JST News Vol.5/No.1
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日本科学未来館「エイリアン展」に行こう!
東京・お台場の日本科学未来館では、企画展「エイリアン展――モシモシ、応答ネガイマス。」が開催されている。そこにあるのは、空想やオカルトの世界ではなく、科学から見たエイリアンだ。
現代の科学は、地球外生命の姿にどこまで迫っているのだろうか――。
Topics 01
合意形成支援ツール「多重リスクコミュニケータ(MRC)」の開発
Topics02
「植物資源変換システム」による森林資源の前進循環活用とは?
神田 学 東京工業大学大学院理工学研究科准教授
日本科学未来館の耳より情報

美しく、しかし難解な方程式

アインシュタイン[1921年ノーベル物理学賞]

 ノーベル賞(1901年創設)の6部門のうち、自然科学部門は物理学賞・化学賞・医学生理学賞の3つである。その歴代の受賞者と授賞理由を見れば、ノーベル賞の歴史とはまさに20世紀における最高の科学的達成の歴史であることがわかる。例えば1901年第1回物理学賞のW.レントゲンの授賞理由は「X線の発見」であり、また1962年医学生理学賞のJ.ワトソン・F.クリックは「DNAの二重らせん構造の発見」であった。
 では、1921年の物理学賞を受賞したアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein:1879〜1955)の授賞理由を、ご存知だろうか。もちろん「相対性理論(相対論)」……ではなかった。「光電効果」(金属に光を当てると電子が飛びだしてくる現象)に関する業績に対してである。これ自体も非常に重要な業績ではあるが、しかしじつは、1905年に26歳のアインシュタインが奇蹟のように生み出した3大論文の1つの、そのまた一部に過ぎない。しかもその3大論文の1つに、「相対論(特殊相対論)」があったのである。
 一般に、物体の運動を観測するのに「絶対的」な基準というものはなく、すべて「相対的」であるほかはない――というのが「相対」のいわれ。ここからアインシュタインは、「同じ出来事も同時刻ではない」「動いている物体の長さは縮む」など、時空に関する我々の常識に変更を迫りつつ、光速度不変のゆえんを説明する。そしてその果てに提示されるのが、あの「E=mc2」[エネルギー(E)=質量(m)×光速度(c)2]という方程式である。美しく、しかし難解な式だ。ノーベル賞の授賞理由が相対論にふれなかったのは、それが正しいのかどうか、当時は誰にも判断できなかったからに違いない。
 もちろん今でも、我々にとっては相対論は難しい。これが、ヴァイオリンを好んで弾き、恋人に「愛する子猫ちゃん」と手紙を書き、温厚で人づきあいもよく、時に孤独に浸るという、1人のごく普通の人間の頭脳ひとつから生まれたとは信じられない。かつて、「愛の讃歌」で知られるフランスのシャンソン歌手エディット・ピアフは、相対論の本をいつも枕頭に置いていた。また最近、ハリウッドの人気女優キャメロン・ディアスは、E=mc2の意味を“本気で”知りたいと語った。みんな、相対論を知りたいのである。
(文・西田節夫)



JST News 発行日/平成20年4月
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