バイオリサイクルプロジェクトの概要


 今日、地球レベルでの環境問題がクローズアップされてきたが、このことは私たちに"地球は一つ"といった地球共生系の概念を想起させた。特に、熱帯地域は多種多様な生物が生存し、お互いに複雑な共生系ネットワークを形成して棲息している。この様な広大なバイオマス資源をかかえた熱帯地域の物質循環(バイオリサイクル)において土壌動物ー微生物共生系は非常に重要な役割を果たしている。熱帯地域の森林やサバンナにはシロアリの"アリ塚"が沢山見られる。また、チンパンジーが木ぎれを道具として使って"シロアリ釣り"をする事は良く知られている。食物連鎖においてシロアリは重要な蛋白源と考えられている。この様に熱帯の陸上生態系に於いて最も繁栄し、物質分解に最も重要な役割を果たしているシロアリは、多様な微生物たちと多層な共生関係を結ぶことによって、地球上に最も多く存在する植物資源の非常に効率的な分解・再資源化に成功した。しかし、このシロアリー微生物共生系の研究はほとんど進んでいない。
 本研究では、シロアリ−微生物共生系が熱帯地域の物質循環(バイオリサイクル)に重要な役割を果たしていることに着目し、シロアリ共生微生物の機能を分子や物質のレベルから明らかにするとともに、シロアリの生態系機能、シロアリと共生微生物の共進化のメカニズムを明らかにすることによりシロアリ−微生物の多層な共生システムの解明を目指す。また、シロアリ−微生物共生系の持つ強力な植物資源の代謝機能の解明・応用を目指す。
 この様な共生系を利用した従来の常識を破る新しい生物機能の発見・解明は生態系の維持と進化の機構の先駆的な研究となり、生態学に与えるインパクトが大きい。またこの知見は、熱帯生態系における物質循環システムの保全や生態系の土壌改善、将来的には熱帯林の再生・保全にも大きな貢献が期待される。


This page updated on March 18, 1999

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