指す研究等を進めることが不可欠である。
 したがって、戦略目標を、知的資産を拡大するとともに、新技術・新産業の創出を目指す「分子レベルの新機能発現を通じた技術革新」とする。

戦略目標:脳機能の解明
 脳は多くの画期的な発見が行われる可能性を秘めている研究対象であり、21世紀に残された数少ない巨大フロンティアのひとつである。また、脳科学の進歩は、人間たる所以の根元である脳を知ることにつながり、脳を知ることは即ち人間を理解することにつながる。また、脳科学研究の成果は、脳の老化の防止、アルツハイマー病等脳・神経系の困難な病気の克服、脳の原理を生かしたコンピュータやロボットの開発による新技術・新産業の創出につながる。このような意味で脳科学の推進を図り、脳機能の解明を行うことは、正に人類的課題となってきている。
 したがって、戦略目標を、人間の理解の基礎として脳の働きを知るとともに、新技術・新産業の創出にも繋がることを念頭においた「脳機能の解明」とする。
 なお、この脳機能の解明を行うためには、脳の働きの理解を目指す「脳を知る」、脳の老化、疾病のメカニズムの理解と制御を目指す「脳を守る」、脳型の情報処理システムの理解と構築を目指す「脳を創る」といった研究領域において、明確な研究目標を設定し、計画的に取り組むことが必要である。

戦略目標:環境にやさしい社会の実現
 地球上の人口は現在約58億人であり、1970年を境に増加は減速しつつあるものの、依然として年率1.5%で増加しており、2025年には83億人、2050年には98億人に達すると予想されている。今後人類が、真に豊かで快適な生活を実現し、維持していくためには、地球規模での無制限な開発や化石燃料の過剰使用等による環境の破壊を来すことなく、必要な食料及びエネルギーを確保するとともに、種々の人間活動やその結果生じる廃棄物等の生態系への影響を極力低減していくことが重要である。近年顕在化してきた内分泌かく乱物質の問題については、科学的に不明な点が数多く残されており、早急に知見を集積し、必要な対策を立てていくことが重要である。
 このためには、地球規模の諸現象の解明とその予測を行うとともに、これらを基礎として人間の諸活動の環境への影響を正確に把握することや、環境保全関連技術の確立、内分泌かく乱物質の生体への影響の把握が不可欠であり、それらを踏まえて環境にやさしい社会を構築していくことが必要である。
 したがって、戦略目標を、地球変動のメカニズムの解明とその予測、環境への影響の把握、環境保全関連技術の確立、内分泌かく乱物質の生体への影響メカニズムの解明等により人間の諸活動の環境への負荷の低減を目指す「環境にやさしい社会の実現」とする。

戦略目標:資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築
 京都で開催されたCOP3の結果等を踏まえ、我が国としても、今後人類が、真に豊かで快適な生活を実現し、維持していくためには、人類の存亡に関わる地球温暖化等による環境の破壊を来すことなく、種々の人間活動の生態系への影響を極力低減し、持続可能な発展を行うことが重要である。
 このためには、資源を循環させるシステムやエネルギー消費を極力抑えた効率的利用システムの構築を目指すこととし、地球温暖化ガスの新しい抑制技術の開発、環境を配慮した製品設計技術の開発、生物機能を活用した環境関連技術等の開発が期待される。また、このような新しい環境関連技術の中から次世代の革新技術が創出され、環境ビジネスが形成されていき、それらを通じて新しいシステムの構築を図っていくことが必要である。
 したがって、戦略目標を、持続可能な社会発展を目指す「資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」とする。


This page updated on March 18, 1999

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