科学技術振興機構(JST)の最近のニュースから……

(News03 研究成果)地域イノベーション創出総合支援事業「育成研究」/研究課題「介護予防リハビリ体操インストラクター補助ロボットの開発」高齢者の体操参加意欲が向上!介護予防リハビリ体操補助ロボット「たいぞう」を開発

たいぞう
体操の考案者である大田さんと一緒に、対話しながら体操をする「たいぞう」。座った状態で行うものを中心に、約30種類の体操を行うことが可能。

 産業技術総合研究所の知能システム研究部門と、ゼネラルロボティックス社、茨城県立健康プラザが、介護予防リハビリ体操を補助するロボットを共同開発しました。
 介護予防リハビリ体操は、お年寄りが寝たきりにならないように予防する体操です。関節や筋肉を効果的に動かし、「立つ・座る・歩く」といった動作を楽にできるようにする効果が認められています。身体部位に合わせた体操は約300通りあり、そのうちの30種類程度が、実際のリハビリ体操の現場でも大いに活用されています。
 介護リハビリ体操の考案者である、健康プラザの大田仁史さんは、体操に参加するお年寄りの意欲向上のためには、体操指導士と一緒に体操を行うロボットが有効ではないかと考えていました。そのニーズと、産総研とゼネラルロボティックス社が持っていた小型ロボット開発技術のシーズを、JSTイノベーションサテライト茨城が橋渡ししたことで、今回、誕生したのが、介護予防リハビリ体操を補助するロボット「たいぞう」です。
 たいぞうは、身長70cmほどのぬいぐるみのような可愛らしい姿をしています。リハビリ体操に適したゆっくりとした動作ができること、また、現場で音声指示に答えたり、簡単な対話をしたりできるよう音声認識機能を携えていることが特長です。
 単なる介護予防リハビリ体操のお手本となるだけでなく、その場にいるだけで介護現場の雰囲気を明るくしてくれる存在になると期待されています。
 今後は、多くの高齢者施設で利用できるよう、より実用的な製品開発に向け、製作コストの削減やメンテナンス性の向上を目指していく予定です。


(News04 研究成果)戦略的創造研究推進事業CREST「先端光源を駆使した光科学・光技術の融合展開」研究課題「先端超短パルス光源による光誘起相転移現象の素過程の解明」有機絶縁体を瞬時に金属へ変化させる!絶縁体→金属の制御を高強度の光照射を用いず効率よく行うことに成功

実験装置と、光誘起絶縁体→金属転移の模式図
モット絶縁体は、それぞれの電子が持つクーロンエネルギーが反発しあうことで運動できず、絶縁体の状態になっている(右上図)。岩井教授らは、フェムト秒レーザーを用いて分子間の構造を変化させ、対象の物質を損うことなく金属転移を実現。ポンプ−プローブ分光法によって観測にも成功しました。

 東北大学大学院理学研究科の岩井伸一郎教授らが、そのままでは電気を通さない絶縁体を電気伝導体へ瞬時に変化させる新しい仕組みを発見しました。
 ゴムやプラスチックなど、電気を通さない物質を「絶縁体」と呼びます。通常、絶縁体が電気を通すことはありませんが、絶縁体のなかには、物質中の電子が「クーロン力」という力で反発しあうために電子が動かず、絶縁体状態になっている「モット絶縁体」というものがあります。
 このモット絶縁体を電気伝導体に転移させるには、原子置換や光照射によって転移を起こすキャリア注入法が一般的とされてきました。しかし、光照射による方法は、瞬時に転移できるのが利点ですが、高強度のレーザー光を使用しなければならず、レーザー光照射による温度上昇で物質自体が損傷を受けてしまうなどの問題がありました。
 岩井教授らの研究チームは、低エネルギー領域の光である中赤外光を使用することに着目。κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brという有機二次元モット絶縁体を、通常の光照射で使うレーザーの1/50から1/100程度の強さで転移させることに成功しました。
 さらに、その転移の様子を、ポンプ光(励起光)とプローブ光(計測光)をフェムト秒(1フェムト秒=1000兆分の1秒)で照射し、物質の構造変化を観測する「フェムト秒ポンプ‐プローブ分光法」を使って実測することにも成功しました。
 今回の研究成果は、これまで研究されてきた原子置換、高エネルギー光照射に次ぐ第3の手法の発見といえます。今後、研究を進めることで、さらに新しい物理現象の発見、発展につながることが期待できます。