科学技術振興機構(JST)の最近のニュースから……

(News03 研究加速)「光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト」を研究加速課題に選定、がんの早期診断に向けて研究推進

体外からの蛍光イメージング像
ヒトのがん細胞を移植したマウス。体外から見ると、皮膚の自家蛍光も見られるが、内視鏡下で見るとがん患部だけを明確に判別できる。

 JSTは、東京大学大学院医学系研究科の浦野泰照教授らの、新たながん診断法の技術開発を研究加速課題として選定しました。「研究加速課題」とは、優れた研究成果について、JSTが緊急かつ機動的に研究推進の強化を行うものです(課題名「光機能性プローブによるin vivo微小がん検出プロジェクト」)。
 近年、MRIなどを活用した全身スキャンによるがん診断が広まりつつあります。これらの手法では、数センチサイズの大きさのがんでも、判別が可能になってきました。しかし、内視鏡検査によるがんの早期診断や開腹手術時においては、mmオーダーか、それ以下の小さながんも明確に検出する必要があります。
 浦野教授らはこれまでに、がん細胞が持つ特徴的な受容体に結合し、取り込まれると初めて光を発する有機プローブの開発に成功してきました。さらに、最近では、がん細胞が持つ特徴的な酵素に着目し、これらの酵素活性を認識して光る新しい蛍光プローブの開発にも成功。内視鏡下でプローブを患部に向けて噴霧することで、数分以内にがん部位を高感度に検出することを可能にしました。これによって、外科手術時や内視鏡検査時に、簡単・迅速、かつ高精度で微小ながんを見つけ、処置することが可能になると期待されます。
 今後は、安全性の確認やプローブ機能の向上、新たなプローブの研究開発を進めます。また、病院との連携により、ヒトのがん組織を用いて検出できるがんの種類や進行度を明確にします。さらに、実際の医療現場での使用を見すえて、内視鏡の機器開発も手がける予定です。


(News04 研究成果)戦略的創造研究推進事業CREST「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療に向けた新技術の創出」研究領域 研究課題「マウスを活用した精神疾患の中間表現型の解明」世界で初めて、大脳新皮質の神経前駆細胞の存在を明らかに!てんかんや認知機能低下を防ぐ新しい治療法への応用に期待

大脳新皮質の新生細胞の形態
新生された神経細胞の形態。ほとんどの細胞は、球型の細胞体から、複数の分岐した樹状突起様の突起と1本長く伸びる軸索様の突起を有するという均一な形態をしていました。白三角は、軸索様突起を示しています。

 これまでの研究で、大人の脳でも記憶にかかわる海馬や、においを感じ伝える嗅球では、新しい神経細胞がさかんに作られることがわかっていました。一方、思考や意識、運動などの高次機能を担う大脳新皮質については、神経新生が生じるかどうかは謎のままであり、100年以上にもわたって議論がされていました。
 藤田保健衛生大学の大平耕司助教らは、成体ラットの大脳新皮質で、新しい神経細胞を作ることができる神経前駆細胞が存在することを世界で初めて発見しました。また、神経前駆細胞は、大脳新皮質の表面、第一層に存在して分裂しており、新しく産生された神経細胞は、大脳新皮質の深層へと移動し定位することを見出しました。さらに、この神経細胞の産生は、ラットの脳を軽い虚血状態にすると活性化されることも観察しました。神経細胞には大きく分けて興奮性と抑制性の2種類がありますが、今回発見された新生神経細胞は、ほとんどが抑制性の細胞でした。
 今後、抑制性の神経細胞が作られるメカニズムが詳細に解明されれば、興奮性の神経細胞が過剰にはたらくために生じる、てんかん等の疾患に対する新たな治療法の開発につながると期待されます。