JST Front Line
産学官を結ぶコーディネータの表彰の報告や、脳の機能回復メカニズムの解明、
生命科学研究をスピードアップさせる新技術の開発など、さまざまな分野にわたる、6つのニュースをお届けします。

(News01 表彰)産学官連携にかかわるコーディネータの活動・実績を評価「イノベーションコーディネータ表彰」の受賞者を決定


表彰式の様子。大賞の岡田さんをはじめ、11名の受賞者には表彰状とともに、産学官連携によって生まれた加工技術で作られたタモ材のトロフィーが贈られた。

 産学官連携の優れたコーディネート活動やその成果を表彰する「イノベーションコーディネータ表彰」が創設され、10月7日(水)、8日(木)に開催された「全国イノベーションコーディネータフォーラム2009 in 札幌」にて、表彰式が行われました。
 産学官連携による研究開発をコーディネートするコーディネータは、現在、全国でおよそ1600人が従事しています。大学が持っている価値あるシーズと企業の切実なニーズをつなぎ、画期的なイノベーションを創出するために、研究開発資金獲得支援や研究機関と企業のマッチング、ベンチャー企業創設支援など多岐にわたる活動を行っています。
 しかし、コーディネータはその重要な役割にもかかわらず、一般社会の認知度は十分ではなく、また、成果が見えにくいという一面がありました。そこで、JSTでは、産学官連携にかかわるコーディネータの活動・実績に対して、その成果を客観的視点から評価し、重要性を一般社会に広くアピールすることを目的として、本表彰を創設しました。
 平成21年度、大賞の文部科学大臣賞に輝いたのは、長野地域の産学官連携支援施設「AREC」を立ち上げた岡田基幸さんです。岡田さんは、産学官連携の事業化を数多く推進し、若手コーディネータの模範となる優れたリーダーシップが評価されました。今後、さらに多くのコーディネータによって、さまざまなイノベーションが生まれることが期待されます。



(News02 研究成果)戦略的創造研究推進事業CREST「ナノ界面技術の基盤構築」/研究課題「自己組織化に基づくナノインターフェースの統合構築技術」 水を溶媒としてナノサイズの金の“花びら”や“プロペラ”を作製環境に優しく簡便な「ナノ彫刻法」を開発

ナノ彫刻によって得られる金ナノ結晶
花びらのようなユニークな立体構造を持つ金ナノ結晶。結晶には金原子5個分の幅に相当する1ナノメートルの微小な切れ目が入っている。

 ナノサイズの金結晶を花びらのようなユニークな形に加工する新しい技術を、九州大学の君塚信夫主幹教授らが開発しました。
 金ののべ棒など「金塊」は、長い年月を経ても空気中の酸素と反応せず、輝きを失わない安定な物質として知られます。一方、金結晶はナノサイズまで小さくすると、著しく異なった性質を示すようになります。そのため、ナノテクノロジー分野では、金は基幹素材の1つとして注目されてきました。
 金ナノ結晶の合成には、金イオンに電子を与えて金原子とする還元反応が用いられています。一方、金ナノ結晶を溶解するには、酸化反応が知られていました。
 従来の研究は、還元反応を中心に進められてきましたが、君塚主幹教授らは、光による還元と溶存酸素による酸化の2つの反応が「自己組織化のプロセス」で同時に起こる合成法として「ナノ彫刻法」を開発。花びらのような複雑な立体構造を持つ結晶を作製することに成功ました。この手法は、水を溶媒とし、一般的に利用される界面活性剤などを使用しないので、環境負荷も軽減できます。
 金ナノ結晶は、形に依存して性質が大きく変化することから、ナノサイズの金の花びらが、新しい物理現象を生む新規の素材となることが期待されます。